カテゴリ
以前の記事
最新のコメント
検索
外部リンク
画像一覧
|
11月28日(水) 旧暦10月21日 気がつけばホテルのあちこちにマン・レイの写真が飾られていたのだった。 なぜだろうって思っていた。 あとで分かったのだが、マン・レイのアトリエはこのホテルの目の前だった。 ホテルの窓から常に見えていて、(あの美しい建物はなんだろう?)とずっと思っていたのだった。 それが帰る日になってMさんが調べて教えてくれたのだった。 Mさんはこのホテルをすでに利用していたのだが、はじめて知ったということ。 思えばMさんとは今年のお正月に恵比寿にゴッホの映画を見に行ったついでにマン・レイ展をやっていて覗いたことを思い出す。 この建物は1911年に建てられビゴの磁器タイルで飾られている。 ここは31番地、アルチュール・ランボオは14番地に住んでいたということも知り驚き少し興奮した。 ホテルから見える建物はどれも美しい。 帰る日のホテルの窓からみえるモンパルナスの墓地の一角。 この墓地にはボードレールが眠っている。 前日、天気のよい日に何人かの眠れる人たちの墓を訪ねた。 マン・レイもそのひとり。(あとで紹介(?)したい) この日は冷たい雨が降っており、それがやがて霙に変わった。 左手にマン・レイのアトリエがあった建物がみえる。 ランボオは、その右手先あたりになるようだ。 マン・レイのアトリエが面している小さな通りはカンパーニュ・プルミエ通りと言って、ゴダールの映画「勝手にしやがれ」が撮影されたところであり、映画ヌーヴェル・バーグの運動の中心になったところ。(この通りについてはまたあとで紹介したい)多くの芸術家が住んでいたのだ。 また、ホテルの近くにはシモーヌ・ド・ボーボワールが住んでいたマンションがあるということ。 私たちの世代にとっては、モンパルナスは青春が甦るなかなか魅力的なところだ。 マン・レイが好きだって言っていたT子さん、 アトリエのあった建物ちゃんとわかりました? 昨日であるが、監督ベルナルド・ベルトルッチが亡くなったことを新聞で知った。 まだ77歳だったのかと思った。 ベルトルッチの作品は結構みていて、「革命前夜」「ラストタンゴ・イン・パリ」「1900年」「ラスト・エンペラー」などなど、すぐに思いだすが、とりわけ好きな映画がある。「暗殺の森」。これはドミニク・サンダが素晴らしい。ギリシャ彫刻の少年のように登場し、ただし不敵な目をして、またたっぷりと成熟した女にも変貌する。しかも少女のようなかたくなさをみせるときもある。退廃は免れがたく若い肉体に沁み込んでおり、ヨーロッパの歴史と土壌が生みだした女優だと思った。 この「暗殺の森」、今ではなかなか見ることがかなわないのが残念である。 好きな作品をつくった監督がどんどん亡くなっていく昨今である。 さて、新刊紹介をしたい。 著者の住田千代子(すみだ・ちよこ)さんは、昭和26年(1951)広島県生まれ、現在兵庫県加古川市在住。平成16年(2004)「濱」に入会し、松崎鉄之助に師事、平成24年(2012)「濱賞」受賞、「濱」同人。平成25年(2013)「濱」終刊後「六花」入会、山田六甲に師事、平成27年(2015)「六花」同人。本句集には、山田六甲主宰が序文を寄せている。 六甲主宰はたくさんの句をあげて鑑賞をされているが、抜粋して紹介したい。 千代子は松崎鉄之介の「濱」同人であった。六花に来る少し前、ご主人は重病を患い、余命いくばくもない宣告を受け、亡くなっている。 病む夫をなぐさめんとて野に遊ぶ (略)「濱」時代の中「病む夫をなぐさめんとて野に遊ぶ」に私は胸を打たれた。人は死を目前にすると、目にするものの何もかもがいとおしく輝いて見えるという。人はこの世に「遊びをせんとや」と詠んだ歌や、法華経に「衆生所遊楽」というのがある。この世に「遊び」に生まれてきたのに、その遊びを別れの儀式にした家族の悲しみは計り知れない。私は躊躇なくこの作品を句集の題名にと千代子に提案した。 句集名の由来である。 曇る日はくもりの色の春障子 料峭やこつと響ける靴の音 ゆつくりと溶かす漢方花疲れ やはらかく肌刺す風や麦の秋 虫干の色柄どれも母好み あさがほを破りしほどの雨上がる ひとつ垂る植ゑし覚えのなき糸瓜 秋霖や介護に暮れる友をふと 「春障子」は微妙な春の光の変化を障子にうべなう感覚が繊細で見事。「料峭」の靴音はご主人が帰って来たのではないかと錯覚している場面か、料峭が利いている。「虫干」は、干し並べてみたら、ほとんど母好みの着物で、それを着せられていたんだわ、という微苦笑。「あさがほ」の作品は明け方に降った雨の強さを破れた花びら(物)で表現。植えた覚えのない「糸瓜」は、しっかり者の千代子にもこのように軽妙なところがあったのか、と安心させられる場面である。 また、介護に明け暮れる友人を物事の途中でふと思いやるやさしさをも見せる。(略)きびきびと柔軟に作品を得ながら、今後どのように変化していくのか楽しみである。 六甲主宰は文中著者の住田千代子さんのことを、「鋭い洞察力と作為を排除した涼やかな眼がある」とも語っておられる。 本句集は、お嬢さんの恋、ご主人の闘病などのことから始まって、日記風に日々のことが俳句で語られている句集である。語り口がとても自然体でさりげないので読み手は思わず引きつけられてしまう。そしてどんどん先を読んでしまう。読み終えたあとには、爽やかな思いが残る句集である。そして濁りなき著者の心に出会う。 俳句が著者にぴったりと身に添うているのである。まるで息をするように住田さんは俳句をつくり、日々を紡いでいく。 わたしは一読後そんな感想をもった。 本句集の担当はpさん。 子の目玉とび出しゐたる金魚鉢 風光るじようろの水を歪ませて 白木蓮の散つて水面を浄めけり 晴れる日を待つて雛を納めけり 囀のはみ出してゐる大樹かな 竜の玉貰ふ子の手のぬくみまで 白木蓮の散つて水面を浄めけり はくれんが散った。そのはくれんは地上に散らないで、水の上に散ったのである。近くに池や川があったのだろう。はくれんの花びらは肉厚で大きく重さを感じさせる。そのひとひらが水面にとどいた途端、はくれんの白さがきわだったのか。はくれんの花びらは多くはそれほど損なわれない状態で散っていく。ひとひらの掌をおおうようなはくれんの花びら、その存在感、そこにはまるで霊力がやどるようだ。静かに水面にふれたときその霊力が水を支配したのである。 あさがほを破りしほどの雨上がる この一句、景色がよくみえてくる。「朝顔」の花を、「破りしほど」という表現で見事に言い止めたと思う。「破れる」と表現できる花はそう多くはないはず。「裂ける」とも言いうる朝顔であるけれど、この句の場合、雨が破ったのだ、朝顔を。すでに雨が上がった目の前には、雨に打たれてその衣を破られてしまった可哀想な朝顔があるのみ。しかし、どんなにみじめな様子であっても朝顔なのである。 誘われて何気なく始めた俳句ですが十五年の月日が経っております。振り返ってみますと苦境の時、俳句は私の心の拠り所となりました。「濱」が終刊になり「六花」に入会させていただき五年が経ちました。山田六甲主宰のご指導に写生の大切さを教わりました。句会、吟行会にて主宰直々の指導を賜り、最高の幸せだと嬉しく思っております。俳句の楽しさに苦しさも混じりながら、今日に至っております。句集名は「病む夫をなぐさめんとて野に遊ぶ」闘病中の夫の気分転換にと、出掛けていた頃の句から「野に遊ぶ」といたしました。改めて深い感慨にふけっております。 「あとがき」を紹介した。 ほかに、 羅の風が縞目を乱しけり 雪吊を仰ぐに傘をすぼめけり 雛流し子のひらひらと手を振れり 夜濯ぎや乳の匂へる小さきもの ランドセル下ろして花の二三片 雨粒に塞がれてゐる網戸かな 仏生会門といふ門開けてあり 吊り忍風に雫のゆがみけり 子は影を追うてはしやぐよ後の月 万緑に包まれてゐるひとりかな 縄跳びの波に夕日の沈みけり 薄氷の思ひのほかに重たかり 燕の子仏師の家に生まれけり 名を知らぬ火の蝉の木と名付けたり 騒ぐ子に蝉一瞬の閑けさよ 本句集の装幀は和兎さん。 色は辛子色。 あたたかないい色である。 畦焼きの火を追うて風走りけり この句集は今までの生き方の確認であり、未来への生き方を示唆しているのである。 と帯(序文)にある。 先日発送を終え、ひと段落していましたら おめでとう・有難う の電話が鳴りつづき 夕飯が冷め冷め状態・・嬉しい悲鳴です。 句集など考えても居なかった私に、 山田六甲主宰が勧めて下さいました。 形になると嬉しいものです。 電話の声、言葉から皆さん喜んで下さっているのが伝わります。 写真もどうかな? と思っていましたが、 長く会っていない方からは、昔を思い起こす。 装丁の帯の色もタイトルとよく合っていて素敵。 皆さんからの評を、嬉しく思っています。 担当のPさんより、住田千代子さんからいただいた喜びのメールである。 青空に溺るる小さき水着かな この一句も印象的だ。子どもの水着が空に干されて風にはげしく揺れている。それを「青空に溺るる」と捉えた。子どもの水着というものは何か必死さを隠し持っているような気がわたしにはする。それはこれから泳ぎを覚えていかなくてはならない水着であり、遊ぶためにももちろんあるが、大人の水着とくらべてなんだか必死である。小さな命をまもるものであり、大人が目をはなすと子どもはすぐに命があやうくなる、そんな身体についている水着である。だから空で風に揺れている水着だって必死である。ああ、もう溺れちゃっている。。。。 実は昨夜明け方6時頃まで一睡もできず、ようやくうとうとしたところ、大寝坊をしてしまった。 1時間30分ほど遅刻。 おそるおそる仕事場に行くと、 (遊んできたんだから、ちゃんとしなさいよ)ってスタッフの目が言っていた。 その目がおっしゃる通りです。 弁解の余地ありません。 ![]()
by fragie777
| 2018-11-28 20:21
|
Comments(0)
|
ファン申請 |
||