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3月3日(木) 雛祭 立子忌 ふらんす堂創立記念日 旧暦1月25日 雛祭の今日はふらんす堂の創立記念日である。 と言うとなんだかものものしいが、yamaokaが「やるぜ」ってふらんす堂をはじめた日と言ったほうがわかりやすい。 今日でなんと29年を迎えた。 「来年は、30周年ということでなんかやりましょう」って今朝のミーティングで言ったのであるが、「きっとすぐ忘れてしまうからみんな覚えていて!」とわたしは申し渡したのだった。25周年も実は忘れてそのまま過ぎてしまったのだ。 写真のカードは、創立記念日をいつもきちんと覚えてくださっている深見けん二夫人の龍子さまからいただいたもの。 カードといっしょに魔法の袋があってそこから楽しいものやおいしいものが飛び出してきた。 わたしたちは「わあーっ!」って歓声をあげたのだった。 これはその一つ、 入っていたものは、 このブローチはふらんす堂でこのブローチをつけるのにふさわしい人の胸を飾っている。残念ながらわたしではない。 深見先生ご夫妻は、毎年毎年、こうしてお祝いをしてくださる。 そのお気持ちにわたしたちはとても励まされている。 遅くなってしまったが、新刊句集を紹介したい。 著者の間部美智子(まなべ・みちこ)さんは、昭和20年(1945)茨城県生れ。松戸市在住。平成9年(1997)に「夏日」に拠り望月百代主宰の下で俳句をはじめる。平成16年(2004)「夏日」同人、本句集は平成10年(1998)から平成26年(2014)までの作品を収録した第一句集である。カバーの装画と口絵をご自身の版画で飾った。 春一番ぶんぶんぶんと行きにけり 句集名となった一句である。 序文を寄せた望月百代主宰はこの句について「いかにも美智子さんらしい句で、楽天家でもある作者そのままの姿を彷彿とさせる、良い句集名となった。」と書かれている。 初蝶の生まれ吹かるるばかりかな 冬ざるる川は青空連れて行く せり出せる物干の影冬の川 忙中閑ありしやぼん玉飛ばさう 嫌はれて物腰高き彼岸花 女ざかり素足に鼻緒食ひ込めり 衿元の髪はねてをり薄暑かな 星月夜漢字の国に泊まるかな 蓮の実飛ぶ村へ渡して橋一本 望月百代主宰は、間部美智子さんの俳句を「人間観察が鋭く人事句に独特の目線があり」と解説し、その「目線の鋭さを」を指摘する。そして、 俳句も柔らかく時に鋭く、奥が深くなってきていることが喜ばしい。句集の所々に使われている作者の版画もよい味で、この句集をささえている。 今後「夏日」の作家としての活躍の場もますますひろがって行く事と思う。 個性を失わず、のびやかに進んで欲しいと願い、第一句集上梓の祝福とする。 あたたかなお祝いの言葉を寄せておられる。 レイアウトもこのようにして欲しい、という強いご本人の希望があった。 タイトルの「ぶんぶんぶん」といい、版画の世界の長閑さといい、見ているとたのしい気持になってくる。 梅干して夜空の夢を見てゐたる 春隣猫の真似する鴉来る 数へ日や厭とは云へぬ性なりし 晴女自慢してをり木の実落つ 蕗味噌を旨し旨しと嫁がざる 成るやうにしか成らぬこの世のぼたんの芽 沙羅落花すでに余生を歩みをり 「目線の鋭さ」を望月主宰に指摘される間部美智子さんであるが、どこか楽天家の体質のようで、それがこの句集をゆったりとしたものにしている。ある意味人生の大変さも充分味わっておられる著者だと思うのだが、それが暗さに向かわないでどこかのんびりとした逞しさとなる。きっと一緒にいて気持のいい方なんだろうなあって思う。何度かお電話でやりとりをしただけであるが、気どりのないさっぱりとした余計なことはおっしゃらない、感じのいい方だった。こちらの気持がギスギスしていても間部さんの傍にいるといつの間にかその気持がほぐされてくる、そんな方だ。 本句集には、ご自身の版画で飾った口絵が8ページほどある。そのうちの2点を紹介したい。 夫の停年後、申し訳ない事ですが「毎日が日曜日のように家にいられても」と友 人達と話していました。頭に浮んだのは夫が以前社内の俳句会に入っていた事でし た。そんな時公報に「俳句初心者講座」の募集があり、夫を外出させたい為に早速 覗く事にしました。 それが百代主宰との出会いであり、俳句との出合いでもありました。文学にまる で疎い私が訳もわからず入会する事になりました。 この度主宰より句集上梓のお話を頂戴致しましたが、句歴は長いもののまだまだ 未熟者です。 しかし主宰の「御主人のお元気なうちに、喜ばせてあげたら如何!」との思い遣 りのあるお言葉に、御迷惑をお掛けするのは承知の上で甘えさせて頂く事に致しま した。 主宰の「のびやかに自分史として俳句を作る」このお教えに今回改めて、句に悩 み句に癒されて来たその時の情景が思い浮んで納得致した次第です。 そして句集名を幾つかご提案頂きました。何故か漢字の強さに圧倒される中、そ こに「ぶんぶんぶん」、何かホッと和むものを感じ選ばせて頂いた次第です。又カ バーや本文の挿画を自作の版画でなさってはとお勧め頂き、人様にお見せ出来る様 な物では御座いませんが、折角のお計いなので使わせて頂く事に致しました。 「あとがき」の言葉である。最初は定年退職をされたご主人のためを思って俳句をすすめたはずなのに、いつの間にかご自身が俳句に夢中になっていってしまったという。そういう愛夫家(?)である間部美智子さんは当然ご主人のことを俳句に詠んでいる。そのうちのいくつかを紹介すると、 轡虫夫の繰り言聞いてをり 去年今年先に逝くなと夫の言ふ いわし雲異なる夢の夫と旅 こう申し上げては失礼かもしれないが、ここには老年夫婦のある典型があって、わたしはクスって笑ってしまう。(男ってこう言うよなあ、)そして妻は案外冷めていて別の夢を見ていたりする。そして、こんな句に出会って、ちょっとドキッとしたりするのだ。 ものの芽やまだ出し切れぬ自分流 表紙の装画。 どうでしょう。 この句集を見ていると楽しくなってきません? もう一度、この一句を。 春一番ぶんぶんぶんと行きにけり 誰にも文句を言わせない、そんな圧倒的な一句である。 「ぶんぶんぶん」ってどういうこと? なんて聞いてはいけません。 だから「ぶんぶんぶん」ですってば。 昨夕は、俳人の石寒太さんと田島健一さんが仙川にいらっしゃった。 田島健一さんがいよいよ句集を刊行されることになり、そのご相談に見えられたのだ。田島さんは、石寒太主宰「炎環」に所属し、中学生のときから俳句を学んできた。お父さまも「炎環」に所属されていて、「句会に出たら500円をあげる」という言葉につられて句会に出るようになり、今日に至ったということ。 田島健一さんは、まだまだ若いが、句歴はながい。 実はわたしは彼が中学生の時から知っている。 「炎環」の新年会などに招待されて伺うと、田島さんは「健ちゃん、健ちゃん」とみんなに可愛がられていた。 石寒太氏は、ずっとあたたかな目で彼を指導して来られたのだ。 「いい句集にしてあげてほしい」と、担当のPさんにおっしゃっていた。 わたしもあの可愛らしい中学生だった田島健一さんの句集をこうしてお作りすることになるとはと、けっこう感慨無量なものがある。 田島さんはいま、「現代詩手帖」(思潮社)で俳句月評を執筆担当しておられる。 昨夕は句集のことなどを話していてすっかり夜が更けてしまった。
by fragie777
| 2016-03-03 20:29
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