カテゴリ
以前の記事
最新のコメント
検索
画像一覧
|
9月30日(水) 居待月 旧暦8月18日
「白山吹の実なんですってよ」と友人のRさんが教えてくれた。 「もう9月も終りね。10月もあっという間よ、そしたらすぐに年賀状、忘年会の準備よ、いやになっちゃうわねえ」って言うと、 スタッフたちが一瞬ざわざわと波立った。 一年の早いこと。。。。 新刊紹介をしたい。 安里道子句集『折からの風』。 満帆のかたちにひらき水芭蕉 鷹羽狩行 安里道子(やすざと・みちこ)さんの第一句集によせた主宰の序句である。 安里道子さんは、1955年5月大阪生れ、1999年俳誌「狩」入会、2003年「狩」25周年大会賞受賞、2005年「狩」同人。本句集は平成11年(1999)から26年(2014)年までの338句を収録、帯文と「鑑賞三句」を鷹羽狩行主宰が、跋文を西宮舞さんが寄せている。 帯文と「鑑賞三句」より二句について紹介したい。 この星も手狭になりぬ蝿叩き 地球上のあちこちで紛争が絶えず、即刻その情報が世界に流れる。「蝿叩」が絶妙。 束にするほどにさみしき秋の草 春や夏の草花とちがって、秋の千草には派手やかさはない。しかし思わず手折りたくなる美しさがある。ようやく花束らしい数になってきたが、一、二本の時よりさみしい感じ。うすむらさきなどの淡い色ゆえか。「束にするほどにさみしき」が、秀逸。 「狩」の「大阪支部」で句座をともにする西宮舞さんは、年齢はほぼ同じだが安里さんの先輩にあたる俳人である。本句集に気持をこめた跋文を寄せられた。たくさんの句を引用して丁寧な鑑賞を施しておられるが、抜粋して紹介したい。 夏芝居腹切つてより長台詞 着ぶくれて天井桟敷に収まりぬ さはりだけさらふ鼓や暮早し 天瓜粉尻が笑つて逃げ出しぬ ソフトクリーム仕上げはつんとすましたる モナリザの笑みの揺るがず去年今年 古書店に不老不死の書秋暑し 微分積分幾何代数山眠る 根回しといふも鮨食ふだけのこと うまごやしより起き上がるヘッドホン 句集『折からの風』は実にバラエティに富んだ作品が収められていて読むものを飽きさせない。古典から現代までの振幅の広さが魅力で、さまざまな素材を臨場感に富む自在な表現力でお芝居を見ているかのように楽しませてくれる。これからもさらに幅を広げて佳句を生み出して行かれることだろうと心から楽しみにしている。 西宮舞さんの跋文には「作風の広さは道子さんの飽くなき好奇心と俳句へのいい意味での貪欲さによるものだろう。」とも書かれている。 闊達な作句精神を感じさせる句集だ。 ほかに、 商才もほどほどにありはうれん草 父さんのラジオ母さんの金魚玉 紙漉を終へ撫肩に戻りたる 大くさめして確かむる鼻の位置 言の葉を探しつつ踏む落葉かな 嫁がざる鏡台香水瓶並べ 着膨れてすつぽかされてゐたりけり 汗拭ひ営業マンの馴れ馴れし 幕間のごとくに木の実しぐれかな 二階へと追ひ立つるにも団扇かな 寝返りを打つや去年から今年へと ひと泳ぎしてこだはりのなくなりぬ スプリングよき椅子バレンタインの日 母は子へ星を手渡しクリスマス 古代朱の漆の椀や春の雪 返り花この世に何か問ふごとく ずるずると空の遠のく蟻地獄 月明や音するやうな砂時計 ウイットと諧謔精神に富む作者であり、日常の一こまをさりげなく俳句にしてみせる。自身に対するほどよいクールさを持ち、「女子力」を発揮するよりもどちらかというと「男前」のわたしの好きな女性のタイプとみた。当たってなかったらごめんなさい。「汗拭ひ」の句なんて思わず笑ってしまった。西宮さんが書かれているように「読む者を飽きさせ」ず、退屈しない句集である。 折からの風に誘はれ巣立鳥 街中に生まれ育った私は自然に触れる機会が少なく、生物の知識が乏しいことをいつも思い知らされますが、それだけに俳句で知る季語の世界は新鮮で、目を見張る思いをしながら学んでいます。(略) 『折からの風』の句集名は、この言葉に、気弱になりがちな私の背を押し、新しい広い世界を見せてくれた俳句との出会いを感じて付けました。これからも俳句の豊かな世界を力に、前向きな日々を送りたいと思います。 「あとがき」を抜粋して紹介した。 ブックデザインは君嶋真理子さん。 あまり句集らしくなく、というのがご本人のご意向だった。 グラシンを巻いてあるのでわかりにくいのだが、タイトルと図版の一部分には箔が押してある。手にとると分かる。 数式はノートをあふれ天の川 全体的に機知をきかせた句が多いなか、条理を超えているそんな一句とみた。 なにゆえにという問いをうけつけない、しかし面白い。 「天の川」が活き活きとしてくる。 以後、余談。 しかしである。←なにが「しかし」かよくわかんないけど。 「数式」という言葉はわたしから最も遠いところにあるものだ。 だって数学が苦手なんだもの。 いまだに数学が解けない夢をみて目がさめ、悲しくなる。 「数式(すうしき)」という言葉、なんという美しい響きなんだろう。 「数式」=繊細でスマートでそうそう人間に心をゆるさず孤高で上品で、近寄りがたいもの。 って、この解釈ちっとも数学的じゃないけどさ。 「数式」で世界を解こうとする人、 それもまた素敵だわあ。。。。
by fragie777
| 2015-09-30 19:26
|
Comments(4)
Commented
by
式神自然数
at 2020-05-30 16:30
x
≪…数学が解けない夢…≫は、
地の雲や カオスを映す 水たまり のようなモノ ”水たまり” にみる数学の世界 有田川町電子書籍 [もろはのつるぎ」 御講評をお願い致します。
1
Commented
by
fragie777 at 2020-05-31 09:57
Commented
by
mathnb
at 2020-05-31 16:50
x
Commented
by
カオス ⇔ コスモス
at 2020-06-01 11:57
x
時間軸の数直線が、『幻のマスキングテープ』に生る。
「かおすのくにのかたなかーど』 令和2年5月23日~6月7日 の間だけ 射水市大島絵本館で 『HHNI眺望』で観る自然数の絵本あり、 有田川町電子書籍 「もろはのつるぎ」 御講評をお願い致します。
|
ファン申請 |
||