ふらんす堂編集日記 By YAMAOKA Kimiko

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第52回 蛇笏賞 迢空賞 授賞式

6月30日(金)  旧暦5月17日


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螢袋。


東京は梅雨が明けたらしい。

早い梅雨明けが水不足を招かなければいいのだが。。。




新刊紹介をしたい。

伊藤一彦短歌日記『光の庭』


第52回 蛇笏賞 迢空賞 授賞式_f0071480_13235453.jpg

46判変型ハードカバー装 386ページ

ふらんす堂のホームページの連載サイト「短歌日記」で2017年に連載をしていただいたものを一冊にまとめて刊行。
著者の伊藤一彦氏は、九州・宮崎県宮崎市在住の歌人、昭和18年(2006)宮崎市生まれ、早稲田短歌会を経て、「心の花」に入会し、現在選者。郷土の歌人若山牧水の研究者でもあり、若山牧水記念文学館長、「牧水研究会」会長を務めておられる。本著にも、若山牧水のことがときどき詠まれている。本著は、宮崎より発信されたわたしたちに発信された日記となった。拝読すれば、いかに郷土を愛し、誇りに思っておられるかが分かる。

一月五日㈭
  うぶすなに潤ひ暮らすと人言へどはみだしてゐる別のわれをる
学生時代を除いてはずっと宮崎県で暮らしている。
「ときをりにドッペルゲンゲル現はるる 今日朝日射す川面の上に」(『待ち時間』)。

一月二十日㈮
  年齢も知らず人の妻なるも知らず小枝子抱きし牧水の海
牧水が園田小枝子と房総半島の南端の根本海岸で結ばれたのは明治四十一年一月。昨年九月初めに私は根本海岸を訪ねて「一一〇年前はむかしか否か思ふ海のかなたの行き合ひの空」と歌った。

伊藤氏の宮崎市にあるお宅は、ずいぶんお庭が広い様子である。
この庭に生え出たものを食されたり、鑑賞されたりして、豊かな四季を堪能されているご様子が本著にはよく出てくる。

三月七日㈫
  天ぷらにするか蕗味噌か 庭に出でしこの祖父(ぢい)今宵とまれ酒の友
庭の隅に蕗の薹が出てきた。毎年、たのしみである。「ふきのじい」とか「ふきのしゅうとめ」とかいう言葉があるのもおもしろい。「蕗の薹見つけし今日はこれでよし」(細見綾子『存問』)は好きな句だ。

四月十五日㈯
  天よりの光を容れてみじろがず新さ らなる白の山芍薬の花
庭の山芍薬が今年はいくつも花を咲かせている。山で初めて見たときの感動は今も忘れないが、庭で気品のあるこの花を眺めることのできるのはうれしい。今日は午後の飛行機で名古屋空港に。そのあと中津川まで行く。


ふらんす堂から、この短歌日記の依頼をいただいたとき、一週間ほど返事を待ってもらった。一年にわたって毎日休まず短歌を詠むことができるか不安だったからである。そして、結局引き受けたのは今の年齢の体力ならば何とか可能で、もっと先では無理だろうという判断からだった。そして、承諾の返事をして、連載を始めることにした。
いざ始めてみると、楽しくもあった。ただ、この「短歌日記」は遅くとも前日までに原稿を編集部に原則としてメールで届けることになっており、その点は苦労した。当日に見聞したことを短歌に詠むのではなく、計画や予定で前もって短歌を詠み、文章を書かざるを得なかったからである。工夫を強いられた。しかし、ともあれ連載の機会をいただいたことを今は大いに感謝している。


1年間やすむことなく日々の連載をやっていただくというのは、やはり覚悟のいることだと思う。しかし、連載をお願いした多くの歌人や俳人の方が楽しかったとおっしゃってくださる。それが嬉しい。
ふらんす堂の担当スタッフもじつは大変である。
多くの人がアクセスしてこの日記を読んでくださっているが、パソコンに不慣れな方もいらっしゃる。画面がみえないと、こちらの原因であると判断されお電話をいただくことがあるが、大方はそれぞれの方のパソコンに原因があったりする。その原因を説明して分かってもらえたり分かってもらえなかったり。しかし、スタッフもそそっかしいので、アップし忘れたり、日付を間違えたりして、お叱りをいただくことも。まあ、1年間いろいろあります。その1年間のものがこうして一冊になると著者の方だけでなく、わたしたちも大変感慨深いものがあるのだ。
もうすこし、日記を紹介したい。

五月十四日㈰
  笑顔よきほとけの母の母の日に母よりもらふ一献の酒
母の日。去年二月に百一歳で私の母は世を去った。死の当日の夕方まで元気だった。母の日はいつも私と妻と三人で、大淀川を見おろすホテルのレストランで食事をした。食欲も旺盛だった。ホテルの人が「本当に百歳ですか」と年齢を聞いて驚くほどに。「桜じま大噴火せし年に生(あ)れ百年生きぬ寅年の母」(『土と人と星』)。

八月十五日㈫
  わが父は「のさん」などとは生涯に一度も言わぬ肥後モッコスなりき
熊本県宇土出身の父は薬屋を開くために宮崎に移り住んだ。そして、念願通り宮崎市橘通りで店をもった。働き者の父だった。これといった趣味は特にもたなかった。元日以外は店を開けて年中休みなしで、いつも微笑をたやすことなく働いていた。田舎の薬屋で終わるつもりもないように見えたが、本当の願いは何だったのだろうか。(「のさん」は辛いの意。)

十二月十九日㈫
  五十年かよへる「夜のガラパゴス」今日もさまよふわれは象ガメ
宮崎市の大通りの西側に歓楽街がある。通称ニシタチである。県外からお客があると夜はそのニシタチに繰り出すことになる。「宮崎はにぎやかですね」と言われる。狭いところに飲み屋が集中してあるので確かににぎやかに見える。東京のその方面の専門家に言わせると、昔ながらの雑居ビルが並び、地元の飲食店や小さなスナックが頑張っている様子は、都会にない「夜のガラパゴス」だそうだ。


「あとがき」でこう記されている「光の庭」

『遠音よし遠見よし』に続く第十五歌集になる本書のタイトルを、『光の庭』とした。昨年よくあちこちに出かけその旅の短歌も含んでいるが、日ごろは宮崎市の自宅で過しており、本書にも庭の植物たちがしばしば登場している。著者である私が余計なことを言えば、私の住む宮崎県自体が光の庭である。


装丁の和兎さんはそれに応えるべく、美しく輝く一冊とした。




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濃い緑地にレインボー箔をふんだんに用いた。


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表紙。

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扉。

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花布は、緑と白。
栞紐は白。


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歌人の高野公彦氏より「螺鈿のようですね」とお言葉をいただいた。


6月19日の日記より、

  夏つばき一日を終へ地の上にわれに伝言あるごと白し
玄関近くに植えてある夏椿がこのところ毎日いくつも花を咲かせる。夏椿は別名シャラノキである。白色の五弁花は清らかで美しい。一日花なので夕方には庭土の上に、あるいは通り径に落ちてそのまま開いている。

大好きな夏椿の一首である。
この一首にささぐべく。。。


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夏椿(沙羅の花)








夕方より飯田橋のホテルメトロポリタンエドモンドにて「迢空賞 蛇笏賞」の授賞式があった。
今戻ったところである。
アイスクリームを京王ストアで買って、それを食べてブログを書き始めた。
夕食は会場でローストビーフをいただいただけでほとんど食べていない。
まずはブログを書いてしまいたい。



第52回蛇笏賞は、

有馬朗人句集『黙示』(角川文化振興財団)
友岡子郷句集『海の音』(朔出版)

第52回迢空賞は、

三枝浩樹歌集『時禱集』(角川文化振興財団)


の3名の方が受賞された。


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ご挨拶する有馬朗人氏。

中学・高校の時代に高濱虚子先生、富安風生先生にしこまれたことを大変良かったことだとおもってます。そしてまた大学にはいるやいなや山口青邨門下に入りまして徹底的にしごかれたということが、今日まで俳句をつくってこられた原因であると思い、その3人の先生方にこころより御礼を申し上げたいと思います。また今日まで俳句をつくってこられたのは「夏草」の仲間たちがいたこと、そのことにも御礼を申しあげたい。俳句の交流でスエーデンに行ってきたのですが、スエーデンでも俳句が流行ってます。俳句が国際的に拡がってきたということをこころか喜びたいと思います。
これまでわたしは外国のメディアなどからもいろいろな賞を貰いましたけれど、私はどうしても生涯に欲しかった賞が二つある。一つはこの蛇笏賞、それはなんとかいただけて嬉しいです。もう一つは候補になっているがまだいただいていない。もう少し頑張って待ちたいと思います。(会場笑い)




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ご挨拶する友岡子郷氏。

賞をいただいけるとは思ってもおりませんでした。中国の詩人陶淵明が書いた「帰去来の辞」というのがありますが、そのなかに、こころも身体も平穏で安らかであることこそ自分の帰っていく道だ、という意味の詩がありますが、そういう気持ちで俳句をつくって今度の『海の音』という句集を出しました。ところがそれを賞に選んでくださった選考委員の方々はもちろんのこと、たくさんの方々から親身な励ましの言葉をいただきました。
飯田蛇笏、龍太先生のすぐれた足跡を胸によみがえらせて今後とも俳句に励みたいと思っております。




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ご挨拶する三枝浩樹氏。

俳句もそうだと思いますが、「短歌」は受けたものを返す詩型であると思っております。古典から現代にいたるまでさまざまなものを読んでそれを自分のなかに取り入れてそれをワインのように寝かしてやがて言葉として表現できるようになる、そういう詩型なのではないかとだんだん思うようになりました。その中でとくに深く影響をうけた歌人がいますけど、今日は釈迢空のその歌についてわたしなりに語ってみたい、それをお礼のことばに代えたいと思います。
迢空には有名な歌がいくつかありますけれども、迢空の有名な歌っていうのは何度読んでも自分のなかで読みきれない、わからない謎のようなところがありまして、あるいは謎のようなところがあるからむしろ長い間自分のなかでその歌を何度も何度も読み返し思い返し、そのような付き合い方をしてきたなあと思います。有名な歌のなかのひとつで、〈「基督の真はだかにして血の肌(ハダヘ) 見つゝわらへり。雪の中より〉この歌は基督の十字架上の苦しみを思い、そしてそのあと「 見つゝわらへり。雪の中より」とある。この見つつ笑えりは誰なのか、悪魔なのか人なのか、そしてそのあとに「雪の中より」と雪が来る。この「雪の中より」は「見つつわらへり」にかかるのですが、どうもこの歌を何度も味わっていますと、「雪の中より」はむしろ「基督の真はだかにして血の肌」というキリストの苦しみ、死のうとしている苦しみの熱気のなかにいるキリストにそれがかかっている、その苦しみその悲劇に参入していくような働きをしているなあと、その作者はキリストに寄り添うようなところにいて、それを笑っているサタン、あるいは人の罪深さからはちょっと距離をおいたところにいるのかと、そんな風に思え、あるいはひょっとしたら苦しむキリストを寄り添いながら一方でそれをあざ笑う生身の自分の心が、ある。つまり一つのこころではなくて二つの心というものを迢空はその歌で詠もうとしたのではないか。つまり、アンビバレントのこころのありようというものを聖なるものと悪なるもの、この一首のなかには世界がすっぽりおさまるようなそんな深い広い世界が詠み込まれていると思う。そのような歌をつくった迢空。これからわたしが歌を詠んでいくときにいつかはそういう歌に近づいていきたいと思います。もう一首、迢空の歌を
〈人間を 深く愛する 神ありて もしもの言はば 我のごとけむ〉
こういう歌の魅力っていうのはなかなか一読してもわたしの読みは届かないんですけれども非常にそれゆえに気になる、こういう迢空のような歌をこれから詠んでいきたいとひそかに思っております。



それぞれ受賞者の挨拶を抜粋して紹介したが、わたしは歌人の三枝浩樹さんの迢空の歌に対する思いをとても興味ふかくうかがったのだった。


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選考委員の方々と記念撮影。


有馬朗人さま、友岡子郷さま、三枝浩樹さま、おめとうございました。
こころよりお祝いを申しあげます。







授賞式のときにお隣にいらした俳人の西山睦さんより、「あなた寝る時間あるの?」と言われてしまった。
「ええ、寝てます。とても朝寝坊なんですよ、私。(それに〇〇〇です)」とお答えしたのだが、このカッコ内は声にださなかったので西山さんには聞こえなかったと思う。

なんて言ったかって。

そっと教えますけど、ここだけの話よ。。。

(それに仕事中に寝ています)

あちゃあ!


こんなことが知られてしまったら、もう仕事が来なくなっちゃうでしょ。

だから、ここだけの話。

くれぐれも。。。。




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by fragie777 | 2018-06-29 22:56 | Comments(0)


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