ふらんす堂編集日記 By YAMAOKA Kimiko

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春を待つ手

9月4日(月)  旧暦7月14日


春を待つ手_f0071480_19032280.jpg
風船葛。
さわるとやわらかく中に空気が入っている。


春を待つ手_f0071480_19035270.jpg
まだ花も咲き残っていた。



二つの受賞について報告したい。

まず、水野晶子句集『十井』が、日本詩歌句評論随筆大賞 (俳句部門)を受賞。

そして、阿部菁女句集『素足』が、平成28年度宮城県芸術選奨を受賞。

水野晶子さま、阿部菁女さま、心よりお祝いを申し上げます。

なお、このお二人の受賞については、「ふらんす堂通信」で特集を組む予定である。








さて、新刊句集を紹介したい。

後閑達雄句集『母の手』。


春を待つ手_f0071480_19040749.jpg
四六判ペーパーバックスタイル。 108頁 3句組。

俳人・後閑達雄(ごかん・たつお)の句集『卵』に次ぐ第2句集である。前句集に引き続き装画は漫画家のつげ忠男氏。後閑さんとは交流のある間柄である。
後閑達雄さんは、昭和44年(1969)年神奈川県生まれ、千葉県流山市に在住、現在は「椋」(石田郷子代表)所属、本句集は『卵』上梓よりほぼ8年間の作品を四季別に収録したものである。俳句をはじめたきっかけは、「うつ病がひどい時、母にすすめられ始めました」と『卵』のあとがきに記されている。タイトルは、その母との濃密な関係を象徴するものとしての「母の手」である。

 吾よりも母の手あたたかしいつも
 
第一句集上梓後、母のアルツハイマーが進行し介護生活を経て、私自身初めての一人暮らしをしています。

本句集の「あとがき」の言葉である。こう書くご本人の後閑さん自身も、肉体の持病と精神の病に苦しみ薬が離せない毎日だ。

 障碍者後閑達雄と書いて蟬
 渡り鳥働かぬまま生きてをり
 秋思なりずつと薬を飲む病気
 冬の鵙大きな粒の頭痛薬

タイトルが示すように母を詠んだ句がかなり多い。それは著者と母との現実であり、そこにはわれわれを圧倒的するものがある。

 春立ちぬ母の肌着を畳みつつ
 吾よりも母の手あたたかしいつも
 母に腕嚙まれてしまふカーネーション
 初桜母と手のひら合はせけり
 跪き母に白靴履かせけり
 
いくつか紹介したが、あたたかな「母の手」が詠まれていると同時にここから見えてくるのは、著者の「手」である。母に働きかける「手」である。あらゆる記憶をなくしつつある母を、この世につなぎとめておこうとする「手」である。
いつか後閑さんと電話で話したときに、

「今日は、母の見舞いに行ってきました。そうしたら、お母さん、僕の顔をぺろぺろぺろぺろ舐めるんですよ。顔中を舐められて帰ってきました」
と。

母と子のきわめて動物的な愛情のつながりだ。言葉にはならなくても愛おしいものとしてのとして存在するもの。
本句集はある意味で極限状況におかれた著者の壮絶な日々であるはずだが、句集を一貫しているものは、清々しいまでの明るさである。それを支えているのが母への愛であり、母からの絶対的な愛だ。へんな言い方だが、臍と臍が見えない糸でむすびついているような感じ。
本句集に、石田郷子代表が序句を寄せている。

 春を待つ手を甘嚙みの白猫と  郷子

やはり「手」である。
「春を待つ手」とは、著者の「手」であり母の「手」だ。
句集そのものへの挨拶句となっている。

本句集の担当はPさん。
Pさんは、『卵』の時から後閑達雄さんの俳句が好きだと言っていた。Pさんの紹介する句は。

 料峭や親指でむくゆで玉子
 水温む生まれたるもの立ちあがり
 エプロンの深きポケット蓬摘む
 シクラメン部屋あたためて待つてゐる
 頬白の飛ぶ明るさを待つてをり
 夏料理箸を正しく使ふ人
 夏空の下やドラムを組み立てて
 傘の骨残りし二百十日かな
 夜の卓レモンの卓となりゐたり
 指先にナンの熱さよ小鳥来る
 冬眠の前の薬を数へけり


この句集を老人ホームで寝たきりの母に報告するつもりです。

と「あとがき」に書かれているが、句集『母の手』を手に取られたお母さまはどんな反応をされるだろうか。病状が大分すすんでおられるとも伺っているが。


本句集の装丁は、和兎さん。


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つげ忠男さんの装画がとてもいい。
和兎さんとしてはタイトルに対して、ややハードにという思いがあった。



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叙情的に甘くならないように、ということか。



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集中のあまりにもさりげなくみえる句が、後閑達雄の真実を語る不可欠の一句として意味をもってくる。そういう句集であると思った。

 日向ぼこ太陽に手を透しをり

好きな句はたくさんある。しかし、この「手」の句を選びたい。
願わくは、後閑達雄さんの「手」がこうしていつも太陽に向けられたものであって欲しいとこころから願っている。







関悦史さんが、この句集についてツイートされている。

後閑達雄句集『母の手』(ふらんす堂)は顔が思わず薄笑いのまま固まって索漠と静まるような面白さ。意匠としての暗さや絶望に浸ることもなく病んだ母と淡々と暮らしぬく林田紀音夫とでもいうか。







寒いのだか、暑いのだか、わからないような一日となった。
扇風機をかけて床暖房をつけたいような、、、
(どういうこっちゃ…)
体調をくずす人も多いと思う。
お互いに気をつけましょうね。
(ここは母のごとく言ったつもり…エッヘン)













春を待つ手_f0071480_21194195.jpg












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by fragie777 | 2017-09-04 21:21 | Comments(0)


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