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9月11日(火) 二百二十日 旧暦8月2日
鎌倉・鶴岡八幡宮の蓮池。 昨夕は、帰りがけに予定どおりヨーグルトを買ったのであるが、無花果がおいしそうだったのでそれも購入。小粒のものが六個入っている。 今朝、ヨーグルトのなかにその無花果をひとつ細かめに切っていれてみた。 (なんでもいれちゃうヨーグルトなので……) そして口にいれたところ、これがたいへん美味しいのである。 ヨーグルトと一緒に無花果を食したことがこれまでになかったのであるが、これほど美味しいとは。 とろりとしたヨーグルトに無花果のまろやかな甘さとやさしい酸っぱさ、いい感じでミックスされて、ちょっと癖になりそうである。 無花果がでまわる季節はとても短い。 わたしはせっせと無花果を買うことになりそうである。 食したことのない方、 お試しあれ。。。 新刊紹介をしたい。 A5判ペーパーバックスタイル 72頁 第一句集シリーズ。 著者の石戸菜々花(いしど・ななか)さんは、昭和42年(1967)生まれ、東京在住。俳句は、超結社句会にさそわれて始め、「結社に入ってもっと勉強するように」と言われ、平成22年(2010)に「円虹」(山田佳乃主宰)に入会し、現在に至る。 本句集は、平成22年(2010)から平成30年(2018)年までの作品を収録。山田佳乃主宰が序文を寄せている。 菜々花さんの俳句は対象の独特の把握と視点のユニークさで一味違った趣がある。 斬新ではあるが、現代的な感覚が豊かな語彙と的確な表現で微妙なバランスを保っている。 モダンですらりとした菜々花さんの雰囲気がそのまま俳句にも表れていて、いつも俳句を読むと菜々花さんらしいなと思うのである。 徳利の首より冷むる春の果 手折らぬも手折るも寂し野紺菊 ポケットの奥のざらりと磯遊 水菓子のよそよそしさや迎盆 かたかたと椅子の傾ぎて氷店 寒木に抱きつけば象の手触り 鋭い五感を働かせた対象把握は印象的で実感を伴って伝わって来る。なんでもないような皮膚感覚が菜々花さんにかかれば、心のどこかを揺り起こすような一句となるのだ。 序文より抜粋して紹介した。「伝統的なものと現代的なもののバランスが絶妙である。」とも書かれているが、まさにその通りであると思う。 体温をうつさぬやうに桃を剥く 手の平の体温がどうしても桃にうつってしまうように、句には私の体温がうつっていると思い、この句集を「体温」としました。 「あとがき」の言葉である。 「句には私の体温がうつっていると思い」という発想がすばらしい。いままでそんなことを言った人がいただろうか。たしかに、そうだと思う。「体温」というタイトルがとても素敵に思えてきた。 本句集の担当はPさん。 空腹の体春日のとほりけり のどとほる水の勢ひ夏に入る もうすでに裏窓はジャスミンのもの 口紅のゆるびはじむる温め酒 体温をうつさぬやうに桃を剥く 花冷やそろり触れくる犬の鼻 虫時雨一振り半で消すマッチ 「体温」と句集名をつけたように、身体意識が鋭敏な人なのかもしれない。身体を通過させて季節を感じるというか。Pさんがあげた句を見てもそう思う。ほかに、 くちびるを鶯餅にうばはるる 手のひらに残す泉のしづくかな 着ぶくれて臍なくしたる心持ち 腹くちくなりたる心地日向ぼこ 鶯の声のやうやうふとりたる 犬ふぐり手をついてから座る土手 次の足どう出さうとも春の泥 どれも面白い句である。 まず、身体ありき、なのである。身体感覚によって確かめる季節がある。 「小さな変化に気付くこと、何かの気配を感じること、じっと待つことなど、庭にたくさんのことを教えてもらいました。」と菜々花さんについて佳乃主宰が序文で書かれているように、「気配を感じ、じっと待つ」ことを菜々花さんは、自身の身体をとおして学んだのである。 香水を選びて今日のわらひかた 有楽町地下半坪の香水店 香水をまとひ八割方無敵 香水に遅れて声の届きけり 一瓶は誰にも会はぬ日の香水 香水の句がたくさんある。香水もまた身体につけるもの。香水がお好きなんだなあって、おもった。だって誰にも会わない日のための香水があるのだから。香水をつけて女は武装する。そう、「八割方無敵」とかなり強気になる。そして石戸菜々花さんには、声よりも先に香水の香がとどくのである。わたしも香水はきらいじゃないけど、夏の季節は気に入った香水(これがそうはないのだが)をつけるくらい。しかし、著者の石戸さんは、そんなハンパなことはしない。香水はわが身のゆくすえを左右するほどのもの(?!)らしく思える。人に会わない日にも香水をつける。自分のために。それにもこだわりの香水がある。こういう女性ってわたしは好きだなあ。素敵じゃありませんか。美しい心意気だ。 子供の頃から本を読むのは好きでしたが、自分から積極的にものを書くことはありませんでした。俳句と出会い、何かに真剣に向き合ってきちんとした形で表現することがどれほど難しく、どれほど面白いかを知りました。そして、私はずっと自分の思っていることを表現してみたかったのだということに気づきました。掬い上げたと思った途端に逃げていく言葉をどうにかして自分のものにできたらと日々模索しています。 「あとがき」を抜粋して紹介した。 美しい心意気のある石戸菜々花さんのために、和兎さんが選んだ色は、薔薇色。 華やかさと温もりのある薔薇の色だ。 犬ふぐり手をついてから座る土手 都会的な感覚に田園的な感覚も加わって豊かな詩情を描き出しているのである。 と山田佳乃主宰。 花衣たたみ終はつてから泣かむ いいなあ、この心意気。やはりこういう人なんだって思った。背筋をのばし首をシャンとたて矜持をもって生きている女性。美しいものへの愛おしい思い。泣くまいとがんばっている意気地、悲しい、悔しい、無念、さまざまな思いを心によぎらせながら、丁寧に花衣をたたんでいく。映画のワンシーンのようだ。ああ、わたしまでも悲しくなってきた。 石戸菜々花さんは、きっと自身の生きるスタイルをもっている人だ。わたしはこういう女性、のみならず男性、のみならず人間にぐっとくる。 わたし? もっちろん もっているわよ。 伸縮自在ないい加減さをね。 あはっ。 ![]()
by fragie777
| 2018-09-11 19:36
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