ふらんす堂編集日記 By YAMAOKA Kimiko

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君逝きし世界に。。。。

9月3日(月)  旧暦7月24日

君逝きし世界に。。。。_f0071480_19232605.jpg
新松子(しんちぢり)。
今年できた松かさのこと。
青々と瑞瑞しい。



いよいよさらに忙しくなってきた。

手と足がバラバラになってしまいそうなくらい。
気持ちもあせるが、それに動作が追いつかない。
こんな時はミスをしでかしそうだ。

わたしは深呼吸をして、丹田に力をいれる。







新刊紹介をしたい。

池田瑠那句集『金輪際』。

君逝きし世界に。。。。_f0071480_19240649.jpg
A5判ペーパーバックスタイル 72頁 5句組  第一句集シリーズとして刊行。


池田瑠那(いけだ・るな)さんは、昭和51年(1976)生まれ。平成16年(2004)に「澤」に入会し、小澤實に師事。平成19年(2007)「澤」新人賞を受賞。「澤」同人、俳人協会会員。本句集に小澤實主宰が序文を寄せている。

 みる貝伸びきるトロ箱対角線いつぱい
 梅雨晴や文字より落つるチョークの粉
 焼けるもの塩のまばゆき大暑かな
 水圧にホースの固き青葉かな

などの句をまずあげて小澤主宰は、「描写のたしかさ」「細部まで目が届いていること」「大胆な省略」「「もの」を切り出して触覚でつかむ手際の見事さ」など、池田瑠那さんの俳句の魅力に迫る。まさにその通りだ。そして、

 月に躁(さわ)ぐわが細胞や六十兆

月が出ると、わたしの細胞が騒ぎだすのだ、六十兆ものそのひとつひとつが。瑠那という名は本名で、ロシア語の月という意味の語から付けられたという。その名が入口となって、月や宇宙への関心も生まれているらしい。この句は秋の夜の空に月を見出だした際のほのめきを巧みに捉えていると思う。この句の「われ」は固定的な存在とは違う。瞬間瞬間生まれ変わり死に変わりしている「われ」だ。「月明に伸びゆく草の一種がわれ」。

本句集には「大気の底」という章題もあるように、「月」のみならず「宇宙」も「原初生命体」も「「太陽」も「土星」も「脳の暗黒物質」も登場する。池田瑠那さんは、なんだってガシガシと堅い歯で噛み砕いて一句にしてしまうのだ。観念ではなく物そのものとして詠んでいく。読者の腹に残るような俳句だ。なにしろ読みごたえのある句集である。わたしは読んでいて、眼が開かれるというより脳が開かれる(?!)、そんな思いがした。
この句集のおしまいの方に、「夫、輪禍に遭ひ、二日後に他界。二十二句」という前書きのある。まずそれに驚く。それについて小澤主宰は、書く。

「夫、輪禍に遭ひ、二日後に他界。二十二句」と前書きがある群作にも、触れなくてはならない。報告を聞いた時、結婚したばかりの幸せなふたりにこのようなことがあるのか、とどうしても信じられなかった。半身を奪われるような体験をよく生き切ったと思う。その渦中にあっても俳句を作りつづけてきたことを心底褒めてやりたい、と思う。 

 葉桜や鋲に閉ぢたる検死創

正視することができないような場面だが、しっかりと見開いて描いている。亡夫の最後の像をしかと俳句に刻みきっている。それもこの場面でもあくまでも非情に「もの」としての描写に徹しているのに、威儀を正さざるをえない。

本句集の担当はPさんである。

 東京に曠野のにほひ夕立中
 長所真面目短所真面目や椿の実
 焼けるもの塩のまばゆき大暑かな
 走るまへ腿よく叩く桜かな
 カルヴァドスかをり深きを寝酒とす
 つかふ言葉にいちやう若葉の手ざはりあれ
 木の匙にボルシチ澄むや虫のこゑ
 紅梅や恋せば髪の伸びやすき
 遺品なる手帳に未来あをあらし
 飛びつきて迎へん新霊の君を


 メール早打ちあづきバー囓りつつ

この一句って言われたらこの句かな……、とPさんはすらすらと言ってみせた。「あはは、なにそれ、面白いねえ」と思わずわたしも笑う。人間のさまがよく見えてくる。感情の甘さを取り払って眼の前のものを描写するというよりは、物として立ち上がらせようとするような言葉の構築力が池田瑠那さんだと思った。

 君逝きし世界に五月来たりけり

この句はわたしも好きな一句である。亡くなったご夫君のことを詠んだ句だが、じめじめした感傷からは解放されて、ひろやかではればれとした悲しみがあり、われわれの心も浄化してくれるようだ。しかし、なんという悲しみだろうか。世界は悲しみに浸されている。

昨春、交通事故により突如伴侶を喪いました。衝撃に打ちのめされたまま二週間ほどが過ぎたある夜、句会を行っている夢を見ました。席題を出され、振り絞るように一句書きとめたところで目が覚め─、しばらく泪が止まりませんでした。夢うつつで詠んだ句の巧拙はともかく、「俳句は私に、生きよと言っている」そう感じたできごとです。
『金輪際』は私の第一句集となります。「澤」俳句会に入会した平成十六年春から三十年夏までの約十四年間に作った俳句のうち、三百十一句を収めました。句集名は、集中の句〈花散るや金輪際のそこひまで〉によります。金輪とは仏教的宇宙観において、我々が住まう大地の奥底にある黄金の輪のこと、〈金輪際のそこひ〉とはその金輪の最下端、即ち世の果てを意味します。風にきらめき、降りしきる眼前の桜の花びらは、必ずや遥かな世の果て、人智を超越した境地へも届くことだろうという思いで詠んだ句です。

「あとがき」より紹介した。
本句集を読みすすんでいくと、わたしたたちは、池田瑠那という俳人の作家魂にぶち当たる。そして驚愕する。
胆力のある俳人と言ってもいいだろうか。
しかも充分に若い俳人だ。

 ものうしよ歌留多の裏に箔ちれる
 秋薔薇や喫茶に老妓ふたりづれ
 注ぎくれてギネス麦酒や泡みつしり
 金魚すくひのプールに金魚足しにけり
 雪原のざらめびかりや日当れば
 宇宙膨張中われ桜餅嚥下中
 存外剛し白木蓮の蕾の毛
 月に躁(さわ)ぐわが細胞や六十兆
 宇宙ゆく砂塵が我ぞ去年今年
 桜蘂降るからつぽのプールの底
 回転寿司レーン皿渋滞をなほす男
 深鍋に煮ゆるボルシチ愛はあるか
 ハモニカの唇につめたきさくらかな
 可燃ごみ袋に透けて盆のもの
 我よりの賀状も君が遺品なる
 
 

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和兎さんが選んだ色は、落ち着いた思索的な緑である。


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5句組である。


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  花散るや金輪際のそこひまで

この「金輪際」の語をなぜ作者が集名に選んだか。それは散る花によって亡夫の魂を鎮めようという思いと作者が夫の死後も強く生き抜こうという意志からではなかったかと思っている。

序文の小澤實主宰の言葉だ。


 遺品なる手帳に未来あをあらし

好きな一句である。Pさんも好きな句にあげていた句である。
ご夫君の遺品の手帳を開いてそこに書かれた果たされなかった予定などを見ている。すべてその時点では未来のことだった。
なんということか。
この句の素晴らしさは、著者の心情がすべて「あをあらし」で語られていることだ。それ以上に何も言っていない。
しかし、「あをあらし」以上に作者の気持ちを語るものがあるだろうか。。

池田瑠那さんの句を読みながらふっと思ったのであるが、池田さんのような俳人によって、俳句は1ミリずつ新しくされていくのかもしれない、と。
読みごたえのある一冊である。










今日は午後にお二人のお客さまがおみえになった。

御子柴明子さんと江口井子さん。

おふたりとも、「知音」に所属しておられる俳人である。
江口井子さんは、ふらんす堂から第2句集『こゑに』を刊行されている。

今日は御子柴明子(みこしば・あきこ)さんが第一句集を刊行されるにあたってご相談に見えられたのだった。

御子柴明子さんは、小児科の精神科のお医者さまである。
常日頃から子どもとの触れ合いが多い。

句集名は、「子らのゐて」。

まことに小児科のお医者さまらしいタイトルである。

しかし、伺ったところによると、ご長男を病気で亡くしておられる。
ご長男はまだ30才のお医者さまだった。
それから20年近い歳月が流れた。
句集を上梓する思いは昔からあったが、やっと今回その思いを決められたのだった。

タイトルの「子らのゐて」は、そのご長男への思いも含んだタイトルである。


君逝きし世界に。。。。_f0071480_19244707.jpg
江口井子さん(左)と御子柴明子さん。


江口さんは学校の教師をしておられたのだが、「不登校の子どものことなどで、ずいぶん御子柴さんにはお世話になりました」と、笑っておっしゃったのだった。




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by fragie777 | 2018-09-03 21:24 | Comments(2)
Commented by ikeda luna at 2018-09-05 00:05
池田瑠那です。作品を深く読み込んでいただき、また身に余る紹介文をいただきましたこと、心より御礼申し上げます。
山岡様、担当P様、また校正、装丁等、様々な工程で関わってくださった皆様、この度は本当にお世話になりました。
表紙の緑、何色といえばよいのか、神秘的な緑色ですね。静けさの中に力強さを感じる色味……。
台風接近の折、どうぞお気をつけて。
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Commented by fragie777 at 2018-09-05 19:10
池田瑠那さま

ご丁寧に有り難うございます。
言葉足らずなもので、恐縮です。
お目にとまって嬉しかったです。
衝撃をうけた御句集でした。
この度のご縁をとても有難く思っております。

(yamaoka)
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