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3月27日(月) 旧暦2月30日
旧暦の2月って30日まであるんだということを今気づいた次第である。 新聞の紹介記事をひとつしておきたい。 毎日新聞の新刊紹介では、松田雄姿句集『歳月』が紹介されている。 海峡より明けゆく街や秋気澄む 松田雄姿 1934年生まれの著者は大野林火門で、「百鳥」創刊に参加、同人会長を務めた。2003年から15年までの作品を収める第4句集。根底にある明るさが作品の力となっている。 新刊句集を紹介したい。 ごく私的に刊行されたものなので、オンラインショップには紹介されていない。 吉田嘉太郎(よしだ・よしたろう)句集『寒卵』。 本句集は平成10年から19年までの作品を収録した第1句集である。 ペンだこが学位となりぬ寒卵 ご本人による序句が頁の最初におかれ、句集名は「寒卵」である。 この一句から推し量ることができるように、吉田嘉太郎さんは、ひたすら学究生活をおくられた研究者であって、その傍らで俳句をつくられて来たということ。「あとがき」によると俳句は俳人石原八束の指導によって始められたようである。 ご本人さまのご希望で多くをここに紹介することは差し控えたいと思う。 作品については、担当のPさんが好きだという作品のみを紹介したい。 馴染みなる鬼に手抜きの豆を撒く 寒すずめ風の形に零(こぼ)れけり 風の間の柔き擦り音吊るし柿 両の手で微妙にずらす冬帽子 くるくると舞うてくだける二つ蝶 手探りの指に触れたる鍵温し 炉を塞ぎ茶釜の音の変はりけり 風道の色変へていく夏野かな 入院の荷に加へけり青蜜柑 鰯雲捨てる書類と残すもの 菊食うて風光新たなる思ひ 蕎麦食うて身の振り方を定めし冬 足跡を持ち上げてゐる霜柱 鷽の目で蕾の気配窺ひぬ 新米のおむすび姉の掌の形 薄暗き湯屋に光りぬ秋の窓 まだ固さ残して揺るる糸すすき 連翹に気付きて外す胸ぼたん 懐手届かぬ先を思ひけり 本書は、ご本人さまとのご縁によって本書の装丁を装釘家の名久井直子さんが手がけられた。 ゆえにとても素敵な出来上がりとなった。 タイトルとお名前は墨刷りであるが、そのほかの模様とラインはすべてホットスタンプというカラ押しである。 ブルーグレーのように見えるのは表紙の青が透けてみえるからである。 この用紙はこれまでふらんす堂も何度か用いてホットスタンプをしてきたが、まったく新しいものを見るような新鮮さがある。 箔押しをしたところが透明度をましている。 フランス装の表紙。 頁数は多いのだが、やや細身の変形によってスマートに仕上がった。 栞紐は臙脂。 (この紺と臙脂の組み合わせはもっともわたしの好きな色である。) ![]() いつまでもずっと見ていたい、そんな一冊である。 シンプルな色使いであるが、本として格がある。 吉田嘉太郎さんにはお目にかかったことがないが、きっとこの本のように知的で清潔で上品なお方なのだとわたしは思ったのだった。名久井直子さんは、紙の特性やインクの色使いなどに精通されている装釘家であることは言うまでもなく、きっと魔法の力をもった装釘家である。 吉田嘉太郎句集『寒卵』を手にして、わたしはこの本にすっかり魅了されてしまった。 (インターネット上で見るだけではなく、この本を手にとって欲しいなあ。書物の魅力は手にとってこそのものである、と私は思っている) 普段着の上へ一枚花衣 吉田嘉太郎
by fragie777
| 2017-03-27 20:01
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