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10月10日(金)
今日は支払い日であるので、銀行や郵便局へ行く日である。 ひと通り用事を済ませたあと、わたしはひそかに仙川探索をした。 (スタッフたちは「ふらんす堂通信」編集中でおおわらわだと言うのに……ゴメン) いままで入ったことのない商店街裏の路地に踏み込んだ。 へえー、あのお店の裏ってこんなになってたんだ。 興味津々である。 で、素晴らしいことにこんな風に野良猫たちがわたしを待ち構えていた。 ![]() ![]() ![]() かくしてわたしの仙川探検はあたらしい野良猫たちとの出会いをもたらしたのだった。 さて、新刊紹介をしたい。 福神規子句集『人は旅人』(ひとはたびびと)。 ![]() 著者の福神規子(ふくじん・のりこ)さんは、俳誌「ホトトギス」(稲畑汀子主宰)「惜春」(高田風人子主宰)「若葉」(鈴木貞雄主宰)の同人、「惜春」「若葉」では編集に携わっておられる。この度の『人は旅人』は、前句集『薔薇の午後』に次ぐ第三句集となる。「白のシリーズ」の一環として刊行。栞は藤本美和子さんが寄せておられる。 タイトルの「人は旅人」は、 さりながら人は旅人山法師 に拠る。「あとがき」で著者は、この命名についてこのように書く。 、人の命は長いようにみえても、何十億年という地球の営みを思えば、たかだか星のまたたきほどの瞬時にすぎないでしょう。その瞬時を人は生き、さらに命は次の世代へと繰り返し受け継がれてゆきます。そんな短い時を人はあたかも旅人のように、この地球という星に住まうのです。そう考えると与えられた生を精一杯受け止めて生きてゆこうとあらたな感慨を抱きます。そんな思いを込めて、「さりながら人は旅人山法師」の一句に因み、句集名を「人は旅人」と致しました。 栞の藤本美和子さんは、。「山法師」の純白は規子さんの志を象徴する色として輝いている。一方では「日々旅にして旅を栖とす」という芭蕉の理想とする境地、なども思われる。と書き、この一句にこめた著者の思いを掬いあげる。 「山法師」はわたしも好きな夏の花だが、この「山法師」がいい。山法師によって旅人に新鮮な息が吹き込まれた。旅に疲れた旅人ではなく顔をきっぱりとあげて正面を見据える清新な旅人だ。 反故を焼く遅日の庭に夫とゐて 若かつた仲が良かつた水中花 九十の父の暮しや金魚玉 小春日の母の小さなお針箱 ふくらんできて鶯の鳴きにけり ふくろふに鼻筋といふもののある 里の灯のひとつひとつに秋の来し ほほづきの稜うつくしき通り雨 「ふくらんできて」と捉えた「鶯」の声のありよう。ふくろふの顔に発見した「鼻筋」。「鶯」や「ふくろふ」の姿がいきいきと立ち上がる。そして眼に見えぬはずのものがありありと見えてくるのである。(略) それぞれの「灯」に秋の訪れを確信した「安心(あんじん)」。「ほほづき」の形容は「稜」と認識されることで、そのあるがままの美しさを際立たせている。「素の心」は「素の眼」となり、対象の最も大切な部分を掬いあげているのである。 「素の眼 素の心」と題して、藤本美和子さんは、著者の俳句に対する自然体に注目する。高校生のときに俳句に出合った福神規子は句歴四十年余になるという。夫や父母を詠むときの、あるいは動物を詠むときの素の心は、対象にくい込む「素の眼」となる。 木の芽空魚に戻りたくなりし 遠足のつまらなさうな子が一人 花吹雪泣きたくなれば目をつむり またたびの葉のちらちらすひらひらす 月見草ひと震ひして開きけり 思ひ出したくて落葉を踏んでをり ひとつづつ夜のはくれんの浮かみたる おしまひの線香花火の匂ひが好き 寒の月泣けない時もありにけり 掃きためし椿の上の落椿 わたしらしくゐられるときのすみれ草 蘭鋳の鱗をこぼしつつ病める 秋口の人としづかにすれちがふ 鳳仙花むかし赤チンよく塗りし ままごとにかあさんがゐて草の花 言へぬこと言はぬこと秋深みけり 祈りたくなりし赤き実十二月 玉葱を剝くや肩書なくてよい 夕涼み子の三つ編みをほぐしやり クローバや手の冷ゆる日は母恋し 散つてゐて咲いてゐて山茶花の頃 著者の福神さんは少女時代から今日まで「ホトトギス」で俳句をつくられて来たそのおおらかな良さがある。定型に対して構えがなくきわめて自然体のよろしさがわたしには魅力的だ。この無理のなさは一朝一夕で出来上がるものではなく、環境と俳句という詩形がもたらす不思議な力だ。詩形を組み伏せようとするのでなくそこにすべてをゆだねることによって俳句が応えるもの、そういう俳句の恩恵にあずかれる人はきっと誰でもということではないのだろう、そんなことを『人は旅人』を読んで思った。 この星の一瞬の旅人である著者は、「遠きもの」に心が引かれる。 獏の目のこの世に遠し春の泥 遠のけば山茱萸の黄の鄙びけり 暮れてきし椿が遠くなりにけり 遠雷や君亡きことのふとよぎり 秋日傘すこし遠くを見て歩く 最近、若い頃には理解できなかった凡な日々のありがたさを実感するようになりました。そして凡な中に潜む、ともすると見過ごしてしまいそうな非凡な造化の妙味を、静かに丁寧に味わい、その感動を自分にふさわしい言葉で、出来るだけ平明に表現してゆこうと思いはじめました。 「あとがき」より引用した。 静かな闘志を思わせることばだ。 装丁は和兎さん。 「旅かばん」を装画としてあしらった。 色は秋に刊行されるので「秋の旅情」風に。 ![]() ![]() ![]() ![]() ![]() ![]() ![]() 次の一句。 還らざるものの一つに冬の蝶 一瞬の生を生きる人間にとってすべてはとどまることなく過ぎ去っていく。 この「冬の蝶」はやがての自画像とも思えた。 たおやかに生きる著者の覚悟とも。 それゆえ「冬の蝶」はいっそうに美しい。 好きな一句だ。 大型台風が近づいているという。 13日のイベントが心配である。 どうぞ台風が日本列島を大きくそれてくれますように。
by fragie777
| 2014-10-10 20:25
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