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7月6日(水) 旧暦6月3日
昨日は郭公の鳴き声で目が覚めた。 郭公の鳴き声はいつ聴いても遠いところから聞こえてくる。 起きてからしばらくしても時々鳴いていた。 姿を見てみたいものだと、外に出て近くの林まで行ってみたのだが、姿を見せてはくれなかった。 夕べに聞けば淋しい鳴き声かもしれないが、朝の寝覚めに聞く郭公は耳に優しく心地良かった。 わたしが古の万葉人であったら、ここで一首、歌などを作ってみせるところだが、ところがどっこいわたしは21世紀の東京郊外の小さな町で零細出版業をいとなむおばちゃんであるのでそこそこのリアリズムを生きている。ゆえに(この接続詞、妥当か)寝起きのパジャマ姿でこそこそと林をのぞき、こんな姿人に見られたら大変と大慌てで家に駆け戻ったのだった。(かろうじてセーフ)しかしこれもわたしの空回りする自意識にすぎないけれど、まあ、いいじゃあないの。。。 今日は郭公の鳴き声を聞かず、明日を期待したい。 井上弘美さんが選者をつとめる朝日新聞の京都版に句集『顔見世』が紹介された。 紹介者は、記者の北垣博美さん。 本紙「京都俳句」選者の井上弘美さんが、俳句日記『顔見世』を出した。東京の雑誌に連載したもの(この情報はちょっと違うのだけど、まっいいか)まとめた。「日記を書くなら産土(うぶすな)の土地である京の風物にも触れたい」と、京都賛歌の作品になっている。 東京・渋谷と京都・下京に住まいがある井上さん。「往復していると、流れている時間の違いを実感する」という。日記は各ページに、俳句をメインに200~250字で日常生活をつづっている。 本陣は山をうしろに太刀飾る 「今日は立夏。上賀茂神社で競べ馬が行われいる。競べ馬は歳時記にも立項されている伝統季語で、『徒然草』にも登場する……」 宵闇のざつと濡れたる祭鱧 「今日から京都は祇園祭。一日は吉符入りで神事始め。鉾町の関係者が衣服を改め、それぞれの会所に集まり……」 日記には「夜、最終の『のぞみ号』で京都に向う」「京都で新年を迎えるべく最終の『のぞみ号』に乗車した」など、4年間に創刊した俳誌「汀」の主宰者としての慌ただしい一面も垣間見える。 題名の「顔見世」について、井上さんはこう述べる。「顔見世」は京都の顔ともいうべき風物詩である。(略)このささやかな日記を顔見世とすることで、京都への尽きない思いを込めた」 書道情報誌「書道界」7月号が届く。 「新刊紹介」のコーナーに足立翠泉句集『星硯』が紹介されている。 書家足立翠泉氏の初の句集。氏は高校時代、山口誓子が主宰する「天狼」同人の加藤かけいに俳句を学び、創作を続けていたが、その後中断。 1968年、金子鴎亭の書展を訪れたことを機に書の道に進み、鴎亭が提唱する「近代詩文書」の分野で、俳人の句とともに、再び詠むことを始め、自らの句を書で表現してきた。本書は1987年から2008年までの句の中から俳人の片山由美子選による315句を収載。片山氏は表題を命名、跋も寄せている。 昨日は、福田甲子雄さんの家の庭に立ってしばらくを保坂敏子さんと過ごした。 山梨は東京とうって変わって猛暑の一日であったが、その時分はすでに夕暮となって涼しい風が草木を揺らしていた。 主なき家は手入れをされているもののやはりどこか淋しく、庭はクマザサが席巻している。俳人の庭らしくとりどりの草や木があって、今は亡き福田甲子雄さんが愛された庭であることを思った。 「福田先生はとくに夏椿がお好きだった」と保坂さん。 みれば、夏椿があちこちに植えられており、すでに花は咲き終えたあとで、花季はいかばかりかとその白の清楚な咲き振りが思い起こされた。 福田甲子雄全句集を刊行させていただくことになって、こうして福田甲子雄を敬愛する人たちを通して、わたしは福田甲子雄という俳人を新たに知っていくことになるのだろう。 10年前の蛇笏賞の授賞式のときに福田甲子雄さんは、ニコニコとしながら、 「今度は、ふらんす堂でエッセイ集を出して貰うよ」とおっしゃったのだが、それを果たしていただけないまま亡くなられてしまった。 ご縁はなきものと諦めていたのだが、いまこうして全句集を刊行させていただくという思いもかけないご縁をいただいた。 かつて出版社勤務のときに保坂さんの案内でお尋ねした福田さんの家の庭に再び立ちながら、わたしはその間に流れた30年の歳月を思ったのだった。 30年前にわたしたちをあたたかく迎え入れてくださった福田甲子雄さん。 そこには田中裕明さんもいた。ほかに大木あまりさん、長谷川櫂さん、林桂さん、島谷征良さん、西村和子さん、皆若かった。企画した俳句のシリーズが完結して持ち回りで吟行会をやったときの保坂敏子さんの担当の吟行だった。 甲府のこの思い出はあまりにも鮮明だ。 よもや再び主亡きこの家を訪ねようとは。。。 福田甲子雄さんの明るい笑顔が浮かんできた。 全句集が刊行されることを心から喜んでいる笑顔に思えた。
by fragie777
| 2016-07-06 19:22
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