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10月9日(水) 鴻鴈来(こうがんきたる) 旧暦9月11日
今日のお昼はちかくのクィーンズ伊勢丹でお弁当を買うことにした。 秋天下を歩いて行くと、塾の建物にいろんなものがいる。 (ああ、ハロウィンね……) この骸骨が風がふくたびに微妙に動くのである。(貼ってあるのだ、実は) 手と足がチラッと持ち上がる。 で、おのずと目にとまる。 この「TRICK OR TREAT」ってどんな意味か知ってます? わたしは知らなかったのだけど、ネットで調べたところ、「TRICK OR TREAT」って叫びながらこども達は各家々を廻るんですって。 「お菓子をくれないといたずらするぞ」っていうような意味ということ。 知らなかった。。。 仙川の街はハロウィンになると、仮装した子どもや家族連れで賑わうようになった。 いいのか悪いのかわかんないけど、わたしは横目でみて通り過ぎるのみ。 で、クィーンで買った今日のわたしのお弁当。 「秋の風味満載の松茸ご飯」と名づけてあった。 698円(税込みだったか税別だったか覚えてない) 美味しかった! もっちろん完食。 新刊紹介をしたい。 46判ハードカバー装帯あり 222頁 二句組 著者の千葉喬子(ちば・きょうこ)さんは、1947年(昭和22)富山県生まれ、現在は神奈川県鎌倉市在住。2007年(平成19)より俳句をはじめる。「鎌倉三木会」にて下鉢清子に師事。「絵硝子」にて和田順子に師事。2010年(平成22)「絵硝子賞」受賞。2014年「絵硝子同人賞」受賞、2017年「絵硝子風韻賞」受賞、ほかに絵硝子のコンクールの俳句部門や文章部門にて一位になられたり各地の全国大会や俳人協会の全国大会などで賞を受賞されている。俳人協会会員。本句集は、教師を退職されてから始めた俳句作品の平成19年(2007)から平成30年(2018)までの364句を収録した第1句集である。序文を和田順子主宰、跋文を下鉢清子氏が寄せている。 千葉喬子さんは、鎌倉市の小学校長を退職されてすぐに私どもの「繪硝子」に入ってこられた。(略) 「繪硝子」のなかでの活躍も目を見張るものがあった。平成十九年に入会、二十二年には早くも繪硝子賞、同二十六年に同人賞、同二十九年に風韻賞と三賞を攫ってしまった。句会や吟行会、周年行事には企画・運営をし、皆を楽しくしてくださる頼もしい存在なのである。 繪硝子賞より 球根の冬の長さを埋めにけり 冬晴れや舟ひとつ吐く桜島 水面なる山引つ張つてみづすまし 同人賞より 燕孵る被災の山河故郷とし 春一番大路を走るスポーツ紙 大仏のバス停に立つインバネス 風韻賞より 一番星待たせてからすうりの花 千年の水音涼し藤古川 さはやかや言の葉ほろと吾を零る 自分らしい句を詠もうと写生の眼を澄ましてきた喬子さんの句が、詩的な描写に変わっていく様子が見て取れる。このまま進んでほしいと願う。句集の中に何気なく置かれている次の句群のなかに、私は喬子さんの心の成長を見る思いがする。 蝮草ひとりの山の深くなる 生くること難し芒は風のまま 手を洗ふ水の重さよ花づかれ 伯父といふレイテの石よ敗戦忌 写生をいったん心に沈めて、それが温めていた思いと触れ合った時ふっと一句になる。そんな作り方を喬子さんは習得しているようである。 序文を抜粋して紹介した。 下鉢清子氏の跋文は、 吟行会の折には真っ赤なジャケットを着用、出発から終始、世話係案内係よろしく、細々と目配りをされている姿が目に浮かぶ。児童一人ひとりに事故無く、落ちこぼれ無くに徹した過去が役立っていると、思わずにんまりとしてしまう。 この度、俳句入門より十二年、これを機に句集をと勧められたのはご主人様であると伺い、まことに幸せな一本であると喝采を送りつつ、更なる前進を期待して已まない。 と記され、「祝句」を送られている。 蝶の羽化聴くさへ心満つるかな 下鉢清子 小学校の先生を退職されてよりの作品とあるが、本句集を読んでいくとそこには生き生きとしたこども達の姿があり、まるで現役の先生であるかのような眼差しがある。 団子虫の皆出て歩く子どもの日 雲梯のみぎ手ひだり手夏が来る 夏来たる金管楽器総立ちに 蝶の羽化見とどけ授業再開す 初めの頃は、もう辞めたのだからと、学校のことを思い出さないようにしました。 それなのに、五・六年経つと忘れた筈の子ども達との暮らしが昨日のことのように鮮やかに甦ってきました。 雲梯をしている子どもたちの姿、授業そっちのけで見入っていた蝶の羽化、入学式の後「二列になって」が通じなかった一年生。そんな思い出を歳月は捨象し、十七音字にぴたりと落としてくれました。 と「あとがき」に書かれている。 本句集の担当はPさん。 落ち蝉に雨やはらかき夕べかな 球根の冬の長さを埋めにけりすわりたきところにいつもいぬふぐり 雲梯のみぎ手ひだり手夏が来る 蟻運ぶ顎ひとつを力とし 二列とは手をつなぐこと入学す 球根の冬の長さを埋めにけり ヒヤシンスやチューリップなどの球根が土に埋められて、春に芽をだすまで球根は地の養分を吸いながら越冬をするわけであるが、その球根をただ埋めたと言わず、「冬の長さ」を埋めたという。球根という物質を時間という観念にして「埋めた」と表現したことによって、わたしたちの脳髄には球根が花開くまでのはるかな時間が呼び込まれるのだ。球根という球体がそのうちにもつ遙かな時間、それを埋めたのである。 雲梯のみぎ手ひだり手夏が来る これは雲梯で遊ぶ子どもたちを日々目にした著者であるからこそ作り得た一句かもしれない。雲梯にぶら下がる子どもたち手がつぎつぎとやってくる様子が見えて、そしてその子どもたちのたくさんの手と一緒に夏もやってきたのだ。運動場であそぶ子どもたちの声まで聞こえてきそうな一句だ。 蟻運ぶ顎ひとつを力とし この一句も運動場で発見した一句かしら。子どもたちと一緒に蟻を見ていたのかなあ。そうか、蟻がなにかを運ぶときってそれを加えて運ぶのか。それを「顎ひとつを力とし」と詠んだところは蟻への絶大なオマージュである。「蟻運ぶ」の上5によってまず読者をひきつけ、何をはこぶではなく、蟻が蟻たる所以の栄光を詠んでみせたところが「生きる」というものに前向きな著者を思わせる。 蝶の羽化見とどけ授業再開す この一句もそうであるが、千葉喬子さんの俳句は「命」に子どもたちと向き合っている句が輝いている。こういう句を読んでいると、学校の教育というのは、知識を教えるのみでなく子どもと共に「命に向き合う」ということ、「生きる」ということに希望を与えることなのではないか、そんな風にわたしは思ったのだった。きっと素晴らしい先生でいらしたと思う。 長かった教職を退いて十二年が経ちました。急にすることが無くなった日々を、仕事のように俳句を作って過ごしました。その結果拙い句がたくさん溜まりました。 この度、和田主宰をはじめ先輩の皆様のお勧めをいただき、その中から三六四句を選び句集を編むことといたしました。(略) 句集を編んでいて、旅の句の多さに我ながら呆れてしまいました。夫が旅大好きで、コーディネートしてくれるままよく旅をしました。いちいち地名を書くと煩雑になりますので、前書きは海外と特殊な地名のみにさせていただきました。 「俳句は足で作る」と言いますが、文字通り私の句は「足」と「お足」で作った句となりました。これからも旅をすると思いますが、何処にあっても、これまで以上に深く物事を見、人々の心を感じて句作したいと思います。俳句に出会って、珍しくて、嬉しくて、歩き回って、精一杯舞台の幕を上げた私が、句集のどの頁にもいます。 「あとがき」をふたたび紹介した。 本句集の装丁は和兎さん。 千葉喬子さんのご希望は、「横向きの蝶をあしらって欲しい、羽を閉じているもの」ということであった。 この蝶々、実は花に止まりかけているのである。 花はパール箔で押してあるので、ちょっとこの写真では見づらいかもしれない。が、それが雰囲気を醸し出している。 用紙はキラが引いてあり、地模様(縦の波線)がある。 淡いピンク色の布をつかった表紙。 蝶々はカラ押しで。 見返しはピンクのマーブル模様。用紙の地の色はあたたかなクリーム色。 扉はやや濃いピンク。 用紙は、やや透明感のあるもの。 花布は赤。 栞紐も赤。 ![]() この十二年は、家族がみな元気でささやかながらも幸せな歳月でした。 これからの人生は、このように順風ばかりではないだろうと思います。 どんな日々が待ち構えているか分かりませんが、「俳句があって良かった」と思えるような人生でありたいと思います。 「あとがき」より。 投函の底打つ音や寒日和 最後の方の一句である。向日性の多い作品のなかで、すこし色合いが異なってみえてくる一句だと思った。ポストに投函された封書の響きがある重さをもって伝わってきた。しかも寒の季節である。作者の気持ちのなかに研ぎ澄まされた幾分かの緊張感が見えてくるような一句である。ふっと作者の覚悟のようなものさえ感じたのであるが、どうだろう。 お客さまがひとりご来社くださった。 くにしちあきさん。 くにしちあきさんは、「知音」(行方克巳、西村和子代表)に所属しておられる俳人である。 この度第1句集を上梓されることになった。 編集作業の方はすでにすすんでいるのだが、今日は本の造本を決められるべくご来社くださったのである。 ソフトカバー装ということでいちおうすすんでいたのだが、いろいろと見本をご覧になっていくうちに、 クータ-バインディング造本に興味をもたれ、クータ-でおすすめすることになったのだった。 ふらんす堂で本をつくられるお客さまには可能な限りご来社いただくようにお願いしている。 本は実際に目でみて、手でさわって、あるいは本の匂いを嗅いでもらって、ご自身が望まれるものをお作りしたいと私たちは思っているのです。 とくにクータ-バインディング製本は、手にとってみないとわかりにくいし、書店ではなかなかお目にかからないものである。 ということでくにしちあきさんにも足をお運びいただいた次第である。 くにしちあきさん。 実はふらんす堂からすでに、ご自身の俳句をフランス語に訳された冊子を刊行されている。 海外に行かれた時に名刺がわりにお渡しするものとして。 パリに永く住まわれたことがあり、フランス語はとても堪能でいらっしゃる。 ふたたびご縁をわたしはとても嬉しく思っております。 ![]()
by fragie777
| 2019-10-09 20:50
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