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7月4日(水) 旧暦5月21日
新刊紹介をしたい。 A5判ペーパーバックスタイル。 72ページ。4句組。第1句集シリーズ 第1句集シリーズがはじまった。始めて句集を刊行する人のための低コストでできる句集を、という多くの方の要望に応えたものである。基本的には結社推薦でお願いしているもの。 本句集『赤い靴』は、第1番目の刊行となった。 著者の新家月子(しんや・つきこ)さんは、昭和46年(1971)年千葉生まれ、俳誌「円虹」所属。平成16年から29年までの14年間の作品を収録している。序文を山田佳乃主宰が寄せている。 月子さんは、平成十六年に初心者の鍛錬会として発足した「アカシア句会」に参加したメンバーの一人である。 当時彼女は、三十代前半で一際目を引く美貌の女性であった。しかし、どちらかと言えば中性的で、少年のようなと言ったら失礼だが、そんな印象の活発な女性である。 経歴もユニークで、大学卒業後に製薬会社に勤め、その後は厚生労働省(当時は厚生省)医薬食品局の当時では珍しい女性の行政技官であったそうだ。 いつだつてまひまひであるこれからも しあはせになりたいなりたい蟻地獄 海亀の涙に命生まれけり 風光る絵筆は丸く水含む 母の日のレコードの針だけが無い これらの句を読んでいると、熱いようでいて冷徹にものを見据えているような月子さんの視点が生きているように思うのである。 独特な個性を大切にしながら、今後もしっかりと地に足をつけて歩んでいって欲しい。この度の第一句集のご上梓を心よりお喜び申しあげる。 句をいくつか抜粋し、山田佳乃主宰の序文を紹介した。 「いつだつて」や「しあはせになりたい」は初期の作品であるが、ずいぶん思い切った表現だ。季語の向こうに作者のせつないまでの感情があふれていて、読み手に押し寄せてきそうだ。 新家月子さんの「あとがき」もまた率直で読み手の心にまっすぐにやってくる。 「月子」という俳号は、『円虹』の前主宰・故・山田弘子先生から頂きました。俳句のなんたるかを知らぬまま、誘われるまま参加した小さな句会での出会いでした。これが俳句への、初めの一歩です。 仕事柄、感情を排する文体を叩きこまれた私は、答えが一つではない俳句の微妙なニュアンスに困惑し通しでした。不慣れな文語も加わり、悪戦苦闘する私を、手取り足取り導いてくれたのは、新しくできた句友という存在でした。頭の固い私に、花の名前を、風の違いを、潮の差等を繰り返し教えてくれました。お陰で、荒れていても凪いでいても「海は海でしかない」、と思っていた私の世界は開かれて行ったのです。性別も、年齢も、経歴をも飛び越えたこの句友という存在は、得難いものでした。 そうして毎月七句ずつをコツコツと詠むところから始めて一四年が経ちました。その間には、母の死や愛犬ハービィの死、そして愛犬ネロの死……と様々な出来事が待っていました。「辛い時には辛い句を詠めばいい。とにかく、作り続けなさい」という弘子先生の言葉を胸に、どんな時でも途切れることなく詠んできました。そして、この度、句集を編むにあたり、振り返れば四五〇〇句を越える句が生まれていました。どれも私自身です。 「海は海でしかない」って思っていた著者が師やお仲間のあたたかな指導によって、すこしづつ俳句に開眼していく様子がとてもよく分かる。すごく素直な気持ちで師や句友の言葉を吸収していく著者が目にみえるようだ。 本句集を担当したPさんの好きな句を紹介したい。 十六夜の首に重たきアメジスト 春の風邪極楽鳥の眠る夢 夏草を踏んで渚の音を聴く 不器用な弾丸となる金亀子 焼藷や素顔のままに話すこと 実朝忌言葉を惜しむ男達 暖かやものは匂ひを取り戻し 初夏と書けば眩しい一頁 風香る青に黄色を足すやうに 実朝忌言葉を惜しむ男達 今回はわたしの好きな句と一句も重ならなかったけど、この一句、面白いと思った。 源実朝といえば、若くして暗殺された悲劇の武将であるが、優秀な歌人としてもその名が知られている。実朝の目にはよくものが見えていたのかもしれないが、置かれた政治状況によってやむなく口を閉ざすことも多く己の暗殺も覚悟していたのではないかとども言われ、複雑な人間像も浮かんでくる。男性ゆえに逃れることのできなかった宿命をせおった実朝という人物像を思うとき、おもわず口を閉ざしてしまうのはやはり女子ではなく男子か。。と長々と書いてしまったが、この一句から実朝の哀切さのようなものが伝わってくる。 新しき友のやうなるコートかな これはわたしの好きな句。こういう感覚はよくわかる。わたしの傍らにあって必要なときは暖かく身をつつんでくれて、わたしの秘かな嘆きも知っている。わたしを守ってくれるそんな特別なコート。すべてのコートがそうじゃないけど、どこか頼りになって寒さを防ぐだけでなく、もっと親密な関係を築けるコート。わかるわあ。。。しかし、こういうコートおいそれと見つけられない。一枚でも持っていたら幸せ度がアップするかもね。。。 ほかに、 凍蝶のなにも映さぬ目の黒さ 桜散る無声映画のごとき夜 弁当のウィンナー赤し夏の海 案山子にも取り戻したき言葉あり 綿菓子のやうな犬来る街薄暑 鉄打てば鉄の静けさ夏の蝶 竜胆に溜まる涙のやうなもの 俳句からもっとも遠くにいた私に、根気よく「俳句は楽しい」と教え続け、この度も温かい序文をくださった佳乃主宰には、大変感謝しています。これからも佳乃主宰の「平明な俳句」の教えを踏襲しつつ、学んでいきたいと思います。 また何よりも、多くの「句友」という仲間が、私の宝物です。これからも人との出会いを大切に、自分の世界を広げたいと思っています。 そして今、「月子」が私の体の半分を占めています。 ふたたび「あとがき」を紹介した。 本句集の装丁は和兎さん。 第1句集シリーズはすべて装丁は同じである。 色のみが異なる。 ![]() 帯をとったところ。 扉。 3句から5句組まであるが、新家さんは4句組。 72ページの薄さではあるが、A5判でやや大きめである。 第1句集という爽やかな軽快さにみちたシリーズになりそうである。 多彩な顔ぶれになって欲しいと願う。 先ほど新家さんからメールをいただいたのだが、「句集を出してみると、出す前より出したあとの方が大変であるとわかりました。皆さんがいろいろとお返事をくださって驚いています。装丁も評判がいいです」ということ。 良かった!! 目の端に涙乾びし蜥蜴かな この一句すごく好き。著者は蜥蜴の目の端に涙の乾いた跡をみた。きっと泣いていたんだ。しかし、すでに涙が乾いている、しかし、涙が「乾きし」でなく「乾びし」と言ったことによって蜥蜴のあわれがまさった。そのあわれはまた、作者の生きる哀しみにもどこかで繋がっている。 このところ、いろいろと寝不足がつづいている。 理由は聞いてはいけない。 今日こそは寝るんだ。 ぜったいに。。。 じゃ、ちょっと早いけど おやすみなさいませ。 ![]()
by fragie777
| 2018-07-04 20:03
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