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12月18日(木)
![]() ほんとうに寒い。 ヒートテックシャツの上に極暖のヒートテックシャツを重ね、背中に大きなホッカイロ、腰には小さなホッカイロを貼ってわたしは今仕事をしている。 午前中は指さきが冷たくて仕方なかったけれど、夕方ころになってやっと指のさきもあったかくなってきた。 スタッフが言うところの「バームクーヘンのような」天気図が、日本の各地で異常気象をもたらしている。 雪災害でおおくのひとが苦しまなければよいのだけれど。 新刊を紹介したい。 安藤まさみ詩集『ルイス・キャロルのように』(るいすきゃろるのように)。 ![]() 著者の安藤まさみさんは、1937年台湾生まれ。名古屋市在住の詩人である。この詩集は第五詩集となる。前詩集『七月の猫』(2011年ふらんす堂刊)では、「中日詩賞新人賞」を受賞されている。タイトルとなった「ルイスキャロルのように」は集中の一篇の詩のタイトルであり、それを詩集名とした。 著者の安藤まさみさんご自身のことを申しあげると、前詩集と今回の詩集の身辺の大きな違いは最愛のご夫君を亡くされたことであろう。前回の詩集の制作にあたってもそのデータ作業などご主人が大きくかかわっておられたのだが、刊行後まもなく亡くなられたのだった。そういう意味からいってもこの度の詩集は、大切な人を失った喪失感が通奏低音のように詩の作品の底をながれている。と同時に自身もまた老いと死を引き受けるものの一人としての心象をことばに託している。ときには詩人の視線はまた若く瑞々しい命へと向けられる。この地球上で血脈をつないでいく若き生命体だ。 遠い声 子供たちが家に戻りたがったのです いっしょに遊びながら 若いお父さんがいう あの朝 何もわからなくて 避難先にたどりつき二時間 マスクもしないで外に立たせていた それがとても心配です 落葉をかき集め ビニール袋に詰めて 裏においてあります でもその下の土も汚染されているのです 一日中線量計が手放せない 小さな森のように きびしい寒さから家を守ってくれた 木々も切らなければならない 数値が高いのです バンに乗せられ学校から帰った二人の子が むき出しになった庭に下りる よわよわしい午後の陽が地面を這い 子供たちの沈黙が痛々しい 若いお父さんのしずかに抑えた声 子供たちの声 冬がちかい 福島で (小さな森はどこへいったの お父さん) 二〇一二年十一月 巻末に「おわりに」と題した「あとがき」がある。たいへん興味深い一文だ。 最近読んだボルヘスの『創造者』の中の「エピローグ」の一節が強く心に残っている。 一人の人間が世界を描くという仕事をもくろむ。長い歳月をかけて、地方、王国、山岳、内海、船、島、魚、部屋、器具、星、馬、人などのイメージで空間を埋める。しかし、死の直前に気付く、その忍耐づよい 線の迷路は彼自身の顔をなぞっているのだと。 私もまた自分の顔をなぞるようにして詩を書いてきた。自分のなかに深く降りていくことで何かを表現できるのではないか。そう考え、疑うことはなかった。 他にも方法があるのだろうか。新しい詩集を編みながら、迷路はなおも続く。ともあれこの詩集を老いゆくこころの一つの軌跡として読んでいただければ幸いである。 「自分の顔をなぞるようにして詩を書いてきた」と言い、「老いゆくこころの一つの軌跡として読んでいただきたい」とある。 担当の千絵さんが好きだという詩をもう一編紹介したい。 一期一会 その子はとても静かに 隣りにすわった 水色のリュックから数冊の本をとりだすと ぱらぱらめくりはじめた 青いスタンプが押してある わたしの行く図書館とおなじだ どこからくるの ひらばりから 二週間にいちどね ううん 一週間だよ 頁をめくりながら訂正する そうか 子供は読むのがはやいから 何年生かしら 二年生 ちょっと小さいかな地下鉄でやってくる 本がすきな男の子 (あなたのおかあさん きっとすてきなおかあさんね その後ろに笑顔のおとうさんも立っている) さようなら さようなら 電車は明かりをつけたまま 暗いトンネルにすい込まれていった 何日もたってからふいに思いだした 星の王子さまに似てる 首のかしげかたまで この詩集の装丁は和兎さん。 「ルイス・キャロル」とは、もちろんかの「不思議の国のアリス」の著者である。 和兎さん、張り切っていろんなラフを著者のために作った。それは面白いものもたくさんあったのだが、選んでいただくのは一案である。 安藤さんはこの装丁を選ばれたのだった。 ![]() ![]() ![]() ![]() ![]() ![]() ![]() ![]() ![]() 落葉の道をいく ひとりの少女 口をきゅっとひきしめ うつむきがちに たしかな足どりで―― 秋深く立ちつくすひとの眼差しの遙かむこうへ 帯に書かれたことばである。 わたしは最後の詩がとても面白かった。「クレアへの手紙」と題した詩で、ウラジミール・ナボコフ著『セバスチャン・ナイトの真実の生涯』という本を読んで、そこに登場するクレア(セバスチャン・ナイトの恋人)という女性に感銘を受けて書かれたものだ。クレアにあてた手紙、という形式の散文詩だ。わたしは、このナボコフの小説は読んでいないが、それでもこの一編の詩は十分面白く、この一書を読んでみたいと思ったほどだ。 詩の一行のみを引用しておこう。 「彼女は想像力─それは魂の筋力なのだが─をもっていた」とナボコフは書いている。 今日の毎日新聞の坪内稔典さんによる「季語刻々」は、亀割潔句集『斉唱』より。 てのひらに低き丘あり枯木星 亀割 潔 季語「枯木星」は枯れ木ごしに光る星。水原秋桜子の「枯木星またたきいでし又一つ」が枯木星の風情をよく表現しているだろう。近景の枯れ木、遠景の星の取り合わせが、冬の夜空を鮮明な風景画にする。今日の句は近景にてのひらの丘がある。てのひらにある隆起を丘のようだと思い、ふと目をあがると枯木星が光っていたのだ。 寒い夜空は星がとてもきれいだ。 星がきれいにみえるから寒くても許してあげる、 そんな気持にさせられる。 これから帰るのだけど、今夜はどうかなあ。 寒くて、星が見えなかったら、 許さない………。 ぞ。………
by fragie777
| 2014-12-18 19:07
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