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8月13日(火) 寒蝉鳴(ひぐらしなく) 旧暦7月13日
旅の二日目、琵琶湖の浮御堂をみたあとは、京都に行き前々から友人に勧められていた「大河内山荘」に行くことにした。 時代劇俳優・大河内傳次郎が別荘として30年かけてつくった山荘というもの。ことに回遊式庭園の庭がすばらしいとのこと。 しかし、京都は凄まじい暑さだ。気温は38度。 この山荘がある嵯峨嵐山は、観光客でたいへんな賑わいである。 人の熱気とうだるような暑さをすりぬけて、山荘をたずねた。 庭園の大きさは計り知れないほど。 どんなに暑いかとおもいきや、木の間を涼しい風がふいてくる。 蚊にさされることもなく、ときどき目の前にひらける景色を楽しみながら昇ったり降りたりしていく。 もやは庭というよりも山中にいる気分。 京都を一望する。 ここでお月見とかしたのかしらん。 ともかくもいい風が通り過ぎていく。 最後は、お休み処でお抹茶とお菓子をいただく。 このお抹茶がべらぼうに美味しかった。 大河内山荘を出てより、歩いていくとよく知った道にでくわす。 あらら、ここは嵐山じゃないの、ということになり、数年前に遊びきたところであり、わたしは4度目になる。 ということは、「落柿舎」があるはずよ、ということになり、そこへ行くことにした。 落柿舎には、はるか20年以上まえに来たことがあるが、それ以来足を踏み入れていない。 焦門のひとり、向井去来の別荘であり、芭蕉も何度かここを訪れて「嵯峨日記」を書いたことはよく知られている。庭や周辺には芭蕉の句碑をはじめ虚子など句碑がたくさんある。 わたしが前回行けず、今回は絶対見ておきたいとおもったのは、「去来のお墓」である。 どんだけ小さいか、この目でたしかめておきたい。 案内口でたずねると、2,3分あるいたところ、落柿舎の裏手にあるということ。 行ってみることにした。 たくだんの墓石があって最初はちょっと戸惑うが、 あった、あった。 小さい。。。。。 「去来」とのみ記してある。 凡(およ)そ天下に去来ほどの小さき墓に詣りけり 虚子 かかる小さき墓で足る死のさはやかに 岡本 眸 岡本眸の句は大好きな一句だ。 墓は40センチほどだと言う。 去来のことに思いをはせながら、髙柳克弘著『焦門の一句』より、去来の秋の句をふたつ紹介したい。 と8月20日と9月21日のもの。 秋風や白木の弓に弦張らん 去来 秋風の吹きすさぶ今日、風に応えるかのように、白木の弓に弦を張ろう、という句意。「秋風」の伝統的本意について有賀長伯の歌学書『初学和歌式』は「風の音はげしくあらきよしをもいひ、又は、身にしみてあはれをそふるやうにもよむ也」と述べる。ここでは前者、すなわち荒々しく吹いているものと解したい。「白木の弓」は、まだニスや漆を塗るまえの木肌がむきだしの弓のこと。「白木の弓に弦張らん」は戦の準備をするわけではない。一種のポーズであり、凋落の季節に負けまいとする気迫や気概を「弦張らん」の語勢に託したのである。「白木」の「白」の字が、白秋ともいわれる秋の季節感に適っている。(『あら野』)季語=秋風(秋) 岩鼻やここにもひとり月の客 去来 名月に誘われてさまよい出たところ、岩頭で月見をする風流人を見つけて、自分と同じだと嬉しくなった─つまり、「月の客」は他人だというのが、作者である去来の意図だった(『去来抄』)。だが、師の芭蕉は、「月の客」は自分自身の事として、月に向かって「ここにもあなたに魅せられた風流人がいますよ」と名乗りを上げていると解した方が良いとした。作者よりも読者のほうが、深く句を理解していることもあるのだ。危うい岩頭にあえてのぼり、月に名乗りをあげているクレージーな人物を、自分自身とするのは勇気のいることだろう。しかし、その勇気を振り絞る者こそが、俳人と名乗るに値するのだ。(『去来抄』)季語=月(秋) 「秋風」の句は去来の句としてよく知られた一句。「月の客」は髙柳さんの解釈がおもしろい。 同じ著者により『芭蕉の一句』で、「落柿舎」ついて触れたところを一つだけ紹介したい。 6月1日のもの。 手を打てば木霊(こだま)に明くる夏の月 『嵯峨日記』 門人去来の別邸、嵯峨の落柿舎にて迎えた未明の情景である。大気は夜の間に冷やされ、昨日の暑さが噓のように涼やか。厳粛な気分で山々へ向かって拍手を打つと、あたかもその木霊に応えるかのように、東の空が明け白んできた、というのだ。『俳諧雅楽集』には「夏の月」の本意が「こころよく清き心 口外に涼しきこころ有るべし 短かきこころもあるべし」と述べられている。この句はそうした本意に合致しているといってよ い。「木霊に明くる」という合理的には説明できない感応に、詩情が宿る。季語=夏の月(夏) 嵯峨野は外国人客が多かった。 去来の墓を訪ねることになろうとは思いもよらなかった旅の二日目となった。
by fragie777
| 2019-08-13 19:24
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