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10月6日(金) 立待月 旧暦8月17日
白粉花(おしろいばな)。 黒い実をつぶすと白い粉がこぼれ、それがまるでおしろいのよう。 小さいころ実をつぶしてはよく遊んだ。 おしろいが咲いて子供が育つ路地 菖蒲あや そう、まさにこんな感じ。 今日も新刊紹介をしたい。 四六判変型上製薄表紙カバー装 174頁 著者の市川薹子(いちかわ・とうこ)さんは、1945年高知県須崎市生まれ、現在は兵庫県明石市在住。1985年「青」に入会し波多野爽波の指導を受ける。2007年第1句集『おほきな息』を刊行、2009年「椋」入会、2012年第4回「椋」年間賞を受賞現在「椋」会員。本句集は第2句集となり、石田郷子代表が栞を寄せている。 『たう』の扉を開くとすぐに、淡い色彩で丹念に描かれた画集を見ているような気持ちになる。(略) 『たう』を読んでいると、知らず知らずに作者の「気づき」に息を合わせている。ことごとく作者の日常の中にある気づき、感動である。 みづうみの水減つてゐる野菊かな 桑の実や水に大きな音が棲み 月今宵最前列に泣きにけり 仏壇の小さな扉雪間草 風よりも水にふるへる稲の花 搗きあがる餅を通してやりにけり 虫売の横にさつきの子が屈む ふりかへる屏風に翼ありにけり 『たう』の世界に身を置き、私たち読者は作者の気づきを次々に追体験してゆく。作者の見た風景、雨や風やそれらのたてる音。大気に混じる草の香。ふと迷い込んだ見知らぬ小径。一度も来たことがないのに懐かしい部屋。 俳句という詩型が、一見なんの起伏もない私たちの日常の中に、実は限りなく感動や不思議があるのだということに気づかせてくれる。 『たう』は、そのことを教えてくれる句集だと思う。 「気づかせてくれる」と題した石田郷子代表の栞文である。 しかも、とみに繊細なまなざしをした著者である。誰もが気づいているわけではないものをそっとわたしたちの目の前にみせてくれるような著者の「やさしい仕草」を感じさせる一句一句だ。しかし、俳句そのものは強靱なしなやかさと余情がある。定型の力を熟知している俳人であると思う。 本句集の担当は文己さん。好きな句をたっぷり挙げてくれた。抜粋して紹介したい。 芋虫の喰ひ尽したる闇夜かな 手につつむ一瞬椿つめたかり種池やまばたきほどの波生まれ 足の裏見せてゐる子やお白酒 てのひらに影をのせたる冬桜 浴衣着て女の勘をとりもどす 穀象に父の鼻筋ありにけり 息深くあれば綿虫飛ぶ日かな 中華街冬の金魚が口をあけ ふれたかも知れぬ指先冴返る 人を呼ぶ手の中にあり蕗の薹 松虫とカーブミラーと一つ闇 遅刻の子薄氷割つて行きにけり 笹百合にそのこゑ大きすぎたるよ あぢさゐのゆれて人魚のやうな人 踊場に息足してゐる天の川 手につつむ一瞬椿つめたかり ああ、これってわかる。そう思い起こさせてくれる一句である。花は基本的に冷たいのかもしれないけど椿の花ってとくにそう思わせるものがある。「手につつむ」という措辞によってきっとこれは落ち椿を拾って手につつんだのであろうということが見えてくる。地上に落ちていた椿だからこそ、さらにつめたいということもある。落ち椿をそっと手につつんでいる著者の可憐な仕草も見えてくる。 いつかはと、心の隅にあたためて四十年。念願の視覚障害者朗読ボランティアの養成講座を受講し、やっと二年が経ちました。 「聞き手に負担をかけない読み」「想像力を豊かにする間の取り方」等、まるで、俳句を学んでいるようでした。ボランティアサークルの厳しい訓練を受けての活動は、リスナーさんとの心温まる時間を共有することも出来、未知の世界が広がりました。 俳句と朗読。この二つの世界には共通する極めて大切な部分があると感じています。 狭庭には二年前に種を埋めておいた無患子が、どんどん丈を伸ばしています。けなげに伸びゆく力は、日々私の心を弾ませてくれます。五〇年近く住む明石の町は私の第二の故郷。四季折々豊かな自然に恵まれ、大変住みよい町です。この町で、地域と繫がりながら、初学の頃の素直さと謙虚さを宝とし、これからも俳句を作り続けて行きます。 「あとがき」より抜粋して紹介した。 そのひとの影の土筆を摘みにけり この句も市川薹子さんの「やさしい佇まい」が見えてくるような一句である。 さきほどの「椿の句」といい、俳句に詠み込まれているちいさな時間や距離、それを「間」と言ってもいいのだろうか、それをきわめて巧みにさりげなく呼び込んでいる。あらためてうまい俳人であると思う。 本句集の装釘は、君嶋真理子さん。 色校正はこの肌色と紫色のものを用意した。 市川薹子さんは、肌色の方を選ばれた。 この度の句集によく合っているとわたしは思った。 「たう」という句集名は、「薹」の「たう」であるのか。 「薹」とは野菜や草の名、あるいは野菜類の花茎とある。 いずれにしても著者にとっては身近な「たう」である。 表紙。 栞。 見返し。 扉。 花布は金色。 栞紐は肌色。 可憐なやさしさのある風情は、本句集『たう』にぴったりである。 春潮のまぶしさに人待つてをり 好きな一句である。 人を待つ心の躍動がみえてくる。 ああ、こんな風に人を待ってみたい。 「春潮」がいい。 春の潮の充実感が待つ人の心をも支配している。 わたしは今、ちょっと人を待たせているの。 もう行かなくては、、 雨は激しくなって来そうである。 明日から連休。 皆さま、よき連休を。。。
by fragie777
| 2017-10-06 19:22
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