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4月16日(水)
第48回蛇笏賞に深見けん二先生の句集『菫濃く』が、受賞されたというお知らせをもらったとき、ふらんす堂はスタッフたちの歓声と拍手で沸き返った。 小さく清楚な句集『菫濃く』 ではあるが、作品の充実度は高い。平明にして風格があり余情がある。 一片の雲にかげりし桜かな 浅間山昨日の雪を昼霞 夕雲になほある茜盆の月 衣被なかなかうまく齢とれず 秋風や大きくなりし蟻地獄 北上川(きたかみ)のあふるるばかり田植かな 睡蓮や水をあまさず咲きわたり 黙々と畑の夫婦つばくらめ しやがむより金魚掬ひの目となりし とんぼうの空へと一つ蜂飛んで 餅を焼く網より下へふくれもし 地震のことどこか心に青き踏む たんぽぽやかき消えし日の甦り 人生の輝いてゐる夏帽子 飛び過ぎぬ燕のやうな黒揚羽 一つ置く湯呑の影の夜長かな その人のかけがへのなし梅の花 菫濃く下安松に住み旧りし 初蝶のしばらく水に映りけり 手に受くる落花一片師の言葉 仰ぎゐる頬の輝くさくらかな スプーンもくもるばかりや夏料理 何句か紹介したが、読み応えのある一冊だ。まだ読んでない方は是非に買って読んでいただきたい一冊である。 深見けん二先生、ご受賞おめでとうございます。 ふらんす堂スタッフ一同、心よりお祝いを申し上げます。 (きゃあ~、うれしいぜえ)←これはわたしの内心の声。 最近わたしもいい歳になりつつあるゆえに涙腺がもろくなって、深見先生のお声を聞くと涙ぐんでしまう。さっきもお電話でお話をしたのだけれど……。(喜びの涙っていうこともあるけど、それだけじゃないよ、感無量というべきか、大人の涙なのよ。) 第48回蛇笏賞は、高野ムツオ氏の句集『萬の翅』(KADOKAWA刊)も受賞された。こちらは、読売文学賞、小野市詩歌文学賞につづいてのトリプル受賞となる。これも素晴らしいことである。 第48回超空賞は、玉井清弘氏の歌集『屋嶋』(角川書店刊)。 ご受賞された高野ムツオさま、玉井清弘さま、おめでとうございます。 心よりお祝いを申し上げます。 昨日の「増殖する歳時記」は、土肥あき子さんによって、岩田ふみ子句集『文鳥』(私家版)より。 しがみつく子猫胸よりはがすなり 一年前、里親募集をしていたお宅で保護されていたのは三毛と白黒の姉妹。350gばかりの仔猫をかわるがわる抱き上げてもふわふわと頼りなく、ひしとしがみつく姿は猫というより虫をつまんでいるようだった。まるで「このまま連れていって」と言っているような健気な風情になんともいえない哀愁があり、二匹のうち一匹だけを選ぶことなどできず、結局両方貰い受けることになった。猫姉妹はさっさと大人になり、一年でおよそ10倍に成長した。遊び相手がいつでも身近にいるので、それほど人間に甘えてこないところが少しさみしくもあるが、大人だけの暮らしのスパイスとなっているのはたしかだ。仔猫がまだ目が開く前から高いところへと登ろうとする習性は、かつて木の上で生活していた頃の安全地帯が記憶に刷り込まれているためだという。長い歴史のなかで生き残ってきた動物たちの知恵が小さな猫にも活かされているのだ。掲句の仔猫にもどうか必要とされる家族が見つかりますように。『文鳥』(2014)所収。 たしか作者の岩田ふみ子さんは、猫ではなく文鳥を飼われていたと思う。猫を飼いたくても、きっと文鳥のことを考えて猫を胸よりはがしたのであろう。切ない思いをしながら……。 しかし「はがす」というのは本当にそうである。バリバリとでも音がしそうなくらい子猫の爪は着ているものに食らいついてくる。この力、すなわち生きる力、なのだ。 わたしたちも子猫のようにもっともっと他者に食らいつこうよ。 ええっ!! 何のためにって? もち、 生きるためだよ。。。。。
by fragie777
| 2014-04-16 19:47
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Comments(2)
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