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9月11日(木)
![]() コピー機のところにあり、わたしはコピーをしながらこの風景をぼんやりと見ていることがある。 赤い屋根はレストランなかむらの屋根。ときどき猫が寝にくる。 その先のおおきな建物は手芸店なかやの4階建てのビル。 今日わたしはいったい何枚のコピーをしただろう。A4判のものを80枚余。 複合機であるから、パソコンからの印刷にしてA4判が270枚余。 スキャン機能ファックス機能もついているから、ファックスのたび、スキャンのたびこの窓にいくたびも立った。 わたしにとってはすっかりなじみとなった窓辺である。 わたしはこの風景を気に入っている。 この窓を前にして仕事場の風景を背にしているとふっと解放されるように感じる一瞬がある。 それが好き。 夕暮れ近くなるとこの窓はわたしたちの姿を映しだす。 日々何度でもこの窓に立つわたしの心をひょっとしたらこの窓は知っているかもしれない。 50回のうち一度くらいにみせるわたしの嘆きの顔もこの窓は知っているのだ。 (生きていればね、わたしのように能天気な人間でも嘆くことはおおいにあるのよ。) 窓に椅る 庭のひがしのはこやなぎ くだちて雨のおとせはし 窓に身をよすものおもひ 秋の虫さへ灯をしたふ 軒窓 蘇軾 東隣多白楊 夜作雨声急 牕下独無眠 秋蟲見燈入 これは中国の詩人・蘇軾(そしょく)の「軒窓」というタイトルの漢詩である。 ふらんす堂より刊行された漢詩和訳『故園の扉』から紹介した。 この一書はもう品切れになっている。1997年に刊行され、いまは亡き俳人で俳文学者の小室善弘氏によるものである。帯に、 李白、杜甫、王維など中国の詩人22人と、良寛、漱石の漢詩が、流麗な日本語に移され、漢詩の風韻と訳詩のやわらかな調べが、美しくひびきあう。現代に蘇える漢詩の世界。 とある。 実は、句集のレイアウトについて参考になるものはないかと、資料棚をあさっていたところこの本に呼び止められたのだ。まさに呼び止められたというほかはない。わたしのこころがすっかり忘れていた一書である。ぱらぱらと中身をめくっていくと、編集していたときには気づかなかった詩のことばがたちあがってきたのだ。 あらためて、良い本だな……と思った。 新書版のフランス装でよみやすいものだ。 著者の小室善弘氏がこの本にこめた思いがいまさらながら押し寄せてくるような思いがしたのだった。 (わたしはその思いに十分応えることができたろうか……) こんなことをおもってしまうのは、 やはり秋という季節のゆえだろうか……。 今日はわたしの家の夕飯は「さんま」。 新しい冷蔵庫で「さんま」が三匹横たわっている。 寄り道をしないで、まっすぐさんまを目指すつもり。
by fragie777
| 2014-09-11 18:38
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Comments(2)
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小室善弘先生は高校時代の担任で、古典と現代国語を教えていただきました。漢詩を日本語に置き換えることも授業で習い、拙い自身の訳詩?は、もう40年以上経った今も手元に残っています。4年前に俳句を始めて、先生が優れた俳人でいらしたことを知って驚くと同時に、そのように素晴らしい先生に教えていただいていたことを誇りに思いました。
今日こちらで先生のお名前を拝見して懐かしく嬉しくなり、コメントさせていただいた次第です。
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蓬さま
コメントを有り難うございます。 そうだったのですか。 静かな情熱のある方でいらっしゃいました。 何度かご来社をくださいましたが、もっともっとお話をうかがっておけばよかったと今さらながら悔やまれます。 『故園の扉』は漢詩入門書としてもすぐれたものです。 この一冊をいま傍らにおいて仕事をしております。 俳句をはじめられたこと、どうぞがんばって続けてくださいませ。 そしていつかふらんす堂より句集を刊行してくださいませ。 (yamaoka)
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