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8月24日(金) 棉柎開(わたのはなしべひらく) 旧暦7月14日
谷保天神の裏の梅林のベンチ。 すでに濃い秋の日差しだった。 昨夜は寝につくころかなりはげしく風が吹いており、これはちょっと寝つかれないぞ、と思いながらベッドに横になったら、あらら、いつの間にか寝入ってしまっていた。 これまでわたしは夜型で朝はなかなか起きられなかった。 そこに来て、通常は寝付きがわるいのだ。 ときには睡眠導入剤を使用することもある。 珈琲を午後に飲むともうぜったい眠れない。 先日、太極拳の友人のYさんにそのことを相談してみた。 Yさんは中国医学を学んでおり、漢方に詳しい。 中国語の先生でもある。 わたしの話をいろいろと聞きながら、 「ああ、あなたには加味逍遥散が効くかもしれないわ。身体をあたためるいい漢方薬よ。わたしも服用してるけど」 と言って加味逍遥散を教えてくれたのである。 さっそく薬局でそれを求め服用しはじめた。 すると、なんということだろう。 よく眠れるのである。 あらためて漢方薬の威力を思った次第である。 ただ、ここで注意。 漢方薬というのは人間の体質をえらぶので、人の情報ですぐに飛びつかない方がよろしいということ。 わたしの場合は、Yさんとの長いお付き合いのなかで、私という人間の体質や正確をある程度知った上でのアドバイスだった。 有難い友人である。 (彼女にはいろんな局面で助けられている) 夕べのすさまじい嵐にも打ち勝ってよく眠れたyamaokaであった。 新刊紹介をしたい。 46判ソフトカバー装。190頁。 俳人四ッ谷龍さんのエッセイと評論からなる著書である。 タイトルに「田中裕明の思い出」とあるように、収録されているものはすべて俳人田中裕明について書かれたものである。三部構成となっており、Ⅰは田中裕明との交流を綴ったもの。Ⅱは講演をまとめたもの。Ⅲは、作品をとおしての田中裕明論である。著者によって、非常にすっきりとしかもよく考えられて編集されており、頁を開いたとたんすーとわたしたちは読みすすんでいってしまう。 Ⅰには田中裕明と著者との関係が書かれているのだが、そこに語られている田中裕明という人間の魅力もさることながら、なによりも田中裕明を見る著者の澄みきった眼差しにわたしたちは心打たれてしまうのだ。そこにはなんのはからいもなく、田中裕明に向き合う著者の一途さがあり、ともに創作をするものとしての真摯なやりとりがある。そういうきれいな空気を吸いながらわたしたちはこの一冊を読みすすむことになる。 裕明を前にすると、何だか美しい花を見ているような感じがして、彼を眺めているだけでうっとりした気分になれた。どこがそんなにすばらしかったのか、うまく表現できないのだが、彼が物を見る視点はいつも高かった。他人から受けた評価で一喜一憂するような人間ではなかった。彼の話を聞いたり俳句を読んだりすると、自分がいかにふだんつまらないことに拘泥し、どうでもよいことを重んじていたかがよくわかるのだった。彼とともに時間を過ごすと、急にひろびろとした場所に出たようななつかしさを感じたものであった。 そう、このことからすべてが始まっている。 Ⅱは、田中裕明さんが「角川俳句賞」を受賞したときの挨拶文「夜の形式」について、考察したもの。挨拶の言葉としては、謎を含んでいるこの一文を、オーストリアの哲学者フッサールの現象学をもとに読み解いていくという意欲的なものである。2010年3月8日に「『夜の形式』とは何か」と題して現代俳句協会青年部とふらんす堂の共催でおこなわれた講演をまとめたもの。この講演にはたくさんの人が来てくださった。 そのときのレポートはここより読むことができます。→「『夜の形式』とは何か」 Ⅲの田中裕明論については、長い時間をかけて著者が田中裕明について書き続けてきたものを収録、「取り合わせ」や「音韻」などさまざまな視点から裕明俳句に迫ろうというものである。 本書は芸術というものに深く思いを凝らした著者でなくては書けないものであり、田中裕明という俳人の広やかな世界にわたしたちを導いてくれるそんな一冊であると思う。 文体は優しく洗練されており、読み手のこころに届くように書かれている。 多くの人に読まれる一冊となるだろう。 本書は、田中裕明についてこの三十年間に書いてきた文章をまとめたものです。「思い出」というタイトルになっていますが、思い出話だけを書いているわけではなく、彼の作品を通じて創作の本質について考えようとしたものです。 「あとがき」の一節である。 読み終えておもったこと。 それは、本書は田中裕明の作品を語りながら、人間は表現行為によっていかに未知の領域に近づき得るか、ということなのではないか、ということだ。 そして、それはあらゆる芸術に関することでもある。 本書の装丁は和兎さん。 ウイリアム・モリスである。 カバーをとった表紙にも。 扉にも。 天アンカットで栞紐をつけて。 エレガントな一冊。 このエレガントさは、田中裕明、四ッ谷龍、お二人に共通しているものだ。 なんども書いてしまっているが、本書なかでⅠの「ヤネセン歩き」のところがとりわけ好きである。 先日わたしも彼等が歩いた鴎外記念館に行ってみた。 田中さんが歩いたのは、亡くなる年の7月である。暑い日であったようだ。 でもきっと楽しかったんだろうなあ。 田中さんよりいただいた大判の絵はがき。 「今日は四ッ谷龍さんに谷中、根津を案内していただきました。七月十七日」。 画「おきな草の星」三橋節子 節子は宮澤賢治が好きだった。童話”おきな草の星”を読みその印象を描いた。静かな真夜中、澄んだ星空に向かっておきな草の種は飛翔していく。 と解説が付されている。
by fragie777
| 2018-08-24 20:32
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Comments(3)
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