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12月20日(水) 旧暦11月3日
裸木となりつつある椋大樹。 「ひと月前にはたくさんの椋の実が落ちてたのよ」ってここを通るとき友人は言っていた。 イタリアの帽子の名店「ボルサリーノ」が破産申請をした。 「ボルサリーノ」と言えば、中折帽の代名詞のごとく有名であるが、「ボルサリーノ」なんていう名前からしてカッコいいあこがれの帽子名店である。 残念だ。 創業150年の伝統をもってしても破産は免れなかったのだろうかと、 すこしインターネットで調べたところいやはやなかなかずさんな経営状態でもあったらしい。 伝統の帽子作りを守ってきた職人さんたちが気の毒である。 「中折帽」といえば、男性用のものというイメージだが、これを女性が粋にかぶってみせるのもいい。 わたしは冬用と夏用とこの中折れ帽を二つずつ持っていて、結構愛用している。 どれも帽子屋さんであつらえたものであり、こだわりをもってつくって貰ったもの。 女性がかぶる場合、顔の顎の線が美しい人でなければならないのだが、わたしの顔はその正反対。 しかし、そんな事は天下御免とヘイチャラにかぶっている。 やや目深に、世の中を睥睨するようにいささかの高慢さをかもしだしてかぶるのだ。 (フン、なんか文句ある?)っていう具合に。 しかし、これも考えてみれば、自意識がなせる笑っちゃうような一人問答なのだ。 誰もyamaokaのことなんて、気にしていないのにね。。。 さて、新刊紹介をしたい。 四六判ハードカバー装 202頁 著者の山本吉人(やまもと・きちじん)さんは、昭和24年(1949)山梨県南アルプス市生まれ、東京・日野市在住。平成7年(1995)に「狩」に入会し俳句をはじめ、平成20年(2008)「狩」同人。俳人協会会員である。本句集は、俳句をはじめてから平成28年(2016)までの作品を収めた第一句集である。序句、帯文、鑑賞二句を鷹羽狩行主宰が、跋文を「狩」同人の鈴木伊都子氏が寄せておられる。 初日の出うなががすやうに鳶の笛 狩行 寄辺なきものは流され花筏 落花が筏状になって流れてゆくが、縁なきものは容赦なく流されてゆくという運命。 食足りて白鳥と鴨睦みあふ 生存競争のはげしい動物界では、餌をめぐってしばしば争うことがある。しかし白鳥の飛来する所などでは、餌を与えられているので、そのおこぼれを鴨が頂戴することも……。 ふだんは相容れぬ白鳥と鴨も食足りて仲よく過ごす。 帯文と「鑑賞二句」よりそれぞれ一句ずつ紹介した。 句集名の「鳶の空」は、第一句目におかれた、 葡萄棚鳶(とんび)の空は暮るる紺 より。この句について「あとがき」で山本吉人さんは、句集名の「鳶(とんび)の空」は、「電電東京」という会社の機関誌で特選となり、俳句の道への第一歩となった記念の一句からとりました。と書かれている。「暮るる紺」と下五にあるように山本吉人さんは、この「紺の色」にこだわった。こちらが用意した紺になかなか納得してもらえず何度かのやり取りのあとに了解をいただいたといういきさつもある。 跋文を書かれた鈴木伊都子さんは、著者と20年にわたって句座をともにしてこられただけあって、作品を鑑賞する目はこまやかである。企業戦士としての山本吉人さんも見てこられた。 蟇動きて土間の闇動く 江戸の空よみがへらせて梯子乗 鵜に声をかけて鵜匠の舟を出す デモ隊の列伸びきつて薄暑かな かいつぶり水輪残して戻らざる 剪定や口笛高きより聞え 吉人さんはゆっくりとしかし着実に実力を蓄えて来られた。これまでの豊富な経験を活かして更なる珠玉を生み続けて下さるに違いない。 吉人さん、ご上梓本当にお目出度う。 心からのエールを送っておられる。 さて、担当はPさん。Pさんの好きな句は、 萩の花見てきし傘の雨払ふ 白息の駆け込んで来る電車かな 釣り上げし河豚の怒りを放りおく 調律のピアノ一音づつの冷え 赤とんぼ群離るるは高く飛び 滝となることまだ知らぬ流れかな 足音に跳んでばつたの草となる 鯛焼を抱へて妻の誕生日 萩の花見てきし傘の雨払ふ 萩の花でなくてもこの場合よいように思えるのだが、やはり「萩の花」であるからこそ、雨しづくの透明感やこまやかさ、が際だってくる。音読するときびきびとした空気の感触も伝わってきて、傘を払っているその時も萩の可憐な美しさが眼裏に残っているよう。綺麗な一句でわたしも好き。 会社を辞めたら、一区切りつける意味で句集を出そうと決めていましたが、再就職の幸運に恵まれ会社勤めが続きました。今春に三回目の退職を迎え、サラリーマン生活に終止符を打ちましたので、予定通り刊行することにしました。 勤務していた電話局で面白半分に始めた俳句が、今まで続くとは想像もしませんでしたが、これも、途中で休んだり、適当に手を抜いたりで、「熱くもならず止めもせず」という中途半端な性格のなせる業かなと思っています。 本句集には、「狩」入会の平成七年から平成二十九年五月までの「狩」所載句からの抜粋に、「狩」入会前の思い出深い句を若干加え、三百二十六句を収めました。期間的に新人サラリーマン時代から定年までの半生の日記のような内容となりました。 「あとがき」を抜粋して紹介した。企業人として激務をこなしながらも、俳句をやめずに来られたことが、この度の第一句集の上梓となられた。ご本人の「熱くもならず止めもせず」という言葉はなかなか重たい言葉である。 本句集の装釘は君嶋真理子さん。 著者の希望されるブルーをいかに装釘に反映させるかに腐心してもらった。 タイトルは黒メタル箔。 表紙はもちろん紺。 この紺にもこだわりがおありだった。 花布、栞紐も青で。 暮れてゆく空が表現されているだろうか。 見る者をはるかな思いへとさそう、そんな表紙となったのではないだろうか。 水替へて金魚大きくなりにけり シンプルな一句であるが、よくわかる一句だ。 水を替えただけのこと、金魚は大きくなるはずはないのだが、なぜか大きくみえる。 うん? やっぱり大きくなっている。。。 家を出るときに、あたり一面が落葉、落葉であることに気づいた。 これみんなわが家の樹から落ちたもの。 お隣の家まで吹き寄せている。 (ああ、申し訳ない……) と思いながらも、 わたしはぶるるっと頭をひとふりして車に乗り込み、 (今は見なかったことにしよう) とアクセルを踏んだのだった。
by fragie777
| 2017-12-20 19:21
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