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6月23日(火) 旧暦5月3日
羽黒蜻蛉。 仕事場へむかう途上に。 今日は午後から出社。 朝は仕事をするかたわら、洗濯をし、大地の会から食料品をうけとる。 在宅勤務のこのゆるやかさは悪くない。 昨日の毎日新聞の「新刊」紹介に 今瀬剛一著『能村登四郎ノート(二)』がとりあげられている。 鑑賞書。著者の師の句業を丹念に追ったライフワークといえる一冊。第一巻に続く続編であり、登四郎の円熟期を「老年の艶」とした文言に触れてのくだりが心に残る。 新刊紹介をしたい。 四六判ハードカバー装帯あり 182頁 二句組 本句集は久野のり子(くの・のりこ)さんの第一句集『深緑』につぐ第二句集となる。久野のり子さんは、昭和21年(1948〕愛知県生まれ、現在は愛知県東海市在住。平成12年(2000)「狩」(鷹羽狩行主宰)に入会し、平成19年(2007)に「狩」同人となる。「狩」終刊後、令和元年(2019)「香雨」(片山由美子主宰)同人。俳人協会会員、NHK学園講師。本句集は、平成23年より平成30年までの作品を収録。帯文を鷹羽狩行香雨名誉主宰が寄せている。 生者死者花の下にて擦れ違ふ そこにいるのが生者だけではないと感じたのは、この世ならぬ桜の美しさゆえ。 滝までの水が水押し突き落とす 滝口まで水が水を押し、一気に突き落とす非情と危機感。 緑蔭へ飛び込んでくる子らの声 炎天下を歩いてきてやっと小陰にたどり着いた喜びを「飛び込んでくる」と活写。 このように、久野のり子さんの俳句は知と情が巧みに織りなされ、第二句集らしい深まりと余裕を見せている。 一輪の百花に適ふ帰り花 句集名となった一句である。 本句集の担当は、文己さん。 ご来社頂いた際にぐい呑を持参されて、 君嶋さんにはその色味を参考にしていただきました。 と文己さん。 わたしも覚えている。ご来社のときにぐい呑みを持ってこられて、その色にこだわりがおありだということだった。文己さんの好きな句は、 地虫出で新しき影まとひけり 竹伐るや天空に風巻き起こし翅をさめ星の整ふ天道虫 少年の眉の上なる夏の月 丹念に箔置くごとく牡丹雪 待宵やまだ身に添はぬ母の帯 翅をさめ星の整ふ天道虫 天道虫の一瞬の動作を活写したものだ。一瞬であるけれど、どこかスローモーションのような感じがするのはどうしてだろう。「翅をとじ」ではなくて「翅をさめ」というややもったいぶった端正な表現、「星」という言葉に一度は夜空へと読み手の意識は行き、しかも「星の整ふ」という措辞にたっぷりと時間がながれる。上五中七におおいなる時間と空間を呼び込んでいるのだ。そして「天道虫」という表記。この小さな虫は宙という無限の時間と交感(コレスポンデンス)しているのだ。 少年の眉の上なる夏の月 わたしは見落としてしまったのだが、文己さんはこの句を選んだ。おもしろい一句だ。「夏の月」はいろんなかたちで詠まれいるが、こんなあっさりと「少年の眉の上なる」と詠まれてしまっているのが新鮮といえば新鮮。なにも言っていない一句だ。しかし、少年の眉と言ったことによって「夏の月」がとても涼やかに感じられる。きりっとした少年の眉だからこそ、その涼感を呼ぶのだとわたしは改めて気づいた。うーん、わたし好みの一句かもしれないとも。 待宵や物干し台といふ小部屋 この一句は校正スタッフのみおさんが好きといことである。「物干し台」のある家って最近はとんと見かけない。「物干し台」には、昭和の匂いがする。洗濯物をほすために二階や屋根上に大きく張り出した木造のバルコニーと言えば今風だけれど、月をながめるためにそこに上って待っているのだ。小さな空間を「小部屋」と表現することによって、さらにそこにいる人と人の関係が親密さをましてくる。空に設けられた小部屋である。誰でもが上れるわけではなくて、お許しがなけれな駄目かもしれない小部屋なのだ。 水中花ひらき窮屈さうな水 この句は、わたしがおもしろいと思ったもの。水中花は好んで詠まれる季語であるけれど、「水が窮屈さう」なんて詠まれたのははじめてみた。たしかに水中花は、コップなどに水をたっぷりいれてそこに水中花をしずめると水を吸ってどんどんおおきく膨らんで見事な花をさかせる。花が大きければ大きいほどあでやかだ。しかし、コップの中の水の領分は水中花にうばわれてしまうことはたしか。水中花の支配がなければ遙か先まで見通せていたコップの世界が、急に狭くなってしまうのだ。『窮屈さうな水」こういう表現があったかと。。。 はじめから泳ぐつもりのなき水着 笑ってしまった。そういう水着が海辺にはあふれていたりして。この句、それを身につけている人間より、水着の決意であり運命のように思えておもしろいと思った。 『一輪』は、第一句集『深緑』以降平成三〇年までに発表した作品の中から、三一八句を選んで収録した私の第二句集です。 第一句集から九年という短い期間での刊行は、「狩」の終刊がなければ考えもしなかったことでしょう。「狩」四十年の歴史の中の後半二十年は、そっくりそのまま私の句歴と重なります。ここで後半の作品を纏めることはひとつの区切りであり、俳句に関わる自分の姿を見直すことにも繫がるのではないかと思い決心を致しました。 「あとがき」を抜粋して紹介した。 「狩」終刊となり「香雨」であらたに俳人としての道をあゆみはじめた久野のり子さんであるが、ここで「狩」時代の作品をまとめることによって自身を見直しさらに自身を更新して行きたいと決意されたのである。 本句集の装丁は君嶋真理子さん。 久野のり子さんのご希望とこだわりをとりいれたブックデザインである。 タイトルの一輪は銀箔押し。 銀箔は久野さんのご希望。 句集名「一輪」の命名は片山由美子主宰による。 朝よりまぶしき日ざし稲の花 稲の花ってほんとうに小さなかすかな花である。わたしはとりわけ好きな花だ。よく晴れた日、朝から日差しがまぶしいほど。そんな日差しが稲の小さな花にもとどく。わたしはこの日差しに稲の花ゆえちょっと神々しいものを感じてしまう。 今日のセミオくん。 わたしをみている。
by fragie777
| 2020-06-23 18:52
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