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5月1日(金) 旧暦3月13日
とうとう5月となってしまった。 いっきょに夏めいてきた。 ジャケットを脱ぎ捨ててわたしは今日は白のTシャツ一枚で仕事をした。 ついこの間までは床暖房をつけていたのに。 明日からは5日間の連休となるわけだが、その前にどうしても校了にしなくてはならないものが二つあった。 わたしの担当のものとスタッフの千絵さんの担当のものである。 どうにか校了とすることができスタッフの緑さんの奮闘によって印刷屋さんに入れることができそうである。 一時はどうなることかと蒼くなったが、なんとか晴れ晴れした心で連休を迎えられそうである。 晴れ晴れしたこころね…… フフン…… どんだけ回りに迷惑をかけていることか、yamaokaは。 崖っぷちを生きる女として定着した感があるな…… 新刊紹介をしたい。 小野恵美子著『水原秋桜子 一句の風景』。 著者の小野恵美子(おの・えみこ)さんは、1942(昭和17年)東京・四ッ谷生まれ、生粋の江戸っ子である。水原秋櫻子に師事して俳句をはじめ、1997年「馬酔木賞」を受賞、「馬酔木」同人である。既刊句集は4冊、自註句集1冊、編著に『水原秋櫻子全句集索引』がある。きりっとした面差しのなかなか近寄りがたい雰囲気があるのだが、ひとたび秋櫻子のことを語りだすとそれはそれは仕合せそうな笑顔になるお方である。 この度の一書は、水原秋櫻子の俳句を120句抄出し、それに200字ほどの鑑賞を加えたものである。 執筆に際しては今まで世上に取上げられることの少なかった句を対象の中心とすることによって、また別な「水原秋櫻子」を表すことが出来たらと願った。 と「あとがき」にあるように、ここには人口に膾炙した秋櫻子の句はほとんどない。へえー、こんな句もあったのか、という発見がある一書だ。 たとえば、 明大の勝てよ南風吹く旗の下 『浮葉抄』昭和十一年作 秋櫻子は東大の医学部を卒業している。なにゆえ明大を応援しているのだろうか。 著者はこう書いている。 明治対法政の野球試合。既に明治の優勝は決っていたが予想外の熱戦となった。スタンドには観客が犇きネット裏には校旗がはためいている。青空に歓声が谺する。期待に胸躍らせて階段を登る作者の姿が窺われる。石田波郷は昭和七年に上京、翌々年明大入学「馬醉木」の編集に携わる。この時にはすでに中退していたが明治贔屓なのは愛弟子が在籍していたからだとは藤田湘子の言である。 おもしろい。そうなのかと、思う。この句の背後には弟子・石田波郷の姿がありまた藤田湘子の顔も浮かんでくる。 秋櫻子というあたたかな人間像も彷彿としてくる。 ほかの句の館賞で、秋櫻子は、高校時代は野球部に所属し、大学野球、社会人野球、草野球、プロ野球などなど野球について俳句を詠んでいるとあるが、よっぽどの野球好きだったのだろう。 今日たまたま小野恵美子さんと電話でその話しになったのだが、秋櫻子は、かつての「西鉄ライオンズ」が好きだったという。わたしは思わず、「ああ、いいですねえ、かの稲尾の西鉄ですね!」と申し上げたところ、「そう!」って小野さんの嬉しそうなお声。「西鉄」をすぐ分かっちゃうってわたしもけっこう古いな。 ほかの句も紹介したい。 みづうみをこえくる雨や初蕨 『新樹』昭和八年作 「馬醉木」には「蘆の湖を」となっているがそれでは平凡な吟行句に過ぎない。上五を変えたことによって普遍性が生れた。湖のかなたから明るい細やかな春の雨脚がみるみるこちら側に近づいてくる。萌え出たばかりの足許の蕨の綿毛が露を含んで揺れている。帽子が濡れるのも厭わず作者はそれを眺めている。八十余年前の作だが印象鮮明でありみずみずしさは少しも失われていない。 どう推敲された句であるか、ながく秋櫻子の作品を研究してきた弟子でこその鑑賞となる。 本書は、秋櫻子の作品を編年体形式で館賞収録しておらず、季節順となっている。巻末には季語別索引と初句索引を付けて秋櫻子研究の資料としても役立つものである。 なによりも知られざる一句に出会う楽しさがあり、また秋櫻子という著名な俳人の新しい一面を知ることもできるのがいい。 一句の背後にあるもの、それはテクストの読みだけでは決してわからないものだ。秋櫻子という俳人の弟子であるが故に見いだせたもの、あるいは導かれたものがある。そんな発見に充ちた一書とも言える。 装幀は和兎さん。 午後におふたりお客さまがあった。 「昌平寺門信徒会」の20周年記念誌のことでのご相談にいらしたのだった。 信徒の方から原稿をいただき、「20周年」の記念事業の一環として記念誌を製作しようという予定がおありになるという。 なにゆえふらんす堂、って思われますでしょう。 そこはご縁があるのです。 まずご紹介くださったのが信徒のお一人である小泉洋一さん。 小泉さんは、ふらんす堂より二冊の句集『夏座敷』『あらっ』を上梓されている俳人だ。 そして深見けん二氏もまた昌平寺の信徒のお一人であるということ。 お客さまの浅上勝敏さんと縄田脩さんは、昌平寺にて深見けん二氏指導の句会に参加され俳句をつくられているとも。 浅上さんは深見けん二句集『菫濃く』を持ってのご来社である。 台割やレイアウトなどについておふたりともとても熱心で、わたしは思わず刷り取りをひろげていろいろと説明をさせていただいたのだった。 「仙川ってこんなに賑やかなところなんですか?!」と浅上さんは本当に驚いた様子だった。 わたしはいかに仙川が暮らしやすいところであるか、思わず力をこめて語ってしまった。 わたし、すぐ仙川自慢をしちゃうのよね。
by fragie777
| 2015-05-01 19:37
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