ふらんす堂編集日記 By YAMAOKA Kimiko

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♪音符♪

5月12日(金)  旧暦4月17日

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矢川緑地に咲いていた胡桃の花。






さっそくに新刊紹介をしたい。

金子敦句集『音符』

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四六判ソフトカバー装。198頁

俳人・金子敦(かねこ・あつし)(1959年横浜生まれ)の前句集『乗船券』に次ぐ第5句集となる。2012年から2016年の作品を収録。栞に俳人の杉山久子さんが文章を寄せている。句集名が「音符」と命名されたように、本句集には音楽にまつわる言葉を用いたものや、あるいは音そのものを呼び起こすもの、読者の心に音のさざめきが生まれてくるような楽しいものが多い。そんなたくさんの作品のなかで少しだけ紹介したい。

 白南風や楽譜に大きフォルティシモ
 ハーモニカにあまたの窓や若葉風
 シンバルの連打のやうな残暑かな
 十二月八日やシュレッダーの音
 春を待つ八分音符に小さき羽
 トランペットより薫風の生まれけり
 ティンパニを叩けば風の光り出す
 楽団の荷に弾みたる木の実かな
 葱提げてピアノ奏者の帰りけり
 るるるるとららららららと萩こぼる

金子敦さんの童心ともいえる濁りのない感性は、日常にいろんな音楽をみつけていく。
栞を書かれた杉山久子さんは、金子敦さんの作品の良き理解者だ。なんといっても、25年にわたって「俳句文通」を続けて来られた(あとがき)間柄である。猫好きであるということもその絆を深めている。

金子敦さんとは四半世紀にわたり俳句文通を続けて来たので、山のような没句を含めてほとんどの句に目を通していると言っても過言ではない。

と書いているくらい。俳句文通という言葉があることも私は本書を読んで知ったのだが、なんとそれは素敵なことだろう。季節のめぐりのなかでそれぞれの季節を喜び味わいながら俳句に託すこと、それが出来るのは俳人だけの特権かもしれない。多くの言葉を連ねるよりもはるかにすばらしい挨拶だ。

 ボールペンの先端は球鳥渡る
 折紙の裏は真つ白昼寝覚
 方眼紙にみづいろの罫小鳥来る
 朝蟬や練乳缶に穴二つ
 消印の長き直線寒波来る

日常生活の中のとても些末なものを掬い上げて詩にしてしまうのは、敦さんの得意な作り方の一つだ。このような細やかなものたちに目を留めることにも驚くが、一句として世界を作り上げる季語の導きが絶妙だ。季語の働きによって手元にある小さな世界が、明るさと強さを伴ってもう少し大きな広い世界へと連れ出されるような心地がする。
(略)
最後に、敦句の新しい展開を予感させる、痛みと救いを思わせる静謐で美しいこの句を。

 鉄条網ひとつひとつの棘に雪

これから生まれる新しい音楽を楽しみにしている。

すべてを紹介できずに残念だが、杉山久子さんは、さすがに長い時間をかけて金子敦さんの作品を見続けてきただけあって、微かな作品の変化も見のがさない。
金子敦さんにとって、日常の些事は些事ではなく、ひとつひとつがその繊細な心で愛おしむものなのだ。わたしたちが読んで心楽しくなるのは、作品のもつ明るさと音楽性だ。
本句集の担当はPさん。
Pさんの好きな句を紹介したい。 

 春惜しむ画鋲を深く刺し直し
 箱庭に小石を置けばそれは山
 フェルメールより光を曳いてゆく螢
 狐火や転がるやうに夜の来て
 膨らんでより風船の揺れはじむ
 長き夜のところどころに付箋貼る
 水底の団栗はもう転がらず
 マシュマロの間に小さき春の闇
 トランペットより薫風の生まれけり
 寒波来るぴしと瞬間接着剤
 エクレアは漆黒の舟なごり雪
 鉄条網ひとつひとつの棘に雪

 マシュマロの間に小さき春の闇

わたしも好きな一句である。前句集で金子敦さんはお菓子好きであることがわかった。自称「スイーツ王子」(!)でもあると杉山さんの栞にある。「スイーツ王子」とはまさに金子敦さんにふさわしい。いったい誰がマシュマロとマシュマロの間に春の闇を見出すことができるだろうか。あのマシュマロですよ、白くてふんわりとして甘ーいマシュマロ、マシュマロ同士に間隔があることはあるが、そんなもん意識したこともないわ。パクパク食べてそれでおしまい。読者はあたらしい「春の闇」に出会うのである。

NPO法人未来塾の俳句教室の講師を務めて五年になる。一つの区切りとして、句集を出しておきたいと思った。早いもので、今回が第五句集となる。
今回の栞文は、杉山久子さんに執筆していただいた。久子さんとは、俳句文通を始めてから二十五年ほどになる。お互いの近作について感想を述べ合い、それに近況を添えるという文通である。メールではなく手紙。最近は、メールで連絡を取り合うことも多くなったが、俳句文通はいまだに続いている。僕の句稿には通し番号が振ってあり、現時点では五百八十となった。
これだけ長く文通が続いているのは、お互いに猫好きで気が合うということもあるが、やはり「俳句が大好き」という大きな共通点があったからだと思う。これからも、末永く文通を続けることが出来れば幸せである。

「あとがき」を紹介した。


本句集の装釘は、君嶋真理子さん。
金子敦さんの既刊句集5冊のなかで第2句集をのぞいてすべてふらんす堂で刊行させて頂いている。第1句集『猫』、第3句集『冬夕焼』、第4句集『乗船券』、そして今度の第5句集『音符』そのいずれもの装釘が君嶋真理子さんである。

句集『音符』への金子さんのご希望は「黄色」であった。



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ポップな黄色が句集の内容とよく合っている。


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表紙も黄色。

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見返しも黄色。

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栞もやや薄い黄色。

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扉もうっすらと黄色に。


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わたしの付箋も黄色に!
(敬意を表して……)


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金子敦さんは、「ジェンダーの重荷」から自らを解放する俳人だ。(と、私は秘かに思っている)
そしてご自身の世界をとても大切にしておられる。
金子敦さんは繊細にしてしなやかで明るい。

これからどんな俳句を詠まれていくのだろう、すごく楽しみである。


 ビー玉の中の怒濤や鳥渡る

好きな句はほかにもあるが、この句を選んでみた。さっきのマシュマロと同様だれも気づかないところに何かを発見する俳人だ。ビー玉の中に「怒濤」なんてあったかしら、と最初は思った。しかし、しばしビー玉を頭ん中に思い浮かべる。あのとろりと暗くて濃い深緑色のビー玉。目を凝らして中を覗けば、確かになにか暗澹たるものが見えてきそうである。俳人にみえたのは、怒濤だった。「鳥渡る」という大きな季語が、ビー玉の中の怒濤に呼応する。いやビー玉の中の「怒濤」が「渡り鳥」たちを引っ張り込んでしまうのだ。








今日はお一人お客さまが見えた。

京都よりのお客さまだ。

笹下蟷螂子(ささか・とうろうし)さん。

第一句集の相談に見えられたのだった。
笹下さんは、「若葉」と「天為」に所属しておられる。

明日は「天為」の会があって、有馬朗人先生にお会いになる予定であるとのこと。
句集は有馬先生のおすすめもあって刊行を決意されたということである。
序文を有馬朗人、序句を鈴木貞雄のそれぞれの主宰にお願いされている。


写真は苦手ということでした。









余談。
「ジェンダー」という厄介なもの。
21世紀の若者たちは、その箍をすこしづつゆるめて自身の身の丈のもので生きようとしているように私には思える。
すごくいいんじゃないって思っている。
最近会った若い女性が言っていた。「男性とつきあうと応えきれない自身のジェンダーに疲れてしまう」と。
わたしはこのことがよくわかる。
「ジェンダー」を十全に活用する女性もそれはそれであっぱれであるが、わたしは屈折していたな。
だからこの女性の「ジェンダー」に対する屈折も多いに分かっちゃうのである。




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by fragie777 | 2017-05-12 20:09 | Comments(2)
Commented by 金子敦 at 2017-05-13 10:18
どうもありがとうございます!\(^o^)/ 僕の新句集をご紹介いただき、とても嬉しいです! 「金子敦さんは、「ジェンダーの重荷」から自らを解放する俳人」とのお言葉、誠に光栄です! 今回の句集の装丁、ポップで軽快な感じがとても気に入っております。 男性俳人の句集の表紙としての「黄色」は珍しいと思います。もしかしたら、僕が先駆者かもしれません。「黄色は女性向け」という固定観念を打ち破りました!(笑) 
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Commented by fragie777 at 2017-05-13 14:39
金子敦さま
本当に金子さんは男性俳句(?!)の領域を広げた方だと思います。
そういう意味でも新しい時代を背負った俳人かもしれません。
たしかに黄色がゆるされる男性もそう多くいません。
優しく愛らしい(!)先駆者かも。。。

(yamaoka)
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