ふらんす堂編集日記 By YAMAOKA Kimiko

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頬杖。

6月21日(火)夏至   旧暦5月17日

頬杖。_f0071480_17103264.jpg
スタッフの文己さんの机の上にさきほど立てられたもの。

なんだと思います。

実はこれ新式の「蠅取りリボン」。

ふらんす堂には最近よく小蠅が飛んでくる。
その対策として設置したのであるが、さて効果のほどは。
ちなみに「蠅取りリボン」は季語である。
「蝿取器」の傍題である。

 蝿取りリボン昼垂れて奥深き家     桂 信子






さて、新刊紹介をしたい。

上田りん句集『頰杖』。

頬杖。_f0071480_17110241.jpg
四六判ソフトカバー装小口折表紙。 244頁。

著者の上田りん(うえだ・りん)さんは、1957年東京生まれ、埼玉県三郷市在住。2006年「古志」入会、長谷川櫂の指導を受ける。2011年「椋」(石田郷子代表)に入会、2013年「古志」を退会し、現在は「椋」会員である。
本句集は2006年から2016年までの10年間の作品を収録した第1句集となる。
序文は石田郷子代表が寄せている。

なんといってもりんさんの作品の骨格をなすのは物に向かっての観察と把握、その上での感覚の閃きではなかろうか。 

 生きてゐる匂ひと思ふ春の川
 梅咲いて鏡の中にゐる如し
 秋扇刀の如く納めけり
 二つ三つ手にとり一つ撰るレモン
 遥かなる人差し指と赤とんぼ
 冬うらら布団叩きといふ悪友
 不意にまた大きく撥ねて雪の枝
 笑ひ声後ろ手に閉め雛の夜
 春の卓水輪のやうに皿を置き
 空がよく我慢してゐるゑのこ草
 きらきらとしてゐるところ冬の水

詠み方は様々だが、どの句も感覚の冴えを見せ、物の本質や実相に迫っていると思う。
題詠であれ、嘱目であれ、「もの」を確実に捉えてことばとして据える力をりんさんは持っている。
最後に生きとし生けるものへの、とっておきの応援歌を挙げたい。

 足元をよく見て歩け春の鴨

上田りんさんは私にとっては手強い作家であり続けるだろうが、この句のように、句集『頰杖』の作品は、どれも読者を微笑ませ勇気づけてくれるに違いない。

序文より抜粋して紹介した。

 頰杖や巣箱に鳥の入るまで

句集名となった作品である。
「巣箱」が季語である。わたしたちは頬杖をつく。ものを考えたりする時に、あるいは時間をもてあまし所在なかったりする時に、気づくと頬杖をついている。頬杖っていつのまにかついていることが多い。わたしもこのブログを書くとき、頬杖をつきながら(今もそう)書いている。ほとんどこの仕草は無意識である。1日に何べんくらい頬杖をつくだろう。
思うに二足歩行をはじめた人間の思考とともに頬杖もはじまったのではないだろうか。そういう意味では頬杖の起源もはるかに遡ることができる。上田りんさんは、頬杖をしながら鳥が巣箱に入っていくのを眺めている。鳥の営巣にゆったり立ち会おうというのだ。つまりは小さな命のいとなみである。あるいは人間は太古からそんな風に命のいとなみの前で頬杖を繰り返してきたのかもしれない。巣箱に鳥が入る時間は短いか長いかはわからない、すべては鳥次第である。鳥に自分の時間をあずけようというのだ。頬杖をして。「頬杖」という言葉がこの作者の世界への向き合い方を象徴している。作者の目は、怜悧な視線ではけっしてなく温かでしかも発見への驚きにみちた生き生きとした眼差しなのだ。

ほかに、

 熱の頰夜の蜜柑を押しあてて
 蜘蛛の子のまだ色のなき命かな
 背泳ぎの背に樹海のある如く
 星まつる人さやさやとありにけり
 我にもあらん田螺の道のやうなもの
 急がぬと決めて一日のひつじぐさ
 一日を金魚と無駄に過ごしけり
 るりとかげ悲しみたがる心かな
 草の実を採つて途方に暮れにけり
 霜の夜の鏡の我の近づき来
 山茶花のぐづぐづ咲いて人を待つ
 夏鴨の眠りのそばを吹かれゆく
 象の背にやさしき枯野ありにけり
 福寿草いつかではない今のため
 まなじりの水のやうなる雛かな
 人見知りしてゐるわたし花の雨
 さみだれや淋しきものとして中洲
 萩こぼれけり口紅を捨てにけり
 船長と名付けし冬の金魚かな
 柳絮飛ぶ西階段で会ひにけり
 兄神童われは河童や青胡桃
 新緑の水流れゆく伽藍かな

心に触れたことをきらりと結晶にする、そんな思いで俳句を作ってゆきたいと思います。

「あとがき」の言葉である。

本句集の装幀は和兎さん。
手触りのある質朴感を失わないように配慮した。

頬杖。_f0071480_17113268.jpg
頬杖。_f0071480_17114754.jpg
鳥は「椋鳥」であるという。
金箔押しだ。

頬杖。_f0071480_17123951.jpg
用紙はナチュラル感のあるもの。

頬杖。_f0071480_17124310.jpg
見返しも同じ用紙の斤量違い。

頬杖。_f0071480_17124824.jpg
扉。

頬杖。_f0071480_17125797.jpg
頬杖。_f0071480_17120287.jpg


頬杖。_f0071480_17122531.jpg


頬杖。_f0071480_17123583.jpg
頬杖。_f0071480_17121708.jpg
嫌味のない存在感のある句集となった。
飽きのこない一冊だ。こういう本がわたしは好き。

 不意にまた大きく撥ねて雪の枝

感覚の独特の冴えを感じさせる思い切った表現の多い作品のなかで、写生句として思わず立ち止まった一句である。さりげない表現だが、雪の枝の様をよく捉えていると思う。
多様な表現の抽出をもっている作者だと思った次第である。






今日は夏至である。

カレンダーを見ながら、「あらあ、今日は夏至なんだあ」って言うと、緑さんが、
「ということは、明日からまただんだんと夜が長くなっていくんですよねえ」ってちょっと淋しげに言う。
「ああ、そういうことよねえ」と夜更かしは大得意なyamaokaが答える。



 
 
 
 
 
 
 
 


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by fragie777 | 2016-06-21 19:54 | Comments(2)
Commented at 2016-06-22 15:26
ブログの持ち主だけに見える非公開コメントです。
Commented by fragie777 at 2016-06-22 23:14
玲玲さま

ありがとう。。

いま直しました。
まだ仕事場です。
家のパソコンが使えないのでたいへん。

これから帰りま~す。

(yamaoka)
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