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1月24日(火) 旧暦12月26日
ふらんす堂通信が校了となり、出来上がりは今月末、会員の方々へは2月の始めころにお手元に届くことになる。 すでに「いつになりますか?」というお問い合わせをいただいている。 もう少しお待ちのほどを。 通信が校了となったので、いよいよ「田中裕明賞」の冊子に取りかからねばならない。(すでに去年から取りかかっているのだが、ほかの仕事に忙殺されどうしても後回しになってしまう)。 なんとか頑張りたいとおもっているのだが、いやはや。。。。。。。(ふか~いため息) 新刊句集を紹介したい。 著者の佐々木巴里(ささき・ぱり)さんは、1931年東京日本橋生まれ。現在大田区在住。1987年よりクラブ関東「鷹羽狩行俳句講座」に入会し俳句をはじめ、2014年に俳誌「狩」(鷹羽狩行主宰)に入会する。本句集はこれまでの作品を四季別に分けて編集した第1句集である。序句と帯文を鷹羽狩行主宰が寄せている。 搭の灯をかすめてパリの流れ星 狩行 集名の「流れ星」と、佐々木巴里さんのお名前の「パリ」が詠み込まれている。 佐々木巴里さんは、ご旅行をよくされる方であるとも伺った。 星となり天使となりて聖夜劇 「星となり天使となり」、さて何事かと思うと、聖夜劇のこと、その可愛さが倍加した。 水筒をしづめて満たす岩清水 空になっていた水筒を貴重な岩清水に沈めて満たす。これ以上の贅沢はない。 色どりに白ありてこそ菖蒲園 色さまざまに咲いて美しい花菖蒲。それを際立たせているのが、無色に近い「白」。 海外詠にも美しい作品が多く、読んでいて、まことに楽しく、気持ちが明るくなる句集である。 鷹羽狩行主宰の帯文を紹介した。 佐々木巴里さんには一冊の著書がある。「セバスチャン春雄に捧ぐ」という副題が付けられている。 亡くなられたご主人との思い出を綴った一冊で「わたしを選んでくれてありがとう」という題名の本である。本句集にもご主人のことを詠んだ句が散見される。 相合のかさを傘寿の年新(あら)た (夫の傘寿に) しだれ梅咲きて夫の忌をむかへ 春眠やかたへに夫の居るやうな 白菊を供へて旅のこと告ぐる 花野ゆく背高き夫のあとを追ひ 享年は夫と同齢墓洗ふ 著者の巴里さんは、現在東京のゆったりとした住宅街に住まわれ茶道の先生をしながら外国旅行を楽しんでおられる。 担当のPさんが一度伺ったのであるが、良家のお嬢さまがそのまま歳を重ねられたそんな感じのお人であるということ。とてもお元気で溌剌とされた方とも。大切なご本である著書を「もうこれしかないのよ」とおっしゃりながら下さったのである。 Pさんの好きな句を紹介したい。 庭石のくぼみの水も春の水 下萌や小庭の石のはざまにも 二階より泰山木の花数ふ 一睡の間に影移り砂日傘 にくからぬ人にとどかず草矢かな 夏帯の軽きを好む齢となる 家中に風を通して梅雨の明け 残菊の香り高きを籠に活け 背にしばし日差しを受けて障子貼る 花の鉢置きかへて見る小春かな おしまひは星空にむけ豆を撒く まだ蕾ある枯菊を活けにけり この数句を読んだだけでも、その豊かな暮らしぶりが見えてくる。生活を楽しむという心の余裕があり、育ちの良さが行き渡っている。 「あとがき」を紹介したい。 長いのだが、愛らしい人間性が(目上のお方に、ごめんなさい)が伝わってくる一文である。 私が俳句に出会いましたのは昭和六十二年、今年で三十年目になります。クラブ関東で鷹羽狩行先生の俳句のお教室が始まり、受講される方も多かったので、クラブ関東での親友、浅香玲子様と一緒に受講いたしました。先生に初めてお会いしたとき、浅香様は「まあ素敵な先生」と声をあげておっしゃいました。というのも、二人で前々から先生のイメージを話し合い、きっとご年配で宗匠のように和服で茶羽織をお召しになるような方なのではと思っていたからです。しかし狩行先生はお若く、品格のあるご趣味のよい背広姿のダンディーな紳士だったので、私もとても嬉しくなりました。後で知人から「光源氏」として瀬戸内寂聴様のお墨付とうかがい、毎月の句会が一層楽しくなりました。ご指導は優しく厳しく、のんびりした私にはよき師とのご縁ができて幸せでした。 この様な私にも一冊だけ本を出したことがあります。亡き夫の追悼本『わたしを選んでくれてありがとう』です。この本が日野原重明先生のお目にとまり、日野原先生のご自宅にお招きいただいたので、平成十三年の三月二十五日にお伺いしました。日野原先生は開口一番に「私に会うのは大変なのですよ。貴女はよく留守をなさる人ですね。電話を三回もしました」とおっしゃいました。そして本をお読み下さって、「クリスチャンとしても良い本ですから、教文館から出版なさい」とのこと。私が「プライベートな本で、主人の友人知人などにお配りしたものなので、ご遠慮させていただきます」と申しますと、先生は「貴女だけですよ、私の申し出を断るなんて」とがっかりなさったご様子でした。ご機嫌を悪くなさったのではと心配しておりましたところ、奥様が紅茶とケーキの用意をして下さったので、私もお台所に入りお手伝いを致しました。先生も奥様もお優しく、本のお詫びをして帰りました。今思い出しても素敵なひと時でした。 眩しいような人となりの佐々木巴里さんである。 そして「巴里」という俳号についても、「あとがき」に書かれている。 その後、NHK学園海外スクーリングに四回参加。狩行先生には毎日のバスの中や句会の場でゆっくりとご指導いただき、嬉しく楽しい日々でした。 流れ星王妃の眠る地に届け パリの句会で狩行選に入り、先生より「巴里」の俳号を賜わりました。平成十二年二月、最愛の夫が逝き、心に穴があいた時でしたので、身に余る光栄と存じ、生きる支えができた句でございます。 無垢なる乙女性をまだたっぷりとその心に宿して、世の中の薄汚い領域からは無縁なお方である。しかし人の世の無常は巴里さんといえども免れ得ないのである。俳句が心の支えとなった。 ほかに、 人生の出逢ひのいくつ福寿草 座禅草一人一人の庵に座し 手籠にも葉の香がうつり桜餅 雛壇を仕舞ひ茶室に戻しけり 仮住居ながらも月下美人咲き あぢさゐのぬるるがままに色を増す 廃校の広きグランド麦の秋 猫は背をゆつくり伸ばし冬隣 スペインの鳩に囲まれ日向ぼこ 数へ日や新聞小説切りためて 本句集の装釘は君嶋真理子さん。 ご本人の希望は「こういう感じの本がいいの」とPさんに差し出したのがサン・テグジュペリの『星の王子さま』。 「星の王女さま、のような本がいいのね」 「それと同じにすることはできませんが、君嶋さんに頑張っていただきましょう」とPさん。 そして出来上がったのが、この本である。 星と文字の空押し。 見返し。 扉。 花布は金色、栞紐はブルー。 佐々木巴里さま。 わたくしの眼鏡どこやら昼寝覚め この一句、佐々木巴里さんそのもののような気がする。わたしはお目にかかったことがないが。昼寝して眼鏡がどこかに行ってしまったけれど、(あら、あら)とゆっくりと慌てない、きっと一事が万事そうなんだろうと思う。愛され守られてきた人生の時間が佐々木巴里さんをかたちづくったのである。こういう方には、悪玉菌も退散してしまう。 ご本を作らせていただいた版元のyamaokaは、ちょっとばかしヤクザな女かもしれず、ごめんなさい。
by fragie777
| 2017-01-24 19:57
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Comments(2)
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