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6月23日(木) 旧暦5月19日
わたしの家にも一本あるが日当たりが悪く、咲かない。 木肌が赤く枝振りのかたちがよくて、さまになる木である。 笑ってしまうような話であるが、実はわたしは自分をブルータスのように公明正大と思っていたのだが(笑うな)、しかしどうやらわたしはマクベス夫人のように鼻持ちならない野心的な女であるらしい。 (いやあ、気づかなかった。。。) 今後、わたしはわたしの中にあるブルータスとマクベス夫人を上手に飼い慣らしながらやっていくことになりそうである。 新刊を紹介したい。 著者の南惠子(みなみ・けいこ)さんは、昭和22年(1947)石川県金沢市生まれ、金沢市在住。平成元年(1989)「風」入会、平成9年(1997)「風」同人、平成13年(2001)第37回犀星俳文学賞受賞、平成14年(2002)「風」終刊後の平成16年(2004)に「風港」創刊同人、平成20年(2008)第5回風港俳句賞受賞、平成21年(2009)「りいの」創刊同人。本句集は平成元年から26年までの26年間の作品を収録した第1句集である。 「風港」の千田一路主宰が序文を寄せている。 肩の雪ふり落としたる年賀客 鏡花の像めがねにかかる春の雪 校倉へ匂ふ大山蓮華かな 涼風を入れて細身の百済仏 手に掬ふ須磨の真砂や冬うらら 桐の花貨車に秩父の土載せて 緑さす救世観音の宝珠かな 緑さす二坪ほどの礼拝堂 風に乗るウインナーワルツ聖五月 母のもの一つ身につけ花を見に ちちははの墓にも雪の別れかな 南惠子さんの『花野の風』が、時宜を得て発刊の運びとなった。清新な注目の第一句集である。 惠子さんの作句活動を直接身近にしたのは、彼女が「風港」の創刊に同人参加してからだから、未だ十二年そこそこしか経っていない。にも拘らず、その存在感と作品の印象が強いのは、前誌「風」最終期の新鋭として培った写生に徹してのオーソドックスな句風と、個々の作品の完成度によるものであろう。(略) 積極かつ広汎な旅行吟に、惠子俳句の最も輝かしい特色があると言っていいようだ。 熱燗や言ひたい放題言はれをり 煤逃げの本屋めぐりをしてゐたり 雪をんな木の芽峠を越え来たり 巻軸をなす句である。どれも俳意に富んでいて微笑ましい。こうした飄逸な一面も、作家の厚みとして拓いているようである。もちろんオーソドックスな写生を第一義とすることは言うに及ばない。取り止めもない呟きに終始したようだが、成熟への更なる精進を希って筆を擱く。 千田主宰は、「広汎な旅行吟に、惠子俳句の最も輝かしい特色がある」と書かれているように、南惠子さんは、本句集の最初から果敢に旅をされている。ほぼ詞書きなしでその地名や旅先のものを巧みに詠み込み一句をなしているものも多い。 南惠子さんは、金沢に生まれ金沢に住み金沢で働いて来られた。俳句をはじめられたきっかけは、「とても忙しい職場に配属され、残業が続き、やっと普通の時間に帰宅できるようになった時、自由になった夜の時間を無駄にせず「何かやりたい」と思うようになったこと」と、お母さまが俳句をつくられていたことも大きい。「物心ついた頃、母は割烹着のポケットより紙を取り出して、よくメモを取っていました。それが俳句を作っている姿だったと知ったのは、私が俳句の世界に足を踏み入れてからでした」と「あとがき」に書かれている。 魞網を干すや伊吹に残る雪 早稲の風抜け織りかけの能登上布 牡蠣積みて家持の海行きかへり 昼顔や海鳴り届く風力計 初霞近江の国をつつみけり 天守より飛ばされてゆく夏帽子 遠雪崩大豆を水に浸しあり やはらかき芽吹きや滝を神として 瓦師の日永の屋根に置く馬穴 火落として三日の窯や残る虫 貰ひたる猫に名がつき春隣 叱られしあと鬼灯を吹き鳴らし 近江町釣り銭違へ十二月 七夕の袋小路に迷ひけり 角砂糖二個は過ぎたりスイートピー あたたかや赤子の胸へ聴診器 ほかほかのじやがいも吹くや昭和の日 ロザリオの柩に触るる寒さかな 金沢という古き良き伝統をもつ町に生まれ育った南惠子さんであるゆえだろうか、その血脈の中に伝統のもつ力を見抜くDNAをもつ。歴史や伝統を背負った地名や言葉の持つ力を俳句にたっぷりと生かして詠む。そして詠み方に無理がないからすっきりと人の心に届く。旅吟もまた日常詠のごときだ。 本句集の集名「花野の風」は、 呼ぶ声の花野の風にまぎれけり による。 秋の草花が一面に咲いているこの野の情景が、私は大好きです。花野の中にいたら、幼い頃の記憶がふと憶い起こされ、この句ができました。 と、「あとがき」にある。 装釘は君嶋真理子さん。 グラシン巻の瀟洒な出来上りをというのが、南惠子さんのご希望だった。 著者の南惠子さんはとても喜んでくださった。 畦道を足裏よろこぶ昭和の日 「昭和の日」が季語。4月29日で、もとは昭和天皇の誕生日。いまは「みどりの日」とも言う。ということをあらためて調べて知った。「昭和」という時代の輪郭が「平成」がすすむにつれだんだんと見えてくる。そうして懐かしく思ったりする。その懐かしさが足裏からやってきたのだ。土の匂いと柔らかさと長閑さをともなって。戦後生まれの「昭和人」にとって、昭和の日とはまさに土が近くに親しくあった幼い日々だ。ゆるぎない土への信頼、汚染されていない土の栄光、まさに幸せな平和な日々だ。 午後よりお客さまが見えられた。 5月に句集『星硯』を上梓された足立翠泉さん。 足立さんは、金子鴎亭門の書家である。 俳句は女学生の時に加藤かけいの下ではじめられた。 その後ご結婚などで中断するもふたたび始められ、書家としてお仕事をされているときに俳人の片山由美子さんの俳句に出会った。 そのご縁で、句集『星硯』は片山さんのご協力もあって上梓の運びとなったのである。 「読んでいただきたい方々の多くがすでに天国へ行ってしまわれて。。。天国へ行く郵便があったら送って欲しいと心から思います」と。
by fragie777
| 2016-06-23 20:35
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