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12月3日(火) 旧暦11月7日
湿原の森で見つけた木の実。 すごくいい色をしている。 こういう色は自然のなかでしか出会えない色かもしれない。 ご近所の皮膚科にやっと行って診察をしてもらった。 300メートル先なんて昨日ブログに書いたが、目と鼻の先、30メートルほどのところにあった。 よく見知っている場所がいったいどのくらいの距離にあるか、って結構わかんないもんだなと思った。 金属アレルギーの指をみてもらったついでに、 「あのう、このシミはなんでしょうか」って顔の左横にある7㍉ほどのシミを指さしたところ、 「ああ、これね、液体窒素でまず焼きましょう。平らにして、それからレーザーかな」とお医者さま。 ということで液体窒素で焼いて貰ったのだが、結構痛かった。 顔のシミだからね、なくなると思うと頑張って耐えた。。。。。 新刊紹介をしたい。 四六判並製小口折表紙装 148頁 3句組。 著者の加藤梅夫(かとう・うめお)さんは、1949年東京・日野市のお生まれ、1987年より東京・江東区に移りすんで現在にいたる。美術大学を卒業してグラフィックデザインのお仕事をされていた方だ。俳句は基本的には独学で勉強されてきた方である。本句集『柚子湯』はこれまでの作品を自選して収録した第1句集である。 「あとがき」から紹介したい。 「ストレスには散歩がいいのよ」という妻の一言に縋る思いで散歩をすることにしました。ある日、家のほど近くに「石田波郷宅跡」という案内板をみつけました。そして歩きながら何故か思いました。ひとつ俳句でも作ってみようかと、そんなひょんなことがきっかけで俳句を始めました。 (略) 俳句の入門書を何冊か買ってきて読みました。殊に『合本俳句歳時記』や『定本現代俳句』の古き良き時代の句には癒されました。文語文法も旧かな遣いも俳句をより深く味わうために勉強しました。とても新鮮な感覚でした。 しばらくして、石田波郷記念「はこべら」俳句大会に投句をしてみました。たしか二度目の投句だったと記憶していますが、思いがけず石田波郷門下の山田みづえ先生に「柚子湯」の句で特選をいただきました。「木語」の廃刊から間もない頃でした。翌年に行われた表彰式に山田みづえ先生は欠席されたのですが、石田波郷の御子息の石田修大氏が講演し「財産を残すより皆さんも是非、子どものために句集の一つでも残してください」と、たしかそのように述べられました。その日以来それは魔法の言葉となり、ずっと頭から離れることはありませんでした。翌年も山田みづえ先生に入選をいただき、私にとって最大の俳句の恩人です。句集のタイトル「柚子湯」はそんなところからきています。 その柚子湯の句を紹介したい。 沈めては浮かせて遊ぶ柚子湯かな 本句集の担当は文己さん。 文己さんの好きな句は、 コスモスの丈にとどかぬ夢をみき サフランの咲きて青空陶器市 寒き夜の線描の裸婦立てりけり 草刈の草より強き刃の匂ひ 一月の地球重たくまはるなり あざやかに色かけて売るかき氷 マーチング・バンド追ひ越す青嵐 サフランの咲きて青空陶器市 サフランの花のうすピンクと空の青さがまず目にうかんでくる。そしてさまざまな陶器が太陽の下で放つ硬質な光、陶器市にあつまった人間のざわめき、それらが見えてくる。しかし、サフランがなんとも印象的だ。「サフラン」という言葉のもつやさしくて軽やかなひびきが耳に心地よく、その小さなサフランの花から鮮やかに景色がひろがってゆく。とても気持ちのいい句。「サフラン」と聞くと、わたしは森鴎外の「サフラン」というエッセイを必ず思い出す。鴎外のエッセイの中でとりわけ好きな一篇である。 草刈の草より強き刃の匂ひ 「草刈」が夏の季語。草刈りの現場は、刈られた草の匂いが立ちこめる。夏草の勢いはハンパじゃないから、その勢いを断ち切るための草刈りもヤワではいられない。暑いさなか、汗水たらしながらひたすら草を刈っていく。ムンムンと草の強い匂いが鼻をつく。屈んで刃をいれた瞬間、草の匂いよりもさらにその草刈り鎌の刃の酸っぱいような匂いが鼻をついた、その一瞬を一句にしたのだ。よく状況が見える一句だと思う。 あざやかに色かけて売るかき氷 この一句も「かき氷」という季語を十全に詠み尽くしているのではないか。かき氷にシロップは付きもの、それも赤、黄色、緑、青等々、極彩色がかき氷の特権だ。この一句、「色かけてあり」ではなく、「色かけて売る」としたところにかき氷屋さんの景色が立体的に呼び起こされた。まさに目の前でどばどばと惜しげも無く色がかけられていく様が見えるようである。また、「色をかける」と、「色」とのみ端的に表現したところがわたしたちのかき氷がもつ記憶を自由に呼び覚ましたのである。海水浴場の一角の氷店が見えてくるようでもある。 子をなじりゐて犬ふぐり濃かりけり シャボン玉はしやぎすぎたる子に涙 子どもが詠まれている句を二句あげてみた。最初の一句、「なじる」という言葉が読み手に険しい感情を呼び覚ます。可愛そうとも。足下には犬ふぐりが咲いている。子をなじり、ややうしろめたい思いで目を犬ふぐりにやったところその青が目にしみてきたのだ。その心象を犬ふぐりの色で表現したのだ。二句目は、こちらは子の涙であっても楽しそうな涙だ。子どもってあんまり楽しすぎてはしゃぎすぎたりすると涙を出す、嬉しくて泣き笑い。その子どもをいきいきと捉えた一句。「シャボン玉」を吹いて遊ぶ子どもたちがよく見えてくる。 世の中なかなか思い通りにいかないもので、私の大好きな句「ごはんつぶよく嚙んでゐて桜咲く」の桂信子先生もこの頃に逝去されてしまい、結社に投句しようにも「木語」も「草苑」もなくなり途方に暮れてしまいました。暫く迷った挙句、魅力を感じた主宰の結社に投句したのですが、大人げない私は、ほんのつまらない出来事を理由に一年足らずでやめてしまいました。 ふたたび「あとがき」を紹介した。 本句集には、桂信子への一句も収録されている。 桜餅桂信子に聞きたきこと 本句集の装幀は和兎さん。 グラフィックデザイナーをされていた加藤梅夫さんであるが、装幀については、「本作りのプロにお任せします」という理解を示してくださった。 シンプルなもの、というのがご希望であった。 文字のみ、タイトルにパール箔を使った。 わかるだろうか。 光線にかざすとよくわかる。 用紙は手ざわりのあるもの。 背には柚子をうかべて。。 ここにもパール箔。 見返しは柚子の色に。 扉。 シンプルでカキッとした表情をもつ一冊となった。 私の住んでいる江東区は芭蕉・波郷ゆかりの地で前述した波郷を記念する大会のほかに、時雨忌(芭蕉忌)全国俳句大会があり俳句環境にとても恵まれています。それらを含めて、いろいろなところに投句することは楽しいものです。選者によって選ばれる句も違ってくるのです。それはとりもなおさず俳句は様々であり様々だから面白いということです。言い換えれば俳句は自由なのです。 やや言いわけがましいのですが、そんなわけで遊び心も戯れ心も狂れ心も大切に楽しく自選してみました。ある意味懸命に踏ん張りました。これは無所属の特権だと思っています。あえて編集はせずに作った年から各々数句あるいは数十句を抜き出して、季節順に並べました。 と「あとがき」に書かれているように、無所属であることの特権を楽しんで句作りをされている加藤梅夫さんである。 雪の夜を来て銀巴里の青き椅子 句集のうしろの方に収録された一句である。「銀巴里」は、いまはもうないのだが、1990年ごろまで銀座にあったシャンソンの店。わたしたちの世代ではかつてよく耳にした有名なお店、美輪明宏や金子由香利などが有名かしら。お料理名人の平野レミも歌っていたと思う。わたしは一度は行って見たいと思いながら行けなかった。一時代のシャンソン文化をつくった店である。 雪の夜に行って、それこそ青い椅子にすわってシャンソンを聴いたら、夢のような甘美なひとときが味わえるのではないだろうか。そんなロマンを感じさせる一句だ。 今日は午前中にひとりお客さまが見えられた。 はじめての句集のご相談である。 なつはづきさん。 「青山俳句工場05」(編集発行人・宮崎斗士)という俳句のグループに所属しておられる。 わたしは一昨日までどんな方か存知上げなかったのだが、昨日、大井恒行さんのブログ「日々是好日」を拝見していて、なつはづきさんがいらした。 あれっ、って思ってマジマジ見てしまった。 そして安心した。全く知らない方でももちろんいいけど、大井さんのブログに登場する方って思うとなんだかいっぺんに親しい気がしてきて、もうよく知っている人の気分になってしまったわけ。 そのブログというのは、11月24日のもので、俳誌「豈」の忘年会についてのもの。 そこに集った皆さまの集合写真があって、あらま、よく存知上げている方ばかり。 なつはづきさんは、第5回摂津幸彦賞の準賞を受賞されたご縁で招かれたのであるという。 なつはづきさん。 今日はいろんなご本をご覧になられて造本をおおかたのところ決めていかれた。 来年の春までには刊行の予定であるということ。 お仕事をされている忙しい合間をぬってご来社くださったのだった。
by fragie777
| 2019-12-03 19:57
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