ふらんす堂編集日記 By YAMAOKA Kimiko

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素足の歩幅。

9月17日(木) 玄鳥去(つばめさる)  旧暦8月1日


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ご近所の畑のニラの花。



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燕はもう帰ってしまうのか。

ことしは燕をじっくり見ることもできずに終わってしまった。。。。。

毎年我が家のとなりの造園にくる郭公の声も聞くことがなかった。

もっとも翡翠たちのことで心がいっぱいであったのだけれど。








新刊紹介をしたい。

小林千秋句集『ファーストシーン』(ふぁーすとしーん)



素足の歩幅。_f0071480_16581835.jpg
四六判ハードカバー装帯有り 216頁 二句組 

著者の小林千秋(こばやし・ちあき)さんは、1935年広島県生まれ、現在神奈川県横浜市在住。1997年に俳誌「双眸」(本庄登志彦主宰)に入会、新人賞、結社賞を二度受賞されるが、2007年主宰逝去により「双眸」終刊。2008年『絵硝子」(和田順子主宰)入会。2011年「絵硝子」15周年記念コンクール俳句部門1位、2013年「絵硝子」17周年コンクール文章部門1位受賞。2017年、絵硝子賞受賞、同人となる。俳人協会会員。本句集は、第1句集であり、和田順子主宰が序文を寄せている。

小林千秋さんは、私が地元で開いている小さな句会に入ってこられた。そのファーストシーンの印象を今でも鮮明に覚えている。ゆっくりではあるがはきはきした話し方に知識と教養が垣間見え、決して初心者ではないと感じられた。事前にいただいたお歳よりずっと若く見える。千秋さんはある決心をして「繪硝子」の句会へ来られたのであった。
小林千秋さんの俳句の先師は本庄登志彦氏であり「双眸」の主宰であったが、第五句集のあと、病気で急逝されてしまった。千秋さんは「双眸」で十年学び新人賞、結社賞を受賞、本庄登志彦氏は句集のあとがきに「句集については小林千秋氏の世話になった」と書くほど信頼を置かれていたようである。「双眸」は解散し傷心の日日を過ごすうちに、同じ横浜市金沢区内の私の句会を見つけて下さったのである。

序文の書き出しを紹介した。来年の「絵硝子」創刊25周年を期して、本句集を上梓されたということである。
和田主宰は、序文で「双眸」時代の句より、「絵硝子」に至るまでの俳句をとりあげて、小林千秋さんの俳句の美質について丁寧に紹介しておられる。そして、

俳句はやさしい言葉がいい。
俳句は一瞬で心に落ちる句がいい。
こんな思いで俳句に向かう私に千秋さんはよく応えて下さる。心に残る佳句を挙げてお祝いの言葉に代えたい。

 まつすぐに煙立ちたる寒さかな
 広重の大江戸となる雪の朝
 湘南にけふ封切の夏の雲
 ぼうたんに編上靴の来て止まる
 純白の雲湧き沖縄慰霊の日
 留拍子ぴしりと決めて冬に入る
 けふの音生まるる前の初明かり

これからどんな広がりが待っているのであろうか楽しみな作家である。

という言葉で結んでいる。
「ファーストシーン」という句集名は、印象的だ。 

 ミステリーのファーストシーン猛り鵙

という句が集中にある。小林千秋さんは自らを「活字中毒」と語るほど読書家らしい。このミステリーはいったい誰の作のものか。鵙が激しく鳴いている場面から物語は展開していく。最初から不穏である。松本清張か、または宮部みゆきか、あるいは東野圭吾か、それとも海外小説か。。なんて想像してしまった。

 床強く蹴るも仔馬の甘えかな
 素足には素足の歩幅ありにけり
 手を添ふるだけの見舞や梅は実に
 冬麗や麒麟の首を見に行かん
 朝よりの雨音に鏡開きかな
 卵白を泡立て春をふくらます
 芽柳ををんな結びにしたき風
 指先が忘れずに折る紙の雛
 一斉に風となりたる稲雀

担当のPさんの好きな句を紹介した。

 素足には素足の歩幅ありにけり

この句は、わたしも好き。素足の歩幅がいったいどのくらいの歩幅なのよって聞かれてもはっきりしたことは云えないが、気持ち的によくわかる一句だ。これは自身が素足となって感じる歩幅もあるけれど、たとえば浴衣姿の女性の白い素足を意識したときにその歩幅がとくに際だって見えてくることを「歩幅」と表現しているということもある。「素足の歩幅」と声に出しただけで足元に涼しい風が立ってくるような気持ちになるのは、サ行とハ行の音の響きが句全体に行き渡っている、そんなことから来るのだろか。

 手を添ふるだけの見舞や梅は実に

「梅は実に」の季語がとてもいいなあって思う。「手を添ふるだけの」お見舞いであっても、うわつらのお見舞いではなく、心の伴ったお見舞いであることを内実のある季語が語っている。病人がすでに言葉を失い、あるいは言葉を発することもできず、昏々と眠っている、そんな状態だったのだろうか、それでもそっと手を添えて「わたしよ」って伝える。「手を添ふるだけ」ということでその関係性もみえてくる。しっかりと握るのでもなく、遠慮がちにそっと添える。しかし、触れて自身の存在をつたえたい。きっと敬愛する人なのだろう。そのぬくもりと感触はぜったいに病人に伝わっているのだ。そして手を通して語ることが言葉以上のものとなるっていうことは、よくわかる。
ときに、わたしたちの双手は、病人のみならず人間や生き物を深くだきとめるために神がつくられたのかもしれないって思うことがある。
ああ、それなのに、ソーシャルディスタンスとは。。。

 卵白を泡立て春をふくらます

面白い一句だ。卵白を泡立てることは、いつの季節でもできる。しかし、季節がそれによって膨らむのは、ぜったい「春」しかないなって思う。卵白が空気を吸い込みながら大きく膨らんでいく様子、しっとりとかるくそしてやわらかい弾力、「春をふくらます」が上手いと思う。

 掲示板に蛍の知らせありにけり

どうってことない一句である。けれどわたしの好きな句である。この掲示板はきっと黒板のようなまことにアナログ的な掲示板で、人間の手で書かれたものだと思う。キイボードなどで打たれた電光掲示板じゃなくて。それも小さな集落の駅や役場だったりしてそこに住む人たちにとって「蛍」がとても大切なものである、そんな生活風景や人間関係が呼び起こされる一句だ。子どもたちがこれを見て、「蛍が出たんだよ」とか、大人たちがそのことを喜んで話題にする、「蛍」はすてきな一大事なのだ。


俳句の出発は如何にも遅いものでした。六十を疾うに超えてからの横浜髙島屋ローズサークルの俳句教室が私の俳句事はじめです。
半年の受講を終え、講師の本庄登志彦主宰の「双眸」へ入門しました。
「壺」の齋藤玄門下である先生には俳句のイロハから教えていただきました。十年がたちこれからという時、病で逝去されました。(略)
遺された仲間と句会を持ちましたが核のない淋しさ不安があり、居住区内の「繪硝子」へ入会をお願いしました。和田順子主宰の穏やかなお人柄そのままの「和み会」に温かく迎えていただき、今年で十二年になります。
「繪硝子」は来年創刊二十五周年を迎えます。私もこの秋八十五歳となります。祝年のこの機会にこれまで詠んできました句を句集に纏めておきたいと、主宰にお願いいたしました。(略)
目にするもの、体に感じるもの、何でも怖いもの知らずに一句になった初学の頃が懐しく思い出されます。若い頃から多くの趣味を楽しんできましたが、生涯の持ち時間も残り僅かとなり、動ける範囲も狭くなって参りました。今、楽しみは俳句と読書だけになりましたが、俳句を手放すことなく身ほとりの瑣事を詠んでいけたらと思っております。(略)

「あとがき」を抜粋して紹介した。


装幀は君嶋真理子さん。

「ファーストシーン」というタイトルの句集を、君嶋さんらしくデザインした。

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タイトルは金箔。


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用紙は光沢のあるもの。


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表紙のクロスは華やかで温かみのあるもの。


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製本が美しいと思う。


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見返しは綺羅があるもの。


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花布と栞ひも。



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扉。


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けふの音生まるる前の初明かり


第一句集ながら完成度が高い。

小林千秋さんの詠うことへの熱い思いはますます膨らんでいる。


和田順子
 




この秋に八五歳を迎えられるという小林千秋さま。
句集のご上梓をこころよりお祝い申し上げます。











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by fragie777 | 2020-09-17 19:07 | Comments(0)


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