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ふらんす堂編集日記 By YAMAOKA Kimiko

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人も花のひとつだったと……

3月5日(木) 啓蟄  旧暦2月11日


人も花のひとつだったと……_f0071480_18032879.jpg

春の木。

冬木とはあきらかにちがって、枝振りがゆったりとのびのびしているように思える。



電車とバスを乗り継いで出勤してくるふらんす堂唯一のスタッフの文己さんは、今日明日も在宅勤務となった。時間差出勤をしてもらっているのだが、やはりできるだけ通勤は避けたい。

一歩外に出れば、のびやかな木々、日差しはやわらかく燦々と降りそそぎ、ものみな輝いてみえる、まさに風光る季節だ。
しかし、どうだろう、わたしたちは肢体を思いっきり伸ばすこともできず、やや身体を前に傾けて大きなマスクをして足早に歩きさる。
なんということだ。。。


「たいへんなことになったよ」とわたしはヤマトの写真に話しかけたのだった。






新刊紹介をしたい。


雅季詩集『風のすがた』(かぜのすがた)


人も花のひとつだったと……_f0071480_18035071.jpg
四六判ペーパーバックスタイル帯あり 126頁 

詩集『風のすがた』は、31篇の詩が収録されており、おおかたが2~3頁でおわる短い詩が中心である。作者の雅季(まさき)さんは、1950年福島県会津市本郷町うまれ、長い間にわたって書き留めてきたものを今回一冊の詩集にまとめられたのだった。大学では政治学を経て、哲学を学んできた方であるようだ。数年のカナダ、トロント暮らしがあるということであるが、それ以外の情報ははわからない。制作途中でお身体をこわしてご入院されるということもあったが、無事に退院されて詩集はとどこおりなく上梓された。

 あなたはわたしの花
 わたしはあなたの花
 同じ風に揺れ
 同じ日差しを浴び
 同じ時に咲いた

帯に紹介されている「花の伝え」という詩よりの詩行である。
本詩集は、この詩行に象徴されるのではないか。つまり人と人との間(あわい)のことを、甘美に情緒的に思索の味付けをしながら展開させていく、そして愛がテーマである。詩集のタイトル「風のすがた」とは、その人と人との関係性のはかなさを「風のすがた」という言葉に託したのではないか。またこの詩集に登場する「花」はかなり意味深である。


本詩集の扉には、世阿弥の言葉がおかれている。

 風のすがた

  その風を得て
  心より心に伝る花なれば
  風姿花伝と名付く
     
         世阿弥



詩を紹介したい。
本詩集の担当は文己さん。
好きな詩は、「雨」と「別れ」と題した作品。
「雨」より。


 雨



 夜に降り続く雨は
 この星の涙に聞こえる
 総て移りゆく世界に生まれ
 生きることを強いられた人の子への
 啜り泣きに聞こえる
 
 流れ落ちる絆
 人のあがき

 白い陶片をつなぎ合わせたが
 眼も欠け 口も欠け
 何より耳の欠けた神の断片に
 祈りは届かなかった
 
 ずぶ濡れになって わたしは気付く
 この雨の冷たさほどに
 生きることは冷たい営みだったと
 
 人は
 青白い回転を続ける小さな星が
 見つけようとした意味の
 無益な結果だったと



もう一篇、詩を紹介したい。





 花咲ける大地


 私たちを叩きのめすことは出来ないとしても
 この世界はいつも
 罠を張り巡らすのに長けている

 さあお取り この花を
 これは地獄への引手です
 掴んだが最後放さないのは
 白い柔らかな手ではなく
 萎れた小さな花のほうですよ

 お聞きなさい
 花の呟きを
  わたしは、在る通りに在るが
  あなたはいつも記憶の虜だ
 頬を寄せて語りなさい
 幼い夢と憧れを
 花は血のように吸い取り
 眩いばかりに咲き誇るのです

 花咲ける地の
 世界は美しい
 総てを覆い尽くす欲望のゆえに
 風に歌う花は
 美しい
 

「花咲ける地の/世界は美しい/総てを覆い尽くす欲望のゆえに/風に歌う花は/美しい」
最後の5行が、わたしは好きである。



この詩集の装幀は和兎さん。
いくつかのラフ案のうち、一番大人しいものを選ばれた。



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人も花のひとつだったと……_f0071480_18035593.jpg

綺羅を用いた用紙に金箔のタイトルが美しい。


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人も花のひとつだったと……_f0071480_18040143.jpg

帯をはずしたところ。


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人も花のひとつだったと……_f0071480_18040663.jpg

扉。
薄いすけすけの用紙である。


人も花のひとつだったと……_f0071480_18040961.jpg
扉をめくると
序詞としておかれた世阿弥のことばがある。



人も花のひとつだったと……_f0071480_18041652.jpg


 人には過ぎたこの星の中で
 人も花のひとつだったと
 人だけがこの星に 愛の言葉を残したのだと



帯に引用されている詩行の次ぎにおかれている3行の詩行である。(「花の伝え」より)







夕方、ちかくの島忠に買い物に出た。


人も花のひとつだったと……_f0071480_18041832.jpg

自転車が寝転がっている、
って始めおもったのだが、これは風の仕業だった。



こんな「風」もある。。。。






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by fragie777 | 2020-03-05 19:45 | Comments(0)


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