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10月4日(木) 旧暦8月25日
蔵王の紅葉。 昨夜の緊急地震速報には驚いた。 猫を膝にのせてまったりしていた矢先だった。 結局どうしたかというと、 ただウロウロしただけだった。 今日も新刊紹介をしたい。 四六判ハードカバー装 254頁 著者の内山花葉(うちやま・かよう)さんは、昭和18年(1943)新潟県柏崎市生まれ、現在は茨城県つくば市在住。昭和55年(1980)生涯学習講座俳句教室で俳句を始める。昭和61年(1986)「草紅葉」入会、平成12年(2000)「草紅葉」同人、平成15年(2003)「沖」入会、能村研三に師事、平成20年(2008)「沖」同人。俳人協会会員。本句集は平成15年から平成30年(2018)までの作品を収録した第一句集である。序文を能村研三主宰が、跋文を吉田政江さんが寄せている。 麦の芽の風に逆らふ力あり 神々の白さに雪嶺かがやけり 本句集の巻頭一頁に据えた二句である。「沖作品」に投句し始めた頃の作品と思うが、一句目の麦の芽の句、秋に蒔かれた麦が一月になると春草のように畑にあざやかに青い芽を出し、折からの寒風に萎えることなく自然に向かう力に着目した。二句目は雪嶺の神秘的な神々しさを捉えている。いずれも確かな写実の眼と独自の感性をたたみこんだ句である。 序文より抜粋して紹介した。 武蔵野の沸点桜ふぶきかな 句集名となった一句である。「沸点」とは「液体が沸騰しはじめるときの温度」で、この句は俳人協会の「花と緑の吟行会」の句であるという。「桜の散るさまは雄大さや潔さを感じさせるが、それを見た自らの高揚感を「武蔵野の沸点」という言葉で表現して多くの選者の特選に輝きこの日の大会賞を取った思い出の句でもある。」と能村研三主宰は序文に書く。 晩年の未知へ葉桜くぐりけり 昨今、日本人の寿命が延びてきた。何歳からを晩年と云うのか個々夫々であるが、まだまだと思っていてもやって来る晩年、「晩年の未知へ」とポジティブに受け止める余裕が清清しい。総て見るものを吸収して作品にしていくバイタリティを秘める花葉さん、これからも洞察力を持って、更に精進されて第二句集に向けて進んで頂きたい。 吉田政江さんの跋文より。吉田政江さんはたくさんの句をあげて鑑賞されている。内山花菜さんについて「常に新しい情報に敏感で意欲的に取り組む精神が作品にも表れ、その上達の早さに驚かされる。」とも書かれている。 本句集の担当はPさん。 麦の芽の風に逆らふ力あり 鯊の潮埋め立てて国角ばれり 眠らんとする泥揺すり蓮根掘る 初蝶に山野浮き立つひかりかな 弦は風ストラディバリウスなる冬木 梨を剥く刃先は夫へ向きたがり 初蝶に山野浮き立つひかりかな 初蝶のかがやきがよく見えてくる一句だ。「山野浮き立つ」という叙法が自然もまた春の訪れを喜んでいることを知らせ、その初蝶を見ている作者も心浮き立つように初蝶を迎え入れている。山野のなかの一点の蝶に急速に焦点をしぼって「ひかり」として初蝶を浮き立たせた。蝶がもっとも光ってみえるのはやはり初蝶なんだと思う。 梨を剥く刃先は夫へ向きたがり ドキッとする句である。「梨」と「刃先」と「夫」との関係が平穏ではない。しかし、梨を剥いているのは作者であろう。作者が梨を剥いているのだが、作者が刃先を夫に向けているわけではなくて、あくまでも「刃先」に主体性があって、その「刃先」がわが夫へ切っ先を向けたがっているという、作者はどういうことかしら、などと嘯いている感がある。この句「梨」だから一瞬の不穏も許されるのかもしれない。シャリシャリと剥いてそれでおしまい。あとは甘くてさっぱりとした梨を味わうのみ。 「沖」の「伝統と新しさ」の精神は私の俳句の核となり、類句類想のない自分らしい句をと心がけて参りました。 以来十五年間の自分の俳句はどんな色合いを帯びているのだろうかと考えるようになり、句集という一冊にまとめてみたくなりました。もとより不器用な句ばかりで何かと躊躇する自分を励ましようやく纏めることが出来ました。 人生の後半にあっての俳句はドラマチックな出来事のない平穏な毎日を詠んだものと思っておりましたが、来し方を振り返ってみると親の死や日本列島を揺るがす地震などそれなりの起伏があったことに気付きました。幸い健康に恵まれ句友に恵まれ今日まで自由に楽しく俳句を続けることが出来ましたことに改めて感謝しております。 「あとがき」より抜粋して紹介した。 ほかに 水が水押し上げ軋む下り簗 原始鳥類の骨かと蓮の枯れきつて 薄氷のひび虹色を放ちけり 大根蒔くひたすらな身を二つ折り 喪の家の今朝上げてあり秋簾 雪降るや空気しづかに重くなる 泣くことが言葉よ烏瓜まつ赤 ジュラ紀より立ち泳ぎして孑孑は 長き夜の本閉づ純愛に疲れ 本句集の装丁は和兎さん。 白を基調に金茶色が差し色となっている。 見かえし、花布、栞紐を華やかに。 出来上がった一冊をみて、わたしは「なんか、クリムトの絵みたいね」って言ったのだけど、どうかしら。 ふっとそんな風に思ったのだった。 トマトのやうな笑顔で負けず嫌ひなり これは正に内山さんの人格そのものを表す句のようで、温厚な人柄で人に対して優しく接しながらも、俳句の表現においては常に類型を脱する努力を怠らず、これからの俳句作家として俳句に新しさを求めていく詩魂を固められたような気がする。この句集の上梓をステップとして一層の活躍を期待したい。 能村研三主宰の序文より。 この「トマト」の句、わたしも好き。 いいじゃあありませんか。「トマトのやうな笑顔」なんとなくわかる。で、「負けず嫌ひ」なんて、きっと愛されキャラだと思うな。トマト好きの人にとっては愛らしく美味しそうな笑顔である。 トマト嫌いの人にとっては?、、、 ああ、 そこは考えなくていいんじゃない。 今日の毎日新聞の坪内稔典さんによる「季語刻々」は、戸田菜々花句集『体温』より。 秋蝶の過ぐるを待つてゐる球審 戸田菜々花 句集「体温」(ふらんす堂)から。句集ではこの句の前に「猫じやらし遅刻ばかりの草野球」があるが、蝶が去るのを待っているのも草野球の球審だろう。ところで、わが家の孫の家では、父親がもっぱら仲間とサッカーを楽しんでいる。草相撲、草野球のように草の名を冠すると素人のスポーツになるが、今は草サッカー(?)の時代かも。 ここまで一気にブログをかいてきた。 疲れたし、お腹もすいた。 わたしはおもむろに机の右側におかれている抽出ボックスの第二段目をあけて「アーモンドチョコレート」の箱を取り出して、ひと粒、口に放り込んだ。 (フッフッ、隠してあんのさ……) さっ、 帰るとするか。。。 今日は緊急地震速報なんてありませぬように。
by fragie777
| 2018-10-04 20:09
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