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1月17日(火)土用 旧暦12月20日
スペイン・トレド 三方をタホ川に囲まれている。 今日はえらい寝坊をしてしまった。 時計をみてどひゃあーって飛び起きた。 iPhoneの目覚ましが少なくとも15分おきに鳴ったはずなのだが、どうしちゃったんだろう。 一度はエイッとコール音の息の根をとめたことは覚えている。 が、そのあとは。。。。。 わたしのベッドの周りで猫たちがまったりといる。 「起こしてよ!」と猫たちに言ってみても今日は知らんぷりである。 人間に言っておかなくっちゃダメなのかなあ。 猫のヤマトはよく起こしてくれたのだが、、、 そうも言ってられず、いろんなことを省略して支度をする。 朝は、納豆とバナナジュースと決めている。 バナナジュースは、バナナ1本とアーモンドミルクをシェイクして飲む。 が、今日はアーモンドミルクを切らしてしまっていた。 そこで代わりにヨーグルトと水でシェイク、 そんなに味なんて変わらないわよ。 あとは燃えるゴミをかきあつめて外に持っていったらちょうどゴミ収集車がやってきた。 お兄さんに手渡して、歯磨きをして着替え、「通信」のために家の本棚の本を何冊かあつめて袋に突っ込んで車に飛び乗ったのだった。仕事場には遅れるって連絡をした。 どうもここんとこ朝が起きられない。 旅行の疲れがいまになって出ているんだろうか。 新刊紹介をしたい。 著者の東畑孝子(とうはた・たかこ)さんは、昭和14年(1939)島根県太田市生まれ、現在東京都中野区在住。平成4年(1992)に俳誌「青山」に入会、山崎ひさをに師事。現在は「青山」同人。本句集は平成5年(1993)から平成28年(2016)の23年間の作品を収録した第1句集である。序文は山崎ひさを主宰が寄せている。 集名「Famlie ファミリエ」とはドイツ語で「家族」のこと。 本句集『Famlie(ファミリエ)』は、馬の句が圧倒的に多い。そのことを山崎ひさを主宰は冒頭でこう記しておられる。 東畑孝子さんは、いわゆる良家の子女育ちである。そしてそのことが孝子俳句を貫くバックボーンとなっている。通じておおらかで真っ直ぐ、素直で伸び伸びとした、しかも明るく、健全な作風である。写生の大道をゆるぎなく進む趣きと言ってよい。ご実家の和田家は、島根の素封家であり、ご父君の和田孝一郎氏は世に知られた馬主さんである。島根県大田市に居を構え、千葉、北海道、東北の各地に牧場を持ち、シンボリルドルフ、スピードシンボリなど多くの優駿を送り出して来られた。 大分前、青山連衆打ち揃って島根県のご実家に立ち寄ったことがある。宏壮な構えの旧家であった。中でも正門の高さに一驚した。聞くところによれば、ご父君が乗馬のまま、門を出入りするため、冠木を一際高くしてあるということであった。 馬房より朝の嘶き去年今年 ストーブを囲む獣医もその中に 母馬を曳けば駆けよる仔馬かな 馬市に出かける父のパナマ帽 騎初や馬場に箒目新しく 寝静まる馬にそれぞれ毛布かけ 騎初や屋敷稲荷へ一礼し 鞍上の少女の髪に春の風 山崎主宰は序文において本句集の特質をほかにあとふたつあげておられる。まずは「Famlie」という句集名にあるごとく、家族が詠まれている。父母、夫、姉妹、子供たち、そして孫たち、東畑さんをとりまく明るい家族たちである。 身重なる身に大いなる夏帽子 母の手にもどす赤ん坊星涼し 三人の姉みな老いぬ明の春 もうひとつの特色は海外詠。ご主人と毎年のように旅行をされている著者には多くの海外詠がある。 秋暑し聖なる牛とすれ違ふ (インド) 遺跡いまオリーブ畑秋の蟬 (アテネ) 涼しさう吾もアオザイ着てみたし (ベトナム) たくさんの海外詠より三句のみ紹介した。 晩学を子に褒めらるる春夕べ ふるさとは八雲立つ国冬夕焼 雪沓と並べて馬の草鞋かな 長きに亘る斯道研鑽の成果として共に喜ぶところ深い。その間作者の写生の大道を行く姿勢と、併せて多作多捨の実践とに啓示されること多いものがあった。これを機に一そうの精進向上を期待するところ大きい。 句集の上梓を喜びこれからを期待しておられる山崎主宰である。 本句集の担当はPさん。好きな句を紹介したい。 二歳馬に初めての鞍風光る 膝を踏む赤子の力土用の芽さらに黄を加へ向日葵二輪咲く 鎌倉の春を駆けゆく人力車 幼子に金魚それぞれ名を貰ひ テンガロンハットの牧夫天高し 花ゆうなひびき優しき島訛 山荘を開け老鶯の風通す 喜寿を迎える今年の元旦、家族の集まった席で句集上梓へ向けて協力しようと話が盛り上がりそれを受けて、上梓を決断しました。 俳句を始めて二十数年の作品を整理し、自分史を振り返ることが出来たのは、人生の節目として良い決断であったと思います。 特に多くの海外旅行の句には、写真では感じられない思い出が彷彿とよみがえり、若き日のあの時の、あの景色を楽しむことが出来ました。 改めて俳句の持つすばらしさを痛感いたしました。(略) なお題簽は夫東畑隆介が、ドイツ語で、表紙の挿絵は絵を描くことの好きな孫青木梨南子(14歳)が、とそれぞれ上梓に協力してくれましたことで、改めて、家族の絆を深く実感することが出来、嬉しい記念の上梓となりました。 「あとがき」の言葉である。 本句集は「「ファミリエ」というタイトルが象徴するように家族の絆の下に出来上がった句集である。 ページを開けば、明るい幸せな風を読者もその頬に感じ、満ち足りた家族像が立ち上がってくる。 馬主の父上は、名馬シンボリルドルフを育てた方である。 わたしより競馬にくわしいPさんによると「G1」を制覇したということは、ものすごいことであるのだそうだ。 シンボリルドルフはウィキペディアによると「史上初の7冠馬」であるということ。いやはやなんとも凄いらしい。 東畑さんにおいては、少女期から共にあった馬はきっと「ファミリエ」の一員なのであろう。 朝露に濡れて戻りぬ調教馬 亡き父の創りし牧場冬の虹 (シンボリ牧場) ふるさとに来れば末つ子桃の花 鳳仙花抱き癖つけてしまひけり 騎初や馬場に箒目新しく 春めくや家に赤子の匂ひして 授乳後の寧けさにあり雛の間 赤ん坊に知恵の兆しやクロッカス 尼寺やほたるぶくろを刈り残し 泳ぎきてドナウの水を滴らす 母の手にもどす赤ん坊星涼し 箱入りといはれて古希や衣被 青葦の触れ合ふ音の高さかな 書を曝す飼育日誌もその中に 亡き人の校了印や盆の月 本句集の装釘は和兎さん。 「あとがき」で書かれているように題字はご主人の手によるもの、装画は14歳のお孫さんによるものである。 ご家族が揃ったときに句集をつくろうという話しが決まり、その場にいたお孫さんがさっと描いて見せてくれたものであると伺っている。男性と女性子供と大人を描き分け全員が揃っているということ。そう、ペットもいた。 お孫さんの梨南子さんは絵を描くことが大好きでつねに何かを描いておられると、東畑さんがご来社下さったときにおっしゃっておられたのだった。絵の道にすすまれるのかもしれない。 金箔押しに。 あたたかな家族像が立ち上がってくる句集である。 そしてとてもスマートである。それは題字の「Famlie」というドイツ語と装画のユニークさによるものだ。 洎夫藍や母在りし日の銀食器 「洎夫藍」はサフランの花のこと。秋の季語である。一度だけでは覚えにくい漢字の名である。そして俳句にもなかなか詠まれにくい「洎夫藍」である。「サフラン」で詠まれた句は目にしたことがあるが、「洎夫藍」は少ない。この一句、著者の豊かに恵まれた育ちの良さを象徴しているかのようだ。「サフラン」はその言葉のひびきだけでもどこか優美なひびきがある。「洎夫藍」と漢字で書かれたことによって少女期の濃密で優雅な時間が立ち上がってくる。母から譲り受けた銀の食器を目の前にして母に愛され幸せだった少女時代が彷彿とされるのだ。「銀食器」にカタカナの「サフラン」では「銀食器」が視覚に重すぎると思う。漢字にすることによって銀食器にみあう花の質量を感じさせる。 この一句を読んでわたしはふっと森茉莉さんのエッセイを思い出した。鴎外にそれはそれは愛された森茉莉。彼女も豊かなものたちに取り囲まれそれを優雅な日本語で再現してみせる作家だった。彼女もきっと「サフラン」は「洎夫藍」と書きしるしたことだろう。 そういえば、森鴎外に「サフラン」というエッセイがあった。すごく好きなエッセイだ。 グラナダに咲いていた冬薔薇。
by fragie777
| 2017-01-17 21:00
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