カテゴリ
以前の記事
最新のコメント
検索
画像一覧
|
9月18日(木)
そばで見ると華やかさのある花だが…… すこし前に詩集『流れもせんで、在るだけの川』を上梓された若尾儀武さんが、新聞などに掲載された詩集評を送ってくださった。 抜粋して紹介したい。 まずは京都新聞の河津聖恵さんによる「詩歌の本棚」より。 若尾儀武『流れもせんで、在るだけの川』(ふらんす堂)は、少年期における故郷奈良での、在日朝鮮人との交感と断絶の記憶を、詩の柔らかな息遣いの中から蘇らせる。今六十代の作者は、半世紀前の痛苦にやっと詩の命を吹き込むことができた。社会の靄の奥に消えた歳月の果てに言葉の先に照らし出され、詩という時空で出会い直した。 神奈川新聞の柴田千晶さんによる時評より。 真白い表紙に文字が空押しされている。存在を消しながらもくっきりとその存在を主張している。墨の乗らない文字が美しい。空押しされた詩集のタイトルは「流れもせんで、在るだけの川」若尾儀武(藤沢市在住)の第1詩集である。若尾が18歳まで過ごした奈良県大和郡山市の農村部。そこに暮らす異郷の人々の姿を、若尾は50年後の今、詩の中でよみがえらせた。 神戸新聞の細見和之さんによる詩集評より。 著者は1946年生まれ。奈良県大和郡山で18歳まで育った。身近に接していた在日朝鮮人の友人や家族の記憶を、50年ぶりに振り返っている。 本詩集より一篇作品を紹介したい。 地図 卒業間近 きみは廊下のすれ違いざまに何重にもたたんだ紙片をぼくに渡した 手書きの地図だった 終点に「わたしんち」と小さく書いてあった 分かった 行くと目配せして その日 ぼくらはいつもより無口でいた きみの地図 迷おうにも迷いようがないほどに分かりやすかった ところがどうしたことか 橋を越えたあたりからあやしくなった 見知らぬ鳥が飛来し 道はぬかるんで 鳥にしろ ぬかるみにしろ 昨日きょうのこととは思えず 何かしらそのこと自体が意味帯びて 結局あの日 ぼくはきみが印した「わたしんち」に辿りつけなかった 地図に間違いがあったとは思わない ぼくはぼくで道筋を逸れていたとは思わない なかったんだよ 地図にはあっても 橋のむこうには きみの地図 今もぼくの手元にある ぼくは市販の詳細地図と引き比べ それを辿ってみるが 何度歩いても橋を越えたあたりからなんとはなしにずれていく そしてきみが印した「わたしんち」は いくら探しても地図の風景にはない きみが自慢した朝鮮ツツジの色濃い紅も その花影すら残していない 地球儀を回せば埃のように飛んで消えて 何がなくなったのかいい当てられないほどの それでも残る 消えても在るきみの「わたしんち」 地図をかすかに風が吹いている その若尾儀武さんが50年前に住んでいらした奈良県の大和郡山市のすぐ近くにお住まいの詩人浅井眞人さんがお仕事のついでと言ってふらんす堂に立ち寄ってくださった。 浅井眞人さんも今年の4月にふらんす堂より詩集『仁王と月』を上梓されたばかりだ。浅井さんは、奈良という地にひそむ異界のものたちをテーマに物語性のある詩の作品を生み出した。そこには今まで書かれたことのない世界があり生き生きとした躍動感に充ちていた。 うかがえばすでに新しい構想のもとに詩を書き溜めておられるという。 室生寺があるところがお仕事場であるという浅井さんは、奈良の寺や仏像については本当におくわしい。 奈良の仏像や寺は好きでよく行く。 ついついそのお話をうかがうことになる。 11月後半は、室生寺は紅葉がとても美しいということ、蹴鞠の催しもあるということ。 時間をつくって是非に行きたいとおもっている。 詩集『仁王と月』より、二篇紹介したい。 壱拾壱 硯(すずり)のうみにあぶくがでていた 月が 信号(しぐなる)を送ってきたのだ 仁王は 池に大きな石を三つ投げて あぶくをつくった 明け方 月はふたつに割れて なにかを野原に落とした 仁王が受け止めに行くと それは 花ざかりの躑躅(つつじ)の古木だった 弐拾参 仁王は 不二の山の煙が 絶えそうなので見にいった 擂鉢(すりばち)を伏せたような山は 煤けていた 嶺をまわると 髷(まげ)に 海が入った ほそぼそと立ちのぼる 不老不死の煙を 眉に入れて帰った だれにも 言うことなく 大和の国 室生寺の金堂の梁に彫られた薬壺(くすりつぼ)にいれておいた 午後はお仕事があるということで早々にお帰りになられたのだった。 今日はこれから映画のレイトショーを観に行く予定。 これから急いで夕ご飯をたべて、それから車でひとはしりして行くのね。 ずいぶん熱心って言われそうだけど、娯楽映画よ。 そういう肩のこらない映画は気分転換にとてもいいのだ。 レイトショーを見るにふさわしい秋の夜長である。 で、ブログを早めにアップします。
by fragie777
| 2014-09-18 18:21
|
Comments(0)
|
ファン申請 |
||