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3月2日(木) 旧暦2月5日 名栗を歩いてたときに出会った風景だ。 ズームでとらえた風景だが、なにをしているのだろうか。 垣を繕っているのか。それとも苗木を植えているのか。 「垣繕う」も「苗木植う」も春の季語である。 ご存じでした? 仮の世に仮の垣根を繕ひし 高野素十 働く人の真下を水音をたてて川が流れている。 すべてが山里の春の景色だった。 第32回詩歌文学館賞が発表になり「俳句部門」で、後藤比奈夫句集『白寿』が受賞した。 ことし100歳を迎えられる比奈夫先生である。 まことにおめでたいことである。 昨年刊行した後藤比奈夫著『俳句初学作法』もよく売れており、本日再版が決定した。 100歳で受賞された方は、いままでにはおられないのではないだろうか。詩歌文学館賞はじまって以来のことであるかも。 「短歌部門」は、波汐國芳(なみしおくによし)歌集『警鐘』(角川文化振興財団)、波汐氏も91歳である。 「詩部門」は来住野恵子(きしのけいこ)詩集『ようこそ』(思潮社)。 ご受賞された皆さま、おめでとうございます。 心よりお祝いを申し上げます。 そういえば、すこし前のことになるがこの詩歌文学館賞の授賞式において、歌人の小高賢さんが著書『老いの歌』(岩波新書)刊行を契機に、「老いを生きる」ことについて記念講演をされたのだった。 いまそのことをふっと思い出した。 まだ「老い」の手前におられる小高賢さんだったが、豊かな老いを生きるべくこれからやってくる「老い」について楽しそうに語られていたことを覚えている。 しかし、ご自身はその「老い」を楽しむこともなく、突如急逝してしまわれたのだった。 見事な老人となった小高賢さんにお会いすることができない、ということが本当に残念である。 さて、 句集『白寿』より数句紹介したい。 賀状うれし敬ひくるる人ばかり フアツシヨンといふ春寒きものを見る 半跏思惟涼し立像見たる目に 麦酒と書けばビールと味違ふ DVD見てまた亡者踊かな 松よりも竹美しき松飾 かく雪の日なりき二・二六も 睡蓮を見てモネ思ふそれも陳腐 心消しさるはむつかしゆすらうめ 生涯に読み切れざりし書も曝す 母子草御形といへば位あり 或る夜ふと父母の夢見し子蓑虫 堅香子の花も俯き人を恋ふ いただきしパジヤマと枕ふと寒し (白寿に) 悟朗逝く奈良に吹きたる春嵐 (和田悟朗逝く) 長汀を昏ませ干せる若布かな 秋聲の中父の声母の声 妻をふと思ふ銀河の濃き夜は ピストル型水鉄砲の殺戮度 白寿まで来て未だ鳴く亀に会はず 自在な境地とはこういうことだろう。 この度のご受賞はまことに目出度いことながら、昨年の6月にご子息の俳人・後藤立夫氏を亡くしている。 その心中や推し量らざるべからざるものがある。(←この言い方で良かったかしら) 目下ふらんす堂では立夫氏の遺句集を製作中である。 長生きの心身には悲しみの分量もそれだけ多いのではないだろうか。
by fragie777
| 2017-03-02 20:09
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