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1月22日(木) 旧暦12月3日
![]() この日ほんとうに空が青かった。 「たいへんです! クロネコヤマトのメール便が廃止になるようです」 たった今スタッフの千絵さんが叫んだ。 「う、うそでしょ!」とわたし。 「ああ、前々からそんなこと言われていたかも……」と言いながらPさんはクロネコヤマトのホームページで確認しようとした。 「おおダメだ、アクセスが殺到している!」 もしそれが事実であるとしたら、これは困ったことである。 ふらんす堂よりの配送物のほとんどはメール便もしくは宅急便である。 メール便をつかわないこと日はないくらいである。 クロネコヤマトとはふらんす堂は一生を誓い合ったと言っても過言ではないくらい強い縁で結ばれているのだ。じつはこれまで何度かS川急便よりイケメンのお兄さんがやってきて口説かれたのであるが、けっして心を動かさなかった殊勝なyamaokaである。 それなのに…… くくうっ、 最愛の男に裏切られた気分。 さて、気分をとりなおして新刊紹介をしたい。 露木まもる遺句集『更衣』(ころもがえ)。 ![]() 私家版として刊行されたこの句集の著者露木まもるさんは、もうこの世にいない。一昨年の2013年1月15日に亡くなっている。この度の句集は奥さまの露木はな子さんがご主人の意志を継いで刊行されたものである。露木まもるさんは、昭和2年(1927)11月15日に町田市に生まれ、その町田市の一角で広大な田畑を耕しながら一生を終えた人である。俳句結社は「風土」「河」「白露」を経て「郭公」同人。平成11年(1999)に第一句集『恩田川』を上梓、本来ならこの遺句集は生前の第二句集となるはずだった。 この土地に生まれて老いぬ冷し酒 まもる 水打つて日本の国のほか知らず 〃 来し方を遠しと思ふ冬欅 〃 句集『更衣』は、夫露木まもるの前句集『恩田川』(平成十一年刊)につづく第二句集です。 夫は晩年、前立腺癌を病み、通院のかたわら俳句をつくりつづけました。この度の句集『更衣』は、俳誌「風土」「白露」「河」「郭公」に投句し、発表した作品より自選したものです。しかし、はからずも遺句集となってしまいました。 私の手元には、夫が上梓すべくきちんと編集した第二句集の句稿が残されました。 夫の意思をついでここに遺句集『更衣』を上梓させていただきます。 お読みいただければ幸いです。 はな子夫人によって書かれた「あとがき」に代えてを紹介した。 句集をとおして読んでいくとすでに死を覚悟しているのではないか、と思わせられるそんな俳句に出合う。 しかし貫くものはあくまで土にまみれて生きた人間の清澄な叙情性である。 八方へ声とぶ野焼はじめかな ゆく春の触れてつめたき手術痕 草刈機本気の音となつてきし 炎天を柩のごとく貨車通る 着ぶくれて土着の声をはばからず 灰捨てに出て麦踏をしてをりぬ 羽抜鶏見つめあふこと避けてをり 走り根を跨いで通る風邪心地 禿山のやうな明るさ鏡餅 春霜や痛み走れる手術痕 じやがいもの花摘む駐在巡査かな 青蜥蜴遊びたさうな眼をしたり 研ぎあげし庖丁包む無月かな 木も石も雪をかむれば仏なり 樹に人にうしろ姿の十二月 句集の前半の部分から紹介したが、農作業をするかたわら著者のこころにはつねに溢れるばかりの詩情が湛えられている、著者をとりまく四時の自然に詩心はさらに熟成されていくかのようである。 下駄箱に居据る冬を掃き出しぬ 麦踏みし夜は足裏より酔ひにけり 樹に寄れば樹も寄りて来る星月夜 左義長に闇のしりぞく相模灘 手から手へ赤子受取りあたたかし 牛に掌を舐められてゐる夜涼かな 山笑ふノーネクタイが板につき 草取つて取つて晩年うべなへり 星月夜明日とは仮りの日なりけり 稲妻に心見られしかと思ふ 露の野をつなぐ露けき橋一つ 野を焼きし夜は星粒の降るごとし ひひなにも笛吹く十指ありにけり 稲架解いて野を星空へ明け渡す 地に還るものに声あり翁の忌 言ひ残すこと何もなし聖五月 沖を行く船のまぶしき冷奴 介護士の靴音虫の夜なりけり 来し方を遠しと思ふ冬欅 この「冬欅」の句が掉尾に置かれた一句である。最後まで澄んだ目で自然と呼応する自身の生を詠みきった俳人だったと思う。集中前書きのある句がたった一句ある。 「飯田龍太先生逝く」 告別やどこか脆くて春の雲 深く師を崇拝していたのだろうと思う。 逝くときのことを心に更衣 「更衣」という句集名はきっとこの句によるものなのだろう。 この句集の装丁は、君嶋真理子さん。 はな子夫人のご希望をうかがいならのデザインとなった。 ![]() ![]() ![]() ![]() ![]() ![]() ![]() ![]() ![]() ![]() 渋いが荘重な出来上りとなった。 土に生きた人の素朴さを失わないようにと心がけた。 担当の千絵さんは、 電源を切られしごとく銀杏散る 「電源が切れて一気に落ちてきた銀杏の葉がとてもきれいに思えました。表現もとても面白いと思ったので印象に残っています。句集を作られる際に奥様とお目にかかりました。ご自宅には大きな銀杏の木があるとおっしゃっられ、そのイメージからカバーもお選び頂きましたので、露木様のイメージに合う句でもあるのかな、と思いました。」 読み終えると作者の清冽な詩情はわたしたちを浄化してくれるようだ。 と同時に どこかさびしい風がこころを吹き抜けてゆく。 また元の一人となりて落葉焚く 今日の「増殖する歳時記」は、三宅やよいさんによって榮猿丸句集『点滅』より。 雪の教室壁一面に習字の雪 榮 猿丸 校庭一面に降り積もった雪、体育館も渡り廊下の屋根も雪で覆われている。人いきれで曇った窓を手で拭って見ると普段の学校とは全然違う景色が広がっている。そして、教室の後ろの壁一面には生徒たちが習字の課題で書いた「雪」が黒々と張り出されている。40枚近く連続した「雪」「雪」「雪」の文字が様々な書きぶりで踊っているのだ。生徒たちでにぎわう教室より、授業が終わって閑散とした薄暗い教室で降る雪と壁面いっぱいに張り出されている「雪」に囲まれている情景を想像するとより印象的で、映画のワンシーンのようだ。「雪の教室」という出だしと結語の「習字の雪」というリズムも響きも良くて一読忘れがたい句である。『点滅』(2013)所収。 東京はこれから雪がきっと降る。 立春をすぎて春になったころから降り始めて、そして 雪が降るたびに暖かくなっていく。 そうやって東京の雪を経験してきたのね。 これからなのよ、油断がならないのは。。。。
by fragie777
| 2015-01-22 19:21
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