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12月24日(木) クリスマス・イブ 納めの地蔵 旧暦11月14日
![]() 銀行からの帰りに仙川商店街を歩いているとケンタッキーフライドチキンの店の前に長い行列ができている。 なんだろう。 大安売りでもしているのかしら?と歩きながらおもったその瞬間、今日はクリスマス・イブ!ということを思い出した。 みんな、美味しいケンタッキーフライドチキンを買って、お家で食べるんだ。クリスマス・ケーキと一緒にね。 クリスマス・イブということをすっかり忘れていたわが家は、今日はきりたんぽ鍋。 しかし、抜かりはない、大地の会で購入したシャンペンまがいのスパークリングワインが冷蔵庫に冷やしてある。 ブログを書き上げて早く帰ろう。 新刊紹介をしたい。 前北かおる句集『虹の島』(にじのしま)。 ![]() 著者の前北かおるさんは、昭和53年(1978)生れの37歳、本井英氏に俳句の手ほどきをうけ、学生時代は「慶大俳句」で学び、平成12年(2000)に俳誌「惜春」入会、平成19年(2007)年に退会し、その年に「夏潮」(本井英主宰)が創刊されると同時に入会、平成22年(2010)に第一回黒潮賞を受賞している。 本句集『虹の島」は、前句集『ラフマニノフ』に次ぐ第二句集となる。 虹の島年に何度も合歓の咲く 句集名となった作品である。虹の島とはハワイのことである。 ![]() 。第一句集『ラフマニノフ』から四年余り、二〇一〇年六月から二〇一四年七月までの俳句を収録した。前回、長男藤次郎の誕生を以て巻を閉じたので、本書はその後の成長記録とも言える。中でも、わが家の幸せの日々の象徴が、夫婦の結婚十周年、両親の結婚三十五周年を祝ったハワイ旅行だ。この旅を記念して、「虹の島」と題した。 「あとがき」にこう書き、、音を寄せて寄せて、とろけるように暢気に詠った会心作だ。という。確かにナ行がやわらかな響きを醸し出している。 著者の前北かおるさんは、現在慶應の志木高校で先生をされている。今回の句集は、学校の先生であることを十全に生かしての句集の編集となった。選句において高校の生徒たちの力を借りたのである。「あとがき」によると、まずは自選したものを前句集と同様に句仲間の杉原祐之さんに選んでもらい、今回は、慶應義塾志木高校の二年E組、F組の諸君の力を借りた。現代文Aの授業中、一ヶ月ほどかけて一二〇〇句弱を朗読し季題を指摘した上で、彼らに三〇〇句抄出してもらった。 このことを句稿を持参されたときに伺ったときは正直驚いた。言ってみれば俳句を作ったことのない生徒たちがほとんどである。それを無謀にも選句させるとは。。。。しかし、句集づくりに生徒たちを巻き込むことによって、俳句というものを学ばせようとしているさすがの教師意識というものをわたしは思ったのである。しかも身銭を切ってである。ある意味あっぱれな教育者かもしれない。 それを生徒と一緒に楽しんでおられるのだ。 このブログでは、約100人の男子生徒諸君がいかなる句を選び、それを良しとしたかを紹介していきたい。帯には「志木高生95人の選ぶ『虹の島』ベスト10が掲げられている。帯のコピーも生徒によるものだ。 紹介をしたい。ベスト1は、やはり句集名となった、 虹の島年に何度も合歓の咲く 51票 で、前北さんの会心作である。 ![]() あの大ベストセラー「ラフマニノフ」から4年……教師として、父として、若き俳諧師の挑戦、再び。 「木島健太・慶應志木高2年」とある。なかなか決まっているではないか。 それでは以下ベスト10まで紹介したい。 ![]() 2位 時雨忌の我在俗の俳諧師 32票 3位 織姫や翡翠となりて翔るべく 30票 3位 退院の荷物にそつと薔薇のせて 30票 5位 境内につむじ風立つ神無月 29票 5位 やつほーと声掛けられて笑ふ山 29票 7位 歯応へのとほりに歯形玉林檎 28票 7位 卒業や更に未来を疑はず 28票 7位 金環のあらはれそめて三日月 28票 7位 木の股に座り桜のふところに 28票 けっこう接戦であったことがわかる。 百人の後押しを得て句集を編めたことは、心強いし誇らしい。記して感謝申し上げる。と前北さんは「あとがき」に記している。 出来上がった句集は、選句の協力をしてくれた生徒たちへ一冊ずつ渡されるらしい。 渡されて喜ぶ生徒たちの顔が浮かんでくるようだ。 良き先生である。 ![]() ![]() ![]() 織姫や翡翠となりて翔るべく (七月七日 長女翠誕生) 翡翠というのは、沈思黙考の末、まっしぐらに飛ぶ鳥だ。何でも自分で考えて大胆に実行する人に育ってもらいたい。とは「あとがき」のことば。 ![]() ![]() 本句集は前回と同様すべてに前書がつき、どこの句会でつくったものか、分かるようになっている。これも一貫した前北さんのこだわりである。 あたたかや西の方より人来り 戦争のこと聞かさるる早稲田かな かまきりを覗く仲間に入れてもらふ 柊の花弁を反らし香るかな 水の皮一枚うごく枯蓮 ツタンカーメンの如くに梟は 患へる人の跣足に手が触れし 深く湧き青く湛ふる泉かな 水かけて旱の墓を輝かす 髪拭ひながらソファーへ居待月 瞼にのしかかりくる冬日かな あたらしき盛り土に呑まれゆく枯野 草枕電気毛布にくるまりて 蛇口より音なき水や淑気満つ 南より波押し寄する椿かな めいめいの蟻は銀河の星に似て 電線のずうんずうんと撓む梅 一切は腐りて甘し蟻の道 秋蝶の骨突き出づる翼かな テーブルに椅子に広げて干す水着 海亀や我に子宝親宝 敗荷やカプセルホテルラブホテル 銀杏散る中をぎんなん墜落す 山茶花の透きとほるまで水に浮く 自づから崩るる音や霜柱 戴きし女王の御名山笑ふ 青もまた炎の色や夏花壇 大西日街全体が傾いて 面白い句がたくさんある。写生を学んだ著者であるから写生句も当然ある。どこか視点がゆったりとして無理がなく、読む者にもそのおおらかさのようなものが伝わってくる。これはもう前北とおるという俳人の体質によるものだろう。こういう若い俳人がいるということもこれからの俳句の豊饒性を感じさせられてわたしは嬉しくなる。 義父と義母を同じ年に亡くされたという悲しみも詠まれている句集であるが、全体的には好日性の明るい光に満ちた句集だ。光を追い求める著者なのだろう。 俳句という定型に無理なくなじみそれを自身の呼吸のようにして日々を過ごしておられる作者だ。前北とおるさんの素直な心でとらえた作品が、まっすぐに読者に入ってくる。 俳句の方では、所属誌「夏潮」がこの十一月号で百号を迎える。毎月の句会、雑詠のサイクルが私の作句活動の基本であり、日々ご指導くださる本井英先生、ともに活動している会員諸氏に改めて感謝申し上げたい。 良き師、良き句友にも恵まれている著者である。 ![]() ![]() ![]() 装丁は和兎さん。 カバーに使用した写真は一枚だけだったが、実はほかにもいい写真があって、和兎さんのこころはいろいろと動いたようだ。 結局前北さんが選ばれたのが、このハワイの写真。 まさに「虹の島」だ。 残念ながらわたしはハワイに行ったことがないが。 きっといいところなんだろうなあ。 窓持たぬ路上生活冬ざるる かおる この句もまた面白い。 「家」ではなく「窓」なのである。 前北さんには窓が問題なのである。 そして、その窓は、光がさんさんと入ってくる窓でなくてはいけないのだ。
by fragie777
| 2015-12-24 20:38
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Comments(2)
この度はお世話になりました。
お陰さまで素敵な本になりました。 休み前に慌てて配りましたが、生徒の反応は上々でした。 求められてまずい字でサインをしたりもしました。
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前北かおるさま
こちらこそ有り難うございました。 生徒たちの反応が目に浮かぶようです。 生徒たちにとっては忘れられない思い出となるでしょう。 いますぐでなくても、俳句をつくる生徒が出てくると良いですね。 どうぞ、良いお年をお迎えくださいませ。 (yamaoka)
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