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3月15日(金) 旧暦2月9日
![]() ふらんす堂の近くの花屋さんで「吉野桜」として売られていた桜。 こんな風に店先には桜の姿が見られるようになった。 仙川の桜は、まだもう少し先である。 明け方、「バッキャロー!」という自分の声で目が覚めた。 よく覚えていないのだが、ヘンな夢を見ていたらしい。 新刊紹介をしたい。 四六判ペーパーバックスタイル 186頁 著者の吉江潤二(よしえ・じゅんじ)さんは、昭和6年(1931)富山県南砺市生まれ、現在は大阪市在住。平成9年に鶴見区老人福祉センターにて名村早智子氏と出会い、俳句をはじめる。平成18年(2006)俳誌「玉梓」(名村早智子主宰)創刊同人、現在、大阪市老人クラブ連合会理事、俳人協会会員 大坂俳人クラブ会員。本句集は第1句集であり、名村早智子主宰が序文を寄せている。 平成九年四月、大阪市鶴見区老人福祉センター俳句教室に入会された時、吉江さんは六十歳代半ば。老人センターの利用者とは思えないほど若々しく、言葉遣いや仕草もとてもてきぱきとしていた。すでに存在していた「鶴見句会」が定員でいっぱいになったため、有志によって立ち上げられた「思ひ草大阪句会」の世話役として誰からとなく押し上げられ、二十年後の現在までそれはつづいている。それに加え、「玉梓」創刊後は創刊同人として参加され、鶴見区、城東区の六句会の総まとめとして存在する「玉梓大阪支部」の支部長として奮闘され、年に一度実施されている「初夏の玉梓バス吟行」「秋の鶴見緑地吟行」などの事業も計画の段階からすべて吉江さんに委ねられている。 という書きだしから始まる序文である。いかに吉江潤二さんが矍鑠とされて多いに頼りになる存在であるか、わかる文章である。 本句集の集名は「竿満月」。 春鮒を竿満月に釣り上ぐる からくるタイトルであるが、どうやら「竿満月」は造語であるかもしれない。鮒を釣り上げたときに、竿が満月のようにしなったそのことを言うのであろうか。 本句集には、釣りの句がたくさん収録されている。 賀状来る釣の誘ひと共に来る 鮒釣の竿の先まで日脚伸ぶ 釣堀に日焼けせし顔揃ひゐる 寒釣や定年の無き老二人 釣好きになりさうな孫夏帽子 紅葉鮒顔立ち褒めて放しやる 釣果なく戻る町の灯そぞろ寒 釣を抜きにして吉江さんは語れない。新田会、近畿へら鮒釣会連合会に入会されたのが昭和四十四年というから、ほぼ五十年にも及ぶ釣歴だ。その後近畿へら鮒釣会連合会会長など、役員を長い間務められ現在は顧問をされている。家にいる日がほとんどないほど会議や団体行事の世話役で走り回っているというスケジュールの中で、時間を作っては釣にいくという吉江さん。竿を垂れている時間が一番安らぐといい、何よりのストレス解消だと言われる。 俳句と釣りに日々を忙しくされている著者の吉江潤二さんである。 本句集の担当は、文己さん。 滴りの力残して落ちにけり 裏返し置く庭下駄や梅雨の入 惑星の一つ減りたる残暑かな 水に落ち水の椿となりにけり 朝刊を広げ二月の始まりぬ 梅雨晴間見覚えのなき傘も干す 水に落ち水の椿となりにけり 水に落ちた椿の美しいさまがみえてくる。椿は花ごと落ちるのでまだ生々しい気をたっぷり残している。重さもある。落ちたときにその色彩がゆらぎ、艶やかな赤と蕊の黄色が脳髄にひろがった。「水の椿となりにけり」という措辞によって、新たな水の気を吸って落椿は「水の椿」として新たなる命が吹き込まれたのだ。わたしも好きな一句である。 朝刊を広げ二月の始まりぬ この一句、わたしも心にとまった。なぜ「二月?」ほかの月ではどうなんだろうって、たとえば「三月」とか「五月」とか、「十月」とか入れてみた。やっぱり「二月」だと思った。他の月だと、単なる報告に終わってしまうような気がする。二月という少し、人間に覚悟をさせる「月」.あっという間に過ぎてしまうし、もうお正月気分などではいられないし、そろそろ春が動きだす月、ああ、やっぱり「二月」が動かないのでは、、、と思った次第。 角ばつて一年生の登校す この句も面白いと思った一句である。「一年生」が「入学」の傍題。一年生ってこんなだよね。手と足とか真っ直ぐに伸ばして、背筋も伸びて、緊張しまくっていて、そこが可愛らしいのだけど、それを「角ばる」と表現したところが面白い。目に浮かんでくるほやほやの一年生だ。 『竿満月』は、私の最初で最後となる句集であろうかと思います。 平成八年に職を辞し、何となく地域の老人クラブ、町会活動を手伝う事に成り、そのまま今日に至っております。 平成九年に鶴見区老人福祉センターで俳句を勧められ、俳句教室で講師の名村早智子先生と出会い、俳句のいろはからご指導を頂きました。俳句を詠む事を通じての生きがいや仲間づくりの楽しさを教えて頂き、私の第二の人生が始まり、句会や吟行会と大勢の仲間、句友と交流し楽しい日々を過ごしております。 私は昭和四十年頃からへら鮒釣を始め、四十年末から平成にかけての釣ブームの時は、釣をするというよりも釣大会の世話で各地へ出掛けていろんな方との出会いがありました。現在もクラブの月例会で、俳句共々釣を楽しみ、元気をもらっております。 「あとがき」を抜粋して紹介した。 ほかに 新米の届く達者な母のゐて 百幹の竹それぞれの冬日浴ぶ 座禅草湖国の雪を被りしまま 春惜しみ一時惜しみ釣りゐたり これからと云ふ梅林に来てゐたり 落し文ひとつ拾うてみたものの ポケットにカップ酒あり梅探る 炎昼の吾が影吾れが踏んでをり 寄り添うて揺れて寄り添ふ秋桜 本句集の装釘は君嶋真理子さん。 ペーパーバックスタイルのシンプルな造本であるが、とても上品な仕上がりとなった。 用紙の細やかな模様が本に趣を与えている。 扉。 人ごとのやうに米寿の春迎ふ 若さを保つ秘訣を尋ねれば「忙しくすること」とこともなげに答えられるが、多くの人々に必要とされる毎日の中で、気が付けばいつの間にか米寿になっていたという。「歳は関係おまへんわ」と笑顔で答え、飛びまわる吉江さん。どうみても米寿には見えない。それでもお体に留意され、健康長寿を保っていただきたい。 ふたたび名村早智子主宰の序文より。 私の人生においてオンリーワンとなる自分史を上梓する事が出来ました。 と、吉江潤二さん。 自転車に秋の空気を入れてをり この句も、「秋」ではなくて「春」「夏」「冬」等々ではどうなのだろうかと思った。しかし、やっぱり秋の空気である。やや冷気をおびた緊まった秋の空気でないと、自転車はシャンとしない。爽涼の気に満ちた一句だ。 お客さまが二人いらっしゃった。 俳人の石寒太氏と、倉持梨恵さん。 倉持梨恵さんは、俳誌「炎環」に所属しておられ、今回は第1句集を上梓しするための相談に見えられたのだった。 最初は第1句集シリーズにご参加の予定であったが、いろいろと考えられてやはりオリジナルなものをということで、今日はふらんす堂でいろんな句集をご覧になられたのだった。 「好きな色とかなんでも言うといいですよ」とかたわらの石寒太主宰がいろいろとやさしくアドバイスをされる。 担当はPさん。 伺えば、倉持梨恵さんは、俳人協会の会員であり、俳人協会が主催している超結社の若手俳人の句会に参加されているということ。 そこで、ふらんす堂から句集を上梓された黒澤麻生子さん、池田瑠那さん、山田牧さん、中村ひろ子さんなどをよくご存じであるということだ。そういうご縁も伺えば嬉しい。 石寒太氏と倉持梨恵さん。 倉持梨恵さんのご主人は、パティシエでいらっしゃるということ。 「お家でケーキは作られますか?」と伺ったところ、「いいえ、作りません」ってにっこりされた。 そうよね、ケーキ作りはお仕事ですものね。 お家まで作っていたら休む時間がありませんよねえ。とわたしは申し上げたのだった。
by fragie777
| 2019-03-15 19:13
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