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4月5日(火) 玄鳥至(つばめきたる) 横町の日 旧暦2月28日
今日は「横町の日」ですって。45ということで語呂合わせとのこと。 そして、1968年のこの日、第二次大戦後アメリカの施政下に置かれていた小笠原諸島を日本に返還する協定が締結された。という日でもあるとのこと。 昨日はお客さまが京都からお見えになった。 宇野恭子さん。 宇野さんは、俳誌「汀」(井上弘美主宰)に所属する俳人である。 第一句集の刊行へむけて、装丁の相談に見えられたのだった。 ご自身でも絵を描かれるという宇野恭子さんは、線描の挿画をもってご来社されたのだった。何冊かも句集をご覧になり、和兎さん装丁の白を基調としたブックデザインを気に入られたご様子。 「シンプルですっきりしたものを」というのがご本人のご希望だった。 宇野恭子さんは、昨年まで東京在住でおられたが、ご家庭の都合でご郷里の京都へ戻られたのだった。 「どのくらい東京にはおられたんですか」と伺うと「もう28年になります」ということ。 「これまでの人生の半分以上がすでに東京となりました。」と感慨深そうである。 石田波郷の作品との出会いが俳句との出合いだった。 「汀」はその波郷の師系につらなる結社である。 結社賞も昨年は受賞された。 第一句集も刊行される。 物静かな中にも強い志を感じさせる女性だ。 今後は郷里の京都で俳句の世界をいよいよ深めていかれるだろう。 新刊紹介をしたい。 文庫本サイズふらんす装 118ページ。 著者の利岡正人(としおか・まさと)さんは、1976年高知県生れ。 とだけ、略歴にある。 詩の作品を鑑賞するのに、作品以外の情報は基本的には入らないのではないかと思ったが、利岡さんにすこしメールで聞いてみた。こんなメールをいただいた。 これまで詩集はワニプロダクションから二冊、七月堂から二冊ずつ出させてもらっています 詩を書き始めたのは二十歳すぎからで、以来ドイツロマン主義の作品を好んで読んでいます 今回の詩集は情念によるよりも技術的であるよう心がけました ということで、今回は5冊目の詩集ということになる。 集名は「危うい夢」。 全体をパート3にわけ、多くの詩が見開きでおわり、50篇の作品が収録されている。 最初におかれた詩は、「夢の見方」。 さっそく紹介しよう。 夢の見方 ぼくは浅い眠りにつく 庭一面に降りそそぐ光を 全身に浴びながら ただ目覚めているだけでは まばゆさのなかに漂う 細かな塵までは見分けられずに 飛来してきたものに覆われる 瞼を閉じて 生い茂った草木と 降下物の夢を見ている この地表に新たな層を重ねようと だが長い時を経ても 堆肥にはなれない 光の屑に埋もれ 手つかずのぼくは総毛立っている パートⅡより一篇紹介したい。 敷居 おまえは敷居を磨け ぼくは忽然と姿を消す 足もとを曇らせる 忘れっぽいぼくが吸い込んだ 出入り自由な塵によって おまえの眼差しが つねに測り損ねる この顔からは 簡単に離脱できないが うつろな玄関を 開け放しにして待っていろ 詩集を進んでいくと、いたるところに夢が潜んでいる。「夢」がテーマだ。 降下物の夢 夢の破局 夢に巣くう 夢を蠢かそう 見通しの悪い夢 昨晩の夢 白昼夢 土足でみる夢 夢を寝かしつけ 古い夢 夢の包布は一夜漬け 夢見心地の子供 おまえに夢が潜り込んでいく 夢から目覚めたばかりの 夢の形跡 夢の時間の終わり 夢は消え失せた 夢遊病者のように 先ほどまで夢を 夢を構成しようと 落ち着きのない夢 かろうじて夢を 作品の中から、あるいは目次から「夢」を拾ってみた。 こうして夢を拾ってみても、この詩集を解読したことにはならいかもしれないが、面白い。 詩人の小笠原鳥類さんが、こんな感想を寄せてくださった。 表紙にカエルとトカゲ(のようなものの骨格)が小さく、あるので、 何かこれから禍々しいことが起こるんだろうなあと思いました。 実はこの本の詩を、どのように読めばよいのか、 まだわからないのですが、 難解というよりも、まとまることを拒絶しているのかなあ、と思ったりしました。 例えば「敷居」(52~53ページ)、 人が変化して建物になっているのかなあ、 「この顔からは/簡単に離脱できないが/ /うつろな玄関を/開け放しにして待っていろ」 うつろな空間が人間の中に広がるようで不安でした。 これまでにあまり読んだことがない感覚でした。 カエルとトカゲを配した装丁をしたのは和兎さん。 全体にすっきりと知的に仕上がった。 見返しは黒。 もう一篇詩を紹介したい。 沈思 もしも、原生林を進んでいく 深い眠りが可能なのだとしたら もはや後戻りはできない 足跡は深く埋もれる 誰の姿も反映させずに 鬱蒼とした木々から降り積もる 朽ち葉に覆われて ずっと横たわっていられるのに 道を失った 顔の喜びとともに 一冊を読み終えると、「危うい夢」と命名されたこの詩集の輪郭がほの見えてくるような気がする。。。 今朝、枝豆ご飯を炊いた。 さっそくお弁当にして持って来た。 ひじきの煮物と春菊のサラダと小さな焼き鮭と枝豆ご飯。 「おいしそうでしょ」とみんなに見せびらかしたら、 プッって笑われた。 「どうして?」と聞くと、詰め方があまりにも雑なんだって。 ひとつの入れ物にただぶち込んだっていう感じらしい。 (たしかに!) そういえば思い出した。 子供たちにかつてお弁当を作ってあげたときのこと。 学童保育の先生が、 「yamaokaさんのところは、お父さんがつくったお弁当のほうがはるかに美しいわね」と言っていたんだった。 だからお弁当はほとんど作らなかったの。 Pさんが、 「このお弁当を写真に撮ってアップしたらみんな笑いますよ」ですって。 ぜったいいやだ。 でもすごく美味しかった! それだけは言っておきたい。
by fragie777
| 2016-04-05 18:50
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Comments(2)
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オスカー
at 2016-04-05 20:12
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こんばんは。
素晴らしく素敵な詩集ですね! とても綺麗…白磁のような美しさというのか……もう語彙が乏しくて恥ずかしいですわ。夢分析とか心理学をかじった人とかがなまじ批評のをするよりも身体全体、五感をフル活用して味わいたい詩集だなぁなんて思いました。 近くの本屋が改装して、今まで結構なスペースがあった俳句や詩集のコーナーが縮小されてしまい、大人の塗り絵がたくさん置かれていました……以前気になっていた本がふらんす堂さんのだとわかり、よし!買おう!と思って張り切って行ったのでガッカリしました……他の本屋さんにいって買ってきますね。
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fragie777 at 2016-04-06 11:15
オスカーさま
有難うございます。 この詩集はとても美しくしかも知的に出来上がってわたしたちも気に言っています。 ふらんす堂の本を愛してくださって嬉しいです。 お言葉がどんなに励みになるか。 ありがとうございます。 (yamaoka)
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