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7月26日(水) 旧暦6月4日
今日の二度目のおやつ。 お三時には、美味しい最中をいただいたのだが、夕方に立ち寄ったお客さまが買ってきてくださったもの。 賞味期限が今日までなので、頑張っていただくことにした。 食べてみるとお腹にもたれずやさしい甘さで美味しかった。 でも、確実に太っちゃうな。。。。 新刊紹介をしたい。 四六判変型ハードカバー装。 388頁 歌人・栗木京子(くりき・きょうこ)の九番目の歌集となる。 2016年にふらんす堂のホームページの連載「短歌日記」を一冊にしたもの。 全部で366首を収録、それぞれの短歌に日記のかたちで短文がある。 本書より前に刊行した八冊の歌集では、できるだけ詞書は少なめにしようと心掛けてきました。詞書を多用すると、短歌の自立性が削がれるような不安を覚えていたからです。けれども今回は、せっかくの機会なので、文章と短歌とのコラボレーションを楽しんでみよう、と考えを切り替えました。短歌が詞書に依存しそうになって悩むことの連続でしたが、結果はともあれ、新鮮な体験ができたと思っています。 「あとがき」の言葉である。 ページを繰っているとこんな日記に出会った。 七月二十二日㈮ 本日も、暑さしのぎの想像の世界へ。 「おとなの恋」について想う。 指がまづ冷えてこころの冷ゆるまで十秒ばかりおとなの恋は 「ねえ、この短歌どういう意味かしら。」 「おとなの恋」に精通していないyamaokaは、若いスタッフたちに尋ねた。 「いい歌ですね。それはつまり決して燃え上がるまでには至らないっていう恋のことでしょう」 「クールなおとなの恋、いいですねえ」 ふむふむなるほどと、わたしは聞き入っていたのだった。 この「短歌日記」を読んでいると著者の栗木京子さんは、けっこう空想好きである。 忙しい日々とは思うが、日常から心を解き放ってふっと心を遊ばせる。 そんな生活の余剰から生まれた歌がところどころに鏤められている。 こころにたっぷりと余白を持っている歌人である。 いくつか日付をおって、日記を紹介したい。 一月二十六日㈫ 近頃は焚火を見かけなくなった。 生(き)のままの心で逢はむ空(から)つぽの両手を焚火にかざすがごとく 一月三十一日㈰ 茶の木の花はふっくらとして愛らしい。こんな可愛い娘がいたらなあ、と妄想の世界へ。 生き別れせし子がふとも逢ひに来るやうなゆふぐれ茶の花白し 三月十四日㈪ 四十年ほど前、京都の下宿で一人暮らしをしていた。 ひとり分の洗濯物を干してゐる若き日のわれ見ゆる春の日 五月十八日㈬ 中村稔氏の著書『西鶴を読む』を拝読。たとえば「好色五人女」のお夏清十郎。お夏は「好色」と は言えない、という指摘に共感を覚える。 藤棚の下に思へり首を抱きうしろから刺す終はらせ方を 十月二日㈰ 今年は九月の末になっても暑い日が続いた。 ある夜ふと風の尾と尾のつながりて季節は秋に移りゆくなり 十月十四日㈮ 水分の補給は大切。 起き出でて水のむ夜更け胡瓶(こへい)もち百済観音たたずみてをり 十月二十三日㈰ 誕生日。 われに似る誰かも雲を眺めゐむ彼方の窓が夕日に染まる 十月二十六日㈬ 後ろ向きに歩くと健康に良いらしい。ただし障害物に注意。 歳月は巻き戻せねど秋ゆふべ後ろ歩きをしたき明るさ 十二月十三日㈫ 葉を堅く巻いたキャベツ。とてつもない存在感がある。 ゆふぐれのキャベツの内に海ありて貝や星など沈みゐるべし こうやって見てくると栗木京子さんの日記は、文章がみじかいのが特色である。 短歌はものを言う詩歌なので、文章があっさりしていると読みやすい。 その短文と歌の響き合いがとてもいい。 装丁は和兎さん。 著者の希望はブルーの本であること、鳥が飛んでいること、だった。 宝石箱のような一冊。 出来上がった本を手にしてわたしは思ったのだった。 白い鳥をちりばめて、ところどころに光っている鳥がいる。 カバーをとった表紙。 見返しは白。 扉の鳥たちはブルーに。 花布もスピンも白。 角背が美しい。 南に向いた窓から鳥たちは冬の空へと飛び立っていくのだ。 十月六日㈭ 荒川の堤を散歩する。 はぐれたる大事な人と出会ふため生まれて来しや夕日うつくし とても心惹かれる一首である。 「はぐれたる大事な人」 いい言葉だ。 いったいどんな人なのか具体的には言えないけれど、わたしにもあるいはそういう人がいるかもしれない。 「はぐれたる大事な人」 この言葉をわたしの胸にも棲まわせよう。 今日はお一人、お客さまが見えられた。 すぐにではないが、句集の刊行のご予定があって、その相談に見えられたのだった。 木本隆行(きもと・たかゆき)さん。 俳誌「門」(鈴木節子主宰)に所属されている。 鈴木鷹夫に師事して俳句をはじめてよりほぼ10年を区切りとして、第一句集の刊行を決められたのだ。 いろんな造本の本をじっくりと見られて、いくつかの候補にしぼられた。 やはり本づくりにはこだわりをもたれているようで、こちらの説明を熱心に聞いておられる。 京王線の八王子にお住まいなので、仙川には一本で来ることができる。 「なんどか、仙川の武者小路実篤公園には、ひとり吟行に来ました」という木本隆行さんである。
by fragie777
| 2017-07-26 19:19
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