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12月18日(火) 納めの観音 旧暦11月12日
Mさんは、仕事でなじみの店へと向かっている。 古書店や紳士帽子専門店があったりしておもしろい。 ここは、絵やポストカードを売っているお店。 店を縁取っているワインカラーがわたしの好みである。 いろんな古書店もある。 古書店には凝った本なども置いてあって、本づくりの刺戟をうけることも多い。 ウインドウに鼻をこすりつけるようにして見ていく。 美しい革装の本が飾られている。 右の大きな本はすべて革仕様のものだ。 (なんという贅沢な、、、、、) さらにとなりにある二冊の本に目をやった。 両方ともやはり革装である。 右は天金だ。 書名をみて、驚いた。 アルベール・カミュの本だ。 タイトルは「La Peste」とある。 「ひゃあ、これって「ペスト」じゃん!」とわたしはEさんに向かって叫ぶ。 よくよく見れば同じタイトルである。 なんとこれは別々の本ではなく、右側が本体、左側は函なのである。 なんとも凝ったカッコいい本だこと!! 函の背がまるくカーブしていて、天は白い革である。 表紙の革の凝り方といいため息がでてしまう。 その本が「ペスト」ですって。 学生時代に新潮社の文庫本で読んだ「ペスト」であり、カミュは好きな作家である。 わたしのまわりでは、サルトル派よりもカミュ派が多かった。 「革命か反抗か」という本がよく読まれ、革命はサルトル、反抗はカミュだったか。 カミュは若き青年たちに愛された作家だ。 あの頃はみな頭デッカチだった。 かつて小さな文庫本で何度か読んだ『ペスト』が、こんな革装の本となって飾られているとは。。。。 このブログを見ているかも知れない大学時代のわが友人たちよ、 古書店でこのようなカミュの本に会うとは、ちょっと驚きもんじゃありません? 手にとって見たかったが、なんだかお店の敷居がたかく躊躇してしまった。 そして、さらに、 わたしたちは次の古書店でもさらにまたおもしろい本をみつけたのだった。 昨日の讀賣新聞の「枝折」に竹岡一郎句集『けものの苗』が紹介されている。 木耳のはばたく音に囲まるる 竹岡一郎 「鷹」同人の第3句集。独特の感性で、日常が非日常な幽玄の世界に転じる。 新刊紹介をしたい。 46判ペーパーバックスタイル 70頁 著者の今泉忠芳(いまいずみ・ただよし)さんは、なかなか謎の多い方であった。昭和9年(1934)愛知県生まれと略歴にある。あとはお仕事の経歴のみ。俳歴は記されていない。お医者さまであっていまも現役で働いておられるということである。お目にかかったこともなく、担当の文己さんとのやりとりは主に手紙、メールをなさるようであるが、長い文章はかかれずに一行のみ、「お声を聞いたことある?」と文己さんに尋ねたところ、「ええ、一度だけお電話をいただきました」とのこと。原稿を頂いたときは、このままおすすめしていいのかしらと、ちょっと不安であった。 なかなかご連絡もとれないこともあって、ご病気になられたのでは、などとも心配をしたりした。 しかし、出来上がってきた本についてとても喜んでくださった。 帯には ある日の小さな旅にみられた滴を集めました。 滴はしづくと読んで下さい。 大和、鳳來寺、稲城山城、相國寺、哲学の道の滴です。 ということで、行かれた先々の旅の句が収録されているようだ。 担当の文己さんはどんな句を選んだのだろうか。 大楠の裂け目を伝ふ時雨かな 斑鳩そば卓に一輪杜鵑草 ほのくにのほを鳳に受け風薫る 哲学の道に垂れたる野藤かな 大楠の裂け目を伝ふ時雨かな 大和で詠んだ句である。大和の古き地で詠まれたかと思うと、大楠もただの楠の木ではなく、幾星霜の時代の変遷のなかに耐えて来た大楠のようにおもえ、その裂け目もまた荒々しくかつ神々しいものがある。そこに時雨が降りかかっているのだ。 哲学の道に垂れたる野藤かな 哲学の道はわたしも何度か行ったことがある。法然院をたずねると決まって通る道である。この一句「野藤」がとてもいい。「哲学」というおおいなる学問に拮抗するように野藤が垂れている。その野性味がすばらしい。 ほかに、 塑像みな涙や声や秋の雲 (大和) 金箔の剝げに秋色薬師像 ( 〃) 新緑の山の午睡に風渡る (鳳来寺) 信長の石垣梅雨の日がこぼれ (稲葉山城) 方丈の襖絵淡し浅き春 (相國寺) 疎水ゆく落花の走る速さかな (哲学の道) 「鳳来寺(ほうらいじ)は、愛知県新城市の鳳来寺山の山頂付近にある真言宗五智教団の寺院。本尊は開山の利修作とされる薬師如来。参道の石段の数が1,425段ある。また、愛知県の県鳥であるコノハズク(仏法僧)の寺としても有名である。」ということ。 「稲葉山城」は、織田信長に攻め落とされた城でのちに「岐阜城」と改名したようである。 「相國寺(しょうこくじ)」は、「日本の禅寺。京都市上京区にある臨済宗相国寺派大本山の寺」であるということ。 著者の今泉忠芳さんは、医師の仕事のかたわらこうして小寺名跡をたずねて俳句をつくっておられるのである。 その俳句を「滴」としてまとめられたのが本句集である。 「滴に映ったものを皆様と共有できましたら幸いに存じます。」と「あとがき」に書かれている。 本句集の装幀は君嶋真理子さん 著者・今泉忠芳さんのこだわりがそのまま一冊となった句集である。 虫の声厨子の捨身に目を逸す 「厨子の捨身」ってあの「玉虫厨子」に描かれている「捨身飼虎図」のことで、わたしにはいちばん印象的な図である。いったいなんでダイビングして飛び降りようとしているのか。よく見ると下に虎がいる。釈迦がまだ王子の時代に、飢えた虎の母子に自らの肉体を布施するという物語が描かれているのであるということ。今泉さんがこの「玉虫厨子」の須弥座に描かれた絵に目をとめたとき、ちょうど虫の声がした。かそけき虫の声だ。ここにも命がいる。そしていままさに命をすくわんと命を投げだそうとしている命もあるのだ。 定期検診で胃カメラを呑んだ。 結果を見ながら、お医者さまは、 「胃はとってもきれいでなんの問題もありません」 「しかし……」と医者は一呼吸おき、 「あなたの腹黒さはどうにもなりません」 と言った。 なんですって! わたしはドキッとした。 どうしてわかる。。。 心拍数が一挙にあがる。 というのは、多分嘘です。 医者がわたしにそう言ったように思えたのだった。 そこまで見とおす医者がいたら、 お・そ・ろ・し・い・・・・
by fragie777
| 2018-12-18 19:27
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