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10月19日(水) 旧暦9月19日
「ふらんす堂通信150」を校了にした。 今回は特集はなし、 しかし、内容は充実している。 どの連載もいい。 (自画自賛しているわけじゃないわよ、だってわたしの力に拠るものじゃすこしもないんだから) そして、 新連載がはじまった。 鴇田智哉さんによる「田中裕明論」である。 まずは『山信』を中心に。 ご本人のお仕事などの事情によって、不定期連載のかたちになるかもしれない。 鴇田さんにはじっくり取り組んでいっていただきたいと思う。 新刊句集を紹介したい。 著者の中江保江(なかい・やすえ)さんは、1955年京都宇治市生れ、宇治市在住。2000年大丸フォーマルにて俳句をはじめる。2004年俳句グループ「MICOAISA」に入会、2007年「船団の会」に入会。本句集は第1句集、帯文に坪内稔典さん、栞に神野紗希さんが言葉を寄せている。 タイトルの「青の先」は、 青の先は青初秋の連絡船 による。 保江さんの句は元気だ。「汗ばめる乳房二つ富士一つ」のように。近景の乳房、そして遠景の富士山の対比がとても元気。保江さんの句はまたとても明るい。「青葉風フィラデルフィアから葉書」のように。こんな葉書が来たら明るくて胸が広くなるだろう。もちろん、保江さんはひそかに繊細だ。「朝礼のわたしを登るてんとむし」の天道虫のように。わたしを登った天道虫は羽を広げて飛び立つ。保江さんもこの句集で言葉の翼を拡げて飛び立つ。青の先へと飛び立つ。 坪内稔典さんの帯文である。 「乳房」の句と「天道虫」の句がいいなあ。 そして、こんな応援の言葉だったら嬉しい。 栞の神野紗希さんは、「共感力がつなぐ世界」と題して広々とした視点に立ってこの句集を鑑賞する。 立春のキリンの覗く二階窓 カーラーを大きく巻いて春怒濤 冒頭に置かれた二句だ。一句目、キリンの黄色が、立春の光の眩しさや明るさを連れてくる。二階の窓というのは、春の兆しを一番感じる場所かもしれない。二句目、カーラーで大きく巻いた髪と、ふくよかに立ち上がる春の怒濤の、形状がシンクロする。どちらの句も、二階の窓や化粧鏡などの日常に、いきなり、キリンや春怒濤といった外界が、ヌッと出てくる バレンタインデー惑星八個箱に詰め 夕焼けをめくって母の家探す 春ショールかけてもらう時孔雀 空に種ぴゅっと飛ばして子規忌かな セザンヌの林檎転げてまだ酸っぱい おばさんになりたいおじさん花菜漬け 薔薇の雨ドーベルマンが目を覚ます 保江さんの句は、世界に対するたぐいまれなる共感力に溢れている。共感を寄せ、大胆に結びつけることで、世界を構成するさまざまな者たちの心の声を、句にやさしく響かせているのだ。 冬茜ピアノはそっと帆を立てる グランドピアノの蓋を船の帆に見立てて、どこへも行けないピアノの旅心をそっと差し出した。このとき、保江さんはピアノになっている。 椿にも孔雀にもピアノにもなれる。保江さんは、そして俳句は、なんて自由なのだろう。 やや乱暴な抜粋で申し訳ないが、神野紗希さんもまたしなやかに句を鑑賞する。 本句集の担当はPさん。Pさんの好きな句は、 跳ぶための助走を長く春一番 看護師が椿に配る体温計 種袋シャカシャカ鳴るやつ鳴らぬやつ 緋のツツジ全速力で行くAED はつなつの再生ガラスにある気泡 ひろげれば夏の香りの旅鞄 ラムネ瓶くびれて透けて過去は過去 人間に針さすしごと合歓の花 川くねりオールの先はもう晩夏 パイプ椅子丁寧に拭く涼新た 街残暑アンモナイトを踏んで行く 空澄む日鳥の名すぐに言える人 小春日を伸ばして巻けば卵焼き おばさんは七味利かせてしゃべる人 雨だれや老人・冬芽やわらかに 初雪やふわっと着地して中年 大鷹よ胸の高さに来て留まれ 消印は雪の下名は野水仙 聞こえるかい今水仙のファンファーレ 三交代の仕事をしながら俳句を続けてきて、俳句は自分への応援歌となり、句会は職場とは違う人達と交流できる非日常の場であった。句会に行った次の日は気分も新たに仕事をすることができた。俳句を始めてから、日常生活の小さな事柄に発見があったり幸福を感じたりする。小さな十七音の世界の中で言葉と言葉の取り合わせ方によって表現する世界が何通りにも違ってくることを知る。 できる俳句はまだまだ稚拙で恥ずかしい限りであるが、定年を迎えるにあたり、仕事と子育てをしながら俳句に費やした時間をまとめてみたくなった。目を通してくださる方が少しでもいれば幸いである。 「あとがき」の言葉を抜粋して紹介した。 「自分への応援歌」というのがいい。本句集を読んでいるとそのことがわかる。だから読んでいて気持がいい、新しい空気を吸い込んでいるような、新しい光の下に引き出されたようなそんな気持良さ。 本句集は「赤のシリーズ」の一巻として刊行された。 従って装釘は和兎さん。 青の美しい一冊となった。 深い青の色を湛えた句集となった。坪内稔典さんのことばをもう一度。 この句集で言葉の翼を拡げて飛び立つ。青の先へと飛び立つ。 泥まんじゅうキラキラかける春の土 この一句、小さい頃泥まんじゅうをつくって遊んだときのことを思いだした。水をふくませた春の泥はしっとりとしてあたたかく土の匂いがした。ねっとりとしたチョコレート色の泥、泥、泥。ああ、いまでもその土の匂いと泥の感触とぬくもりを思い出すことができる。泥んこがなによりも親しくて楽しかった。この句「キラキラかける春の土」がとりわけ素敵だ。春の土には魔法の粉がまぶしてあって、それがすべてを生き生きとさせる力を秘めている。泥まんじゅうの滑らかさ、そして春の女神が一振りした魔法の粉をふくんだ土、すべてが祝福された世界だった。 今日は午前中にキャノンの営業さんが見えた。 このところ、メールによるウイルス被害が拡大しているらしい。 非情に巧妙で、うっかり添付ファイルを開いてしまうらしい。 よくわかる。 わたしもやりそうなり、「おお、ヤバイ」と危うくとどまるのだ。 「本当に気をつけてください」って皆から言われている。 これまで何もなかったのが奇跡に近いくらい。 その対策として、防御対策を強化することになったのである。 話しを聞いていると本当に信じられないようなウイルス攻撃が展開している。 見えない敵にこちらもガードを強固にしていくっていうわけ。 ![]()
by fragie777
| 2016-10-19 20:04
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