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5月26日(月)
![]() 名前はわからないが、旅先で出会った虫である。 といってもすごい速さで姿をくらました。 わたしの前に現れたものはおっと思うと、こうして写真にとってしまうんだ。 だからうかつにわたしの前に現れるとヤバイわよ、 肖像権を主張できない生きとし生けるものたちよ…… 今日の毎日新聞の酒井佐忠氏による「詩歌の森へ」は「田中裕明賞」と題して、田中裕明賞についてだ。 全文を引用したい。 田中裕明賞(ふらんす堂主催)も今年で5回目となった。俳句に伝統詩としての新鮮な詩性を求め45歳で早世した田中裕明をしのび、また俳句の未来を切り開く新星の登場を願って賞が創設された。今年は、すでにこの欄でとりあげた榮猿丸句集『点滅』(ふらんす堂)と西村麒麟の『鶉』(私家版)。榮は1968年生まれ、小澤實に師事して俳誌「澤」編集長も務めた。西村は長谷川櫂に師事し「古志」同人。83年生まれでぐんと若い。「俳句を始めたのは学生時代の終わりごろ。いつの間にか歳月が過ぎ去ったことに驚く。今日と同じ日は無いということを、私は俳句に教えられた」というのは、昨年の受賞者、津川絵理子。時間意識と俳句の関係をとらえて印象的だ。また榮が「クールな文体とスピード感が魅力だ」と俳句との出会いを語るとき、俳句という詩型が新たな姿で現代の若者をとらえていることに気づく。第1回は高柳克弘、第2回は該当者なく第3回は関悦史と受賞者は次代を背負う新鋭として活躍している。〈ビニル傘ビニル失せたり春の浜(榮)〈島の秋覗けば何かゐる海に〉(西村)今年の二人の句は実に対照的だ。榮が日常生活の何でもない素材に目を向けることで切なさを表現すれば、西村は緩やかな文体でむしろ古典的な心情を描く。詳細はふらんす堂ホームページでわかる。 新刊句集を紹介したい。 橋本久美句集『菖蒲葺く』(しょうぶふく) ![]() 著者の橋本久美(はしもと・ひさみ)さんは、俳誌「屋根」(斎藤夏風主宰)と俳誌「花鳥来」(深見けん二主宰)に所属、この度の句集『菖蒲葺く』は、平成2年から平成25年までのおよそ442句を納める。序句を深見けん二氏、序文を斎藤夏風氏が寄せている。 ![]() 遠山をともども眺め春の風 深見けん二 橋本久美さんは私の住む練馬区大泉学園町に居を同じくしている俳人である。作風は写生を基本とする伝統派だ。知り合って二十五年、途絶えることなく交流してきた。歩くと二キロはある距離、大抵は久美さんが拙宅近くの喫茶店に脚を伸ばして来てくれる。そして延々たる俳句談義、何とも至福の刻だ。終って久美さんは句材収集、場所はいまだ残る畑や草木豊かな大泉中央公園。本書でもこれらからの作品が何句もある。言ってみれば俳句独特の集団、「連衆」の感覚に近いものが私達の間には出来ている様にも思われる。 久美さんの人柄は温和で人懐こい。句づくりは熱心な現場立ちを主体にして丁寧に仕上げてゆく作家だ。 斎藤夏風氏の序文のことばであるが、「現場立ちを主体にして丁寧に仕上げてゆく作家」であるということはこの句集をよめばよくわかる。斎藤夏風氏が紹介している作品をいくつかあがてみる。 ひとつことおもふ落花のしきりなる 空壜を笛のごと吹き夏終る 相撲草曳きてむかしの掌の匂ひ 水遊びせし子の見えず玩具浮く 青揚羽日照りの石に移りけり 今日の月水面にありて稚魚迅し 遅桜親しき人を眩しめる 干梅を裏返しては山の影 菠薐草ひらひら畦の雪固く 草清水掬ひて遠き父のこゑ 南大門灯を消してより鹿のこゑ 涼しさや小千谷縮の機の音 一人子の旅立ちし夜の鰯雲 水温む父にしばらく会はざりし 産み月の子の湯上りの柚の香かな 草餅の濡れて野州の父の墓 写生の目に貫かれた締まった文体の作品が並ぶ。作品に内在するハギレのいいリズム感は気持ちがいい。 久美さんは私と同年齢、昭和ひと桁のしぶとく生き続ける世代だ。体力も句力も横溢している。第一、先述したようにまだ詠み残しているものもある。命の美の追求とは限りなく楽しく果しないものだ。今後どの様な美しさを句の中に広げてくれるか期待したい。とは、やはり斎藤夏風氏の橋本久美さんへのあたたかなエールのことばである。以下すこし収録句を紹介したい。 かげろふの墓より人の立ちにけり 旅立ちの娘のゆさゆさと髪洗ふ 御神輿のぐらぐら鈴を縛りけり 花片をつけて帰りぬ夜の鏡 あぢさゐに触れ又墓にふれてみる 枯蓮の同じ日向にまた一人 肩少し上げて六区へマスクかな こほろぎの昼や大佛次郎館 紅梅の右の木見れば右の濃く 貝殻を洗ふ仕事や男梅雨 秋草のひろびろ一人づつ立てる 草青む水一すぢを跨ぎても 長き夜や星座の中に子と遊び 一艘に父と子のこゑ春の水 ひとひらは日によく靡き白菖蒲 俳句の道を歩き出したきっかけは、退職の数年前、勤務地が都心から郊外に移り、自然の美に触れる機会が多くなり心が動いたことによる。新聞に投句することからはじめ、会社勤めの終了とともに平成五年、斎藤夏風主宰の「屋根」に入会した。しかし、句会の要領がわからず、深見けん二先生指導のカルチャーセンターに入り勉強し、すぐ、「屋根」の吟行例会に参加した。平成六年には、けん二主宰の「花鳥来」にも入会。現在まで、「屋根」「花鳥来」「カルチャーセンター」の句会での作句を継続してきた。これまで夏風主宰とけん二主宰両先生の指導を受けることができたのは、偶然とはいえまことに幸せなことである。(略)句集名は、集中の〈菖蒲葺く白木祠に水の耀り〉による。富士宮の浅間大社夏風主宰と少人数の仲間で行ったとき、池の辺りの祠に葺かれた菖蒲のみどりと澄み切った御霊水の美しさを見た。その感動をいつまでも持ち続けたいと思い名付けた。これからも、季題を中心とする写生句につき、日常の嘱目吟、吟行の景を踏まえた題詠、旅での即吟を続けたいと思っている。 「あとがき」の言葉より抜粋した。 装丁は君嶋真理子さん。あとがきに書かれた「池の辺りの祠に葺かれた菖蒲のみどり」の雰囲気を出すことに苦労してもらった結果、うまくその雰囲気が出たのではなかろうか。著者の橋本久美さんもとても気に入ってくださった。 ![]() 緑が印象的である。 ![]() ![]() ![]() 表情のある紙をわかっていただきたい。表紙は見えないものであるが、カバーをはずせば本体の顔となるものだ。だから大切。 ![]() ![]() ![]() ![]() この句集の担当は千絵さん。 売る人も買ふ人も手に新茶の香 「お茶屋さんにお茶を買いに行くと、すごくいい香りがしていつも素敵に感じているのですが、この句からも新茶の香りが感じられるような気がしまし た。 橋本様はいろいろな場所へお出かけになられた句などが多いですが、こうした街中の風景も目に浮かぶように描かれていてとても素敵だと思いました。」と千絵さん。 二階まで百合の香りてひとりかな わたしはこの句が目にとまった。「百合の香り」は結構強烈でどちらかというと苦手であるが、こうして書かれた字面の「百合の香」はどこかエレガントな趣がある。橋本さんは男性であるが、この句は美しい(百合のようなと言ったらいいすぎか)女性がアンニュイな孤独をかこっているような雰囲気があって絵になる風景だ。「ひとりかな」とあえて言うことによって百合の香をまとった心情が伝わってくるような……。 今日の午後は、お客さまがふたりお見えになった。 俳誌「秋麗」を主宰されている藤田直子さんと編集長の田沢健次郎さんである。 田沢さんが「秋麗」に創刊時より書き続けてこられた連載「緑陰通信」を一冊にすべくご相談に見えられたのだ。もと朝日新聞の記者であられた田沢健次郎さんのこの連載は創刊当時から好評でファンが多い。 これまでの新聞記者としての経験をあたたかな視線と爽やかな文体で書き続けてこられたのである。田沢さんは含羞の方であるので藤田直子さんがときどき助け舟を出してくださるのがありがたい。 ![]() 俳誌「秋麗」も今年の10月号で5周年をむかえられるという。 11月にはそのお祝いの会を予定しておられるとのこと。 おめでとうございます、と申し上げると 「お祝いの会といっても、うちうちのささやかな会なんです」と言ってにっこりされた藤田直子さんだった。
by fragie777
| 2014-05-26 20:15
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