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10月16日(水) 旧暦9月18日
紫蘇の花。 今は「ふらんす堂通信162号」編集真っ只中である。 わたしは昨日「コラム」「編集後記」、今日「編集室から」を書いて渡した。 今回のコラムのテーマは、「最近体験したちょっとした裏切り」 さっきメールで君嶋真理子さんよりイラストが届いた。 このコラムはなんと言ったって君嶋さんのイラストが人気である。 いま、それぞれが自分の書いたコラムに君嶋さんがどんなイラストをつけたか楽しみ面白がったところである。 このコラムを通して、わたしも知らないスタッフたちの日常や趣味を覗き見できて、実はわたしも楽しみにしているのである。 新刊紹介をしたい。 四六判ハードカバー装帯有り。162頁 二句組 著者の松山牧子(まつやま・まきこ)さんは、昭和14年(1939)山口県生まれ、現在は京都府福知山市にお住まいである。平成5年(1993)「桑海」「ホトトギス」に投句。吉村ひさ志、稲畑汀子、稲畑廣太郎に師事。平成6年「笹鳴」に投句。大槻右城、吉田節子の教えを受ける。平成7年(1955)「円虹」創刊より入会、山田弘子、山田佳乃に師事。「ホトトギス」同人、日本伝統俳句協会会員。本句集は、俳句をはじめてよりこれまでの作品を収録した第1句集である。序句を稲畑汀子「ホトトギス」名誉主宰、稲畑廣太郎「ホトトギス」主宰それぞれが寄せ、序文を山田佳乃「円虹」主宰が寄せている。また、本句集の装画はすべて著者のご夫君のホトトギス俳人である松山ひとし氏のご友人の加藤静充氏の手によるものである。 旅共にせし日涼しくなつかしく 汀子 旅土産とは思ひ出と薫風と 廣太郎 稲畑汀子氏と稲畑廣太郎氏の序句を紹介した。 山田佳乃氏の序文を紹介したい。 松山牧子さんは福知山で、御主人のひとしさんと共に北近畿の「ホトトギス」の中心となって地域の活動を支えていらっしゃる。 「ホトトギス」には平成五年に初投句をされ、「円虹」は平成七年の創刊より入会された。その後、平成一六年にホトトギス同人に推挙された。 豊かな穀倉地帯である福知山は大江山を望み由良川が流れる風光明媚な地である。また京都に近いこともあり明智光秀縁の福知山城が残る歴史の古い町である。(略) 句集『旅ごころ』は、その福知山の風土を詠みあげた句が中心である。 梅雨霧のはりつく底の暮しかな 由良川の取れ立ての鮎もてなしに 一村は根雪の嵩に眠りをり 避難布令町内走り秋出水 北近畿ホトトギス大会を開催するにあたって松山夫妻は毎年、各地のホトトギス大会をすべて廻られ親交を深めていらっしゃることもあり、日本中を旅された吟行句が多い。(略)牧子さんは旅を楽しみつつ、肩の力を抜いて伸びやかに詠まれて魅力的な句を多く残しておられる。 句集『旅ごころ』には、そんな御夫婦の辿られた様々な景が見えて来るようで興味深い。 刻々と霞の富士となりにけり たんぽぽや北の大地の日の高く 夏潮と吉野川合ふところかな 鳥海山遥かに望みきりたんぽ 本句集の担当は文己さんであるが、このご本を制作中には著者の松山牧子さんのご希望がいろいろとあって毎日のように電話でのやりとりがあった。とくに装画を描かれた加藤静允氏の作品をどう配するかということにとてもお気持ちを込めれて、いろいろなやりとりがあって一番良きかたちとなったのが本句集である。 文己さんの好きな句は、 雛飾る米寿の母の手を借りて 歩きたく立ちどまりたく春の風 由良川に沿ひ万緑に沿うて旅 路地を行く馬車は涼しき顔乗せて 両の手に松茸持ちて現はれ来 熱燗や母を語りて兄弟 由良川に沿ひ万緑に沿うて旅 「由良川(ゆらがわ)」という美しい川の名前が本句集にはたびたび登場するが、佳乃主宰の序文によると著者の松山牧子さんが住んでおられる福地山市を流れる川で京都北部を流れ、鮎の漁場としても知られ若狭湾に注ぐ川であるということ。本句集には、四季折々の由良川が詠まれている。序文によると「暴れ川としても有名で古くから洪水をおこしてきた」とあり、台風による氾濫が幾たびも繰り返されているらしい。つい最近の関東甲信越地方をおそった台風19号による川氾濫の惨事は、川というものに対してわたしたちに複雑な感情を芽生えさせたが、松山牧子さんは、季節感豊かな美しい由良川を詠まれている。それほど由良川は著者には親しいものなのだろう。ほかに、〈花明り由良川明りして天守〉〈由良川の夜気をつんざく揚花火〉〈由良川のいまだ濁りて曼珠沙華〉〈由良川の源流といふ水澄めり〉〈由良川の空を浄めて出初式。由良川とともに著者の暮らしがあるようだ。 歩きたく立ちどまりたく春の風 風は季節の顔を持つ。「風」そのものをゆったりした幾分開放的な心で受け入れられるのは、「春風」だと思う。「秋風」も気持ちの良いものかもしれないが幾分かの淋しさと冷たさがあり、「冬風」は、歩行困難な場合もあり、「夏の風」は高温多湿であり、「歩きたく立ちどまりたく」との心境にはとてもなれない。この一句、「春風」という季題を十全に詠んだ一句であると思う。春の風を心から楽しんでいる作者が見えてくる一句だ。と書いて、この句をつぶやき見つめていると本当に可愛らしい一句でどんどん好きになってきた、そういう一句。 大花野とは風音のなく揺るる 花野でも広い花野である。秋の草花がとりどりい咲いて、芒が揺れていたりする。秋の草花は春の草にくらべて地味でやや淋しげな風情がある。だからだろうか、わたしたちをそっと招きいれるようなたたずまいがあってわたしは好きである。風の音はしないのだが、みな小さく揺れている。それが花野だ。そのかすかな揺れもわたしたちのこころにわびしさを呼び起こす。「風音のなく揺るる」という措辞はまさに大花野のものである。 花の山下りて見上ぐる花の雲 桜が満開の山に上って花を満喫し、下りてからあらためてその山を見上げたのである。そこには花の山の上にひろがる白い雲。それを「花の雲」と詠んだ。花時でなくては詠めない雲である。「花の雲」が桜時のはなやかな空を演出した。 俳句との出合いは五十四歳でした。主人の勧めもあり、当地の句仲間に入れていただき、毎月二回の吟行句会に参加し、少しずつながら句が作れるようになり、句会が待ち遠しくなりました。(略) 生業の薬剤師を退職し、傘寿を迎える今年、未熟ではありますが今までの句を整理してみようと思い立ちました。日日お忙しい中、「ホトトギス」名誉主宰稲畑汀子先生、主宰稲畑廣太郎先生より素晴らしい序句を賜り、身に余る光栄と存じます。心よりお礼申し上げます。「円虹」主宰山田佳乃先生には随分お忙しい中、序文を快くお引き受けいただいた上に、私の拙い句集を引き立てるよう何かとアドバイスをいただきお礼の言葉もございません。さらに主人の畏友加藤静允先生にはあたたか味のある装画をいただきました。大変嬉しく存じます。 「笹鳴」主宰吉田節子先生をはじめ、共に学び、励ましていただいたこの地の先輩と句友にも改めて深く感謝申し上げます。(略) 「あとがき」を紹介した。 本句集の装丁は君嶋真理子さん。 君嶋さんには、加藤静充氏の装画をいかに美しくご希望通りに配するか、ということに心をくだいて貰った。 この「さくらんぼ」をカバー全体にまわしておく、というご希望であった。 帯をとると、 「さくらんぼ」が可愛らしい。 表紙はオレンジに近い明るいピンク。(この写真だと少々暗い) 文字は金箔。 見返しは金と銀の箔を散らしたもの。和紙風な用紙。 扉はシンプルに。 本句集は「春・夏・秋・冬」と四季別に編集されているのだが、その四季それぞれに加藤静充氏の装画が配された。 これは秋の扉。 花布は金。 栞紐は、白。 積み重ねて来た旅にある数々の「旅ごころ」を胸にますます豊かな句作に励まれ活躍されることをお祈り申し上げる。 「序」より。 帰り咲くものに日溜りありにけり 「帰り花」のことを詠んだ一句である。 そう、たしかに「帰り花」が咲いているとところってたっぷりの日差しがある「日溜まり」である。当たり前のように思えるが、著者の松山さんは、当たり前のように思えて、しかし、詠まれなければ気づかないことをこうして一句に詠まれるのである。この一句を前にするとなんだか背中があったかくなってくる。 つい数日前までクーラーをつけていたのに、今日のふらんす堂は床暖房をつけた。 さっき文己さんが帰るとき、「床暖房もう切れてますけどどうします?」って聞いてくれたので、「つけてくださる?」ってお願いしたから、いまはまだあったかい。 しかし、この異常気象、どうなってんだろう。 老体にこたえるわあ。。。。
by fragie777
| 2019-10-16 19:54
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