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3月23日(月) 彼岸明け 旧暦2月29日
神代植物園に咲いていた枝垂桜。 空の青さに映えて。。。 胸元へと。 触ればつめたい。 みな写真を撮っていた。 わが街、仙川の駅前の桜は満開までまだあと数日かかるのではないか。 明日は寒くなると言う。 開花は週末か。。。 今日は自転車で出社。 日曜日に近くの自転車屋さんで空気をいれたのですこぶる調子がいい。 「空気入れていただけます?」と言ったら、お兄さんがこっちむいて、 「どうぞ、自由につかってください」と言って指さす。 そうは言われても、わたしはやったことないので、まごまごして、結局女性スタッフに空気をいれてもらったのだった。 しかも無料ですってさ。 わたしも自転車もすごく感謝した。 空気がはいってシャンとした自転車にまたがった。 ああ、この硬い感じ、 いいなあ。 自転車に乗ることが楽しい季節となったのだ。。。 新刊紹介をしたい。 A5判ソフトカバー装帯有り 76頁 岩﨑昇一(いわさき・しょういち)さんは、詩集『迂闊の人』を2018年の12月に上梓されており、本詩集はそれにつづくもの。巻末の「覚書」には、「二〇一九年の年明けから一年間書きためた作品から三十三篇を選んで一冊にまとめた。」とあり、昨年2019年の年末に原稿の入稿があったのでおよそ前詩集上梓後の一年で書き上げたものである。収録作品は33篇、すべて見開き頁で読めるものである。ただし、詩の長さにはやや差があって、レイアウトに工夫を凝らした。 タイトルをすべて詩行の位置より上に置いた。 レイアウトの美しさをそこねず、著者の思いをみたすものとなった。 詩集名は「浮世の櫂」。 「浮世」とは「この世」のことであり、「憂き世」でもあり「無常の世」のことと考えてもいい。そこに棹さしている、ということ。 この詩集には、「浮世」と題した詩が一篇ある。 それを紹介したい。 この詩人にとっての「浮世」だ。 浮世 小波は緩やかに寄せ 心地良く孤独の錨を据える 還流する時の成熟を眺める 諦めと達成が綱渡りに興じ ているひとときにも… 鮮魚はうごめき 地殻はゆがむ 海風の訪いと潮の気紛れを 押し留めることはできない 午睡 食卓の果実が 窓外の風を孕んで輝き 腐れの高貴な香りを燻らす 既に知っている ふいの微風が 偽りの《私》の本性を明かすと かりそめの優しさを剥がし 蜜月の記憶を壜に詰め 固く閉ざして遺棄する 突き動かされてか 自発なのか 信愛の言葉は 引き裂かれてある 停泊する港湾はない 現身の頼りない 生き残りをかけた 蓑と笠 裁きの輩を 欺くための方便であると 赦してはならぬ 道標の朽ちて途絶える辺り 尚も天空に開いた階梯を のぼるひとが一瞬ふりかえる さらばよ 裏切りは唯一真実を 照らすためにある 「かたときも怯むことなく、自己の正当性を捏造し続ける《私》という現象には、《私》を宥め、諫め、笑う《虚構》の舞台が必須である。」 「覚書」に書かれた言葉である。 詩人は、「虚構の舞台」としての詩を必要としている。 その舞台には、さまざざに詩人を宥め、諫め、笑い飛ばす詩という虚構空間があるというわけだ。 詩の言葉でその虚構空間をひたすら埋めていく。 詩によって、現実のわたしは救済されているのだ。 以下、好きな詩を一篇紹介したい。 余命 《他人》の言葉でつづる ジグソーパズルの最後の ひとコマが嵌まらないうちに きみの持ち時間が終わる さあ 退いておくれ 次のゲームへと繰り出しな シーツを剥がされ 前列から転げ落ちる 神社の縁日の囃子太鼓の 音のする潜り戸を抜けると 狐のお面が手裏剣を構える 芝居小屋の舞台にきみはいる 演目の最初の台詞をさがす 逆巻き時計の発条ゲームの始まり 走りぬける針ネズミのように 毬に乗って リニアな 時間を逆さまに演じて見せるが 単調な引きこもりシーンの反復だ ここでも観客に蹴飛ばされ 転げ落ちる 反転する 転がって母の子宮へと 籠もって仕舞いたい 誕生なんて嫌だ 生きて苦労するくらいなら 肘もこぶしもまるめて拒んで 帝王切開でひっぱりだされた 母胎にかえりつく回帰ゲームの 振り出しの鐘の鳴る丘に戻る それも時間切れだっ! さあ やり直しておくれ 借り物競走の途中だよ 背を向けたきみは どこかの鍵を通行人から 拝借して走りだす 本詩集の装丁は、前詩集とおなじく和兎さん。 著者は最初はこれまでの詩集とおなじようにグラシン(薄紙)卷を希望されたが、このデザインは薄紙をまかない方が迫力を感じさせるので、岩﨑さんの了解を経て、グラシンなしで。 詩集のもっている混沌のエネルギーとよく和している。 カバーをとったところ。 表紙。 見返し。 (太郎よ 屈辱をきたえよ) (次郎よ 侮蔑をきたえよ) 空砲のような花火が揚がる 見過ごされた渓流に釣糸を 垂れる猫背の痩人 真率な 背徳者は あくまで柔和な 笑みを浮かべて過ぎる 凡庸な瓜実が歌う (「敗残」より)
by fragie777
| 2020-03-23 20:05
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