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3月16日(月) 菜虫蝶化(なむしちょうとなる) 旧暦1月26日
仕事をしていておよそ3分ほど意識をうしなった。 意識が戻ったときどこにいるのか一瞬わからなかった。 「いま、意識失っていた……」と言うと、 「ふふふ、わかってましたよ」とスタッフ。 ようするに3分ほどかたまって寝ていたということなんだけど。 春は眠りの季節ですねえ…… 新刊というか新装版の紹介をしたい。 1999年5月に刊行した宇野久光さんの句集『いやしの力』をこの度新装版『癒しの力』として刊行した。著者の宇野氏のご希望によるものである。 著者の宇野久光さんは、医師の仕事をしながら時間のゆるす限りにおいて作句をしておられた。それを一冊にまとめられたのが、本句集『癒しの力』である。タイトルの「癒しの力」とは、初版本のあとがきに述べられているのでそれを紹介したい。 我流で俳句を始めて早十年が過ぎました。この間外国留学をしていた期間など、何度か中断の時がありましたが、新聞雑誌等に自分の句が掲載されるのが嬉しくて、作句を続けることができました。仕事柄決まった一定時間を持つことが出来ず、結社や句会などで自分の句を見てもらうような機会がない私には、投句が唯一自分の作ったものが他人に分かって貰えるかどうかの客観的判断の目安でした。本業の医学論文がなかなか進まないときなど、選の巻頭にとりあげられたりすると素直に喜びました。俳句は、それを読むことも作ることも私にとっては、まことに幾重にも「癒しの力」をもったものでした。(略)また、精神的に平安な日々を送ることが少なかった私には、俳句により、空と地の自然、生きとし生けるもの一木一草に至るまでと交歓できたような気分になったりしました。 激務の仕事にあっていかに「俳句」によって癒やされているかがわかる「あとがき」である。 この初版本には、いまは亡き草間時彦氏が序文と帯文を寄せている。 宇野久光さんから句集の原稿を送られたとき、一読して私はその二百句には輝きがあると感じた。この人は俳人としての天分を持っている人だ、その俳句には読者を感動させるひらめきがあると思った。 初蝶の光運びし雨あがり 俳人としての宇野氏は、自然を詠むに際しては優れた感性を示す。天から与えられた才能の所有者なのである。 生愛(かな)しICUの夜長かな 医師としての宇野氏は、自然詩人としての作品とは別に、医師としての責務をどう詠うかを考えることもあるだろう。 序文の一部と帯文を紹介した。 寝ころべばおのれとなりて花の雲 通勤に独語増えたる霜の道 もぞもぞと馬刺かみおり梅雨の入り 炎昼やタイヤのチューブ水に浸け こびりつく鱗の寒さ秤皿(はかりざら) 暖炉燃え診察室の訛(なまり)かな 休日の身を確かめし初の鵙 三寒に四温といえど癌病棟 大夕焼け浴びて癒しの力とす くちなしの香につき当たり夜の帰宅 ここには紹介しなかったが、句集を読み進むと患者さんについてのきびしい状況なども詠まれていて読むのがつらく、医師であることのしんどさも伝わってくる。 俳句のように感性で造るものは、その年齢に特有な感受性があり、稚拙な句が多いといえども、現在の私が失った感性もあり、私自身のセルフ・アイデンティティにもなる。 「新装版」についての「あとがき」を紹介した。 じつは本句集には各見出しの中扉にペン書きの挿絵がある。 挿絵の横にM・Nとあり初版本では、どなたによるものかの説明がいっさいなかった。 今回はその方についても「あとがき」で触れられている。 初版で各章のはじめの挿絵にあるM・N氏のお名前を入れなかったのは、ご本人が癌治療中であり、プライバシーのことも考えご本人とも相談の上、イニシャルだけにした。他界され一四年経った。この度新装版を出版するにあたって、ご遺族の了解を経て、本名の野戸美晴さんのお名前をここに記させていただく。 その野戸美晴さんの挿絵を何枚か紹介したい。(もっとたくさん紹介したいのだが、) 野戸さんが私の外来を受診されたのは、三〇代になったばかりの乳癌術後二年目で、既に全身に乳癌が再発転移していた。造血幹細胞移植併用による大量抗がん剤治療法で、一旦は寛解状態に入った。その後再々発したとき、あと数年長生きするより、与えられた時間を悔いのないように生きますと、治療を拒否された。結局五年間存命されたが、ある朝お母様から電話があり、愛する人に見守られて娘が自宅で息を引き取りましたとのお電話を頂いた。お母様の言葉を借りれば「娘は短い人生を完全燃焼しました」とのことであった。 この挿絵ひとつひとつに生への祈りが籠められているようだ。 いまはもう亡くなられてしまった野戸美晴さんの魂にふれる思いがする。 最近わたしの自律神経がぶち壊れているような気がすんの。 胃がおかしいって思うとホントに胃がおかしくなったり、頭が痛いって思うとホントに頭が痛くなったり、眠れないっていうと全然眠れなかったり、でもね、胃や頭のことは仕事などに夢中になっているとすっかり忘れてしまう。 自律神経はわたしの身体に変な命令を発してわたしはてんてこ舞いをしてしまうっていうのが、このところのyamaokaである。 きっとそれが春眠の原因かもね。 そんなことありません?
by fragie777
| 2015-03-16 19:07
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Comments(4)
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蓬
at 2015-03-17 09:55
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句も挿絵も素敵な句集ですね。手に取ってみたくなりました。
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fragie777 at 2015-03-17 14:55
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yasu
at 2019-12-05 14:34
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何気に野戸美晴と検索してみたら御サイトにたどり着きました。野戸さんに再び会えた気がしてとてもうれしくなりました。私は野戸さんの友人です。 会わせてくださいましてありがとうございます。
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fragie777 at 2019-12-05 16:02
yasuさま
コメントをありがとうございます。 そうでしたか。 わたしも今懐かしい思い出この日のブログを読んでおります。 月日が経つのは早いものです。 野戸美晴さんにお会いしたかったです。 (yamaoka)
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