ふらんす堂編集日記 By YAMAOKA Kimiko

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ともに生きるものとして……

2月7日(金)

ともに生きるものとして……_f0071480_17262946.jpg
迎春花。


週末はふたたび寒くなり雪が降るそうである。
東京も予報では30センチ近くになるということ。
これなら立派な雪だるまができるな……
わたしは雪だるまなどには決して関わらず、出かけなくてもいいように買い出しをしておいて家のなかで潜んでいるようにしよう。
部屋をあったかくして猫たちとごろごろとしているのも悪くない。
ただしである。
実はこの冬油断していたら3キロほど太ってしまったので、ダイエットにも励まなくてはならない。
一日2食にしてだらだらとしているか……


ともに生きるものとして……_f0071480_17524261.jpg何度も刊行の問い合わせをいただいた奥坂まや著『鳥獣の一句』が、とうとう出来上がった。2012年にふらんす堂ホームページで連載をしたもので好評を博したものである。
表題のごとく俳句に詠まれた「鳥」や「獣」を紹介し鑑賞を加えたものである。
いくつか紹介したい。
いまの二月で今年の干支の馬の句はないだろうか。
あった!!

 生き急ぐ馬のどのゆめも馬  攝津幸彦

野生の馬はけっして生き急がない。馬を急きたてているのは私たち人間だ。競走馬に仕立て上げ、競り合わせる。スポーツ・オブ・キングスなどという麗々しい名の下で、二、三歳でデビュー、わずか四、五年で引退。レースの最中に骨折すれば、直ちに処分されてしまう。運よく種馬になれたとしても、交配は人工的に行なわれる。馬と馬との自由な恋は、見果てぬ夢に終わる。切ない。(『鳥屋』)無季

1996年に49歳で亡くなった攝津幸彦さんの作品だと思うと、はたしてこれは攝津さん自らを詠んだ句ではないか……。切なくて不思議な感触のある句だ。

担当のPさんが好きだというものを紹介したい。

 雪たのしわれにたてがみあればなほ  桂 信子

作者の変身の夢の対象は、どのような動物だろうか? 思い浮かぶのは馬とライオンだが、他にも鬣狼も居る。しかし狼とは言い条、狐に近く、あまりカッコ良くない。私は獅子と思いたい。霏々と降りかかる雪の中、ナルニア国の偉大なる王アスランのように、白金のたてがみを輝かせ、楽しげに咆哮する獅子。八〇歳を過ぎての作であることに、心を動かされる。(『草影』)季語=雪(冬)

奥坂まやさんの鑑賞にあるように、80歳を過ぎてからの作と思うとやはり桂信子すごい!と思う。誰だ!家でゴロゴロしてようなどと言っていたのは。
この一書には沢山の名句が収録されていて驚く。多くを紹介したいところであるが、ふたたび干支にちなんで「馬」を詠んだもののみを紹介したい。
 
 騎馬始怒濤の端を行きにけり       山田径子
 馬もまた歯より衰ふ雪へ雪        宇佐美魚目
 雄(を)の馬のかぐろき股間わらび萌ゆ  成田千空
 夕暮の欲望へ馬濡れてたつ        鈴木六林男
 来世には天馬になれよ登山馬       鷹羽狩行
 青高原わが変身の裸馬逃げよ       西東三鬼
 炎昼の馬に向いて梳(くしけず)る    澁谷 道
 汗の馬なほ汗をかくしづかなり      八田木枯
 秋の馬水にかこまれゐて寧し       大木あまり
 嘶(いなな)きに秋の白波たゞ遥か    中岡毅雄
 霧を出て馬の容(かたち)にかへりけり  角谷昌子
 白馬を少女瀆れて下りにけむ       西東三鬼
 馬と神のみ白萩の原にあり        阿部みどり女
 遠方とは馬のすべてでありにけり     阿部完市
 秋風や石積んだ馬の動かざる       阿部みどり女
 はるかな嘶(いなな)き一本の橅を抱き  三橋鷹女
 桐の実の鳴れり覆面の競走馬       横山白虹
 昭和衰へ馬の音する夕かな        三橋敏雄
 凩や馬現れて海の上           松澤 昭
 馬の目に雪ふり湾をひたぬらす      佐藤鬼房
 
さまざまな馬が目の前をよぎっていく。俳句という詩形がいかに大きく豊かな世界を持ち得るか、この作品群を読んだだけでもわかる。
奥坂まやさんの選句と鑑賞の力が見事に結晶した一書である。
奥坂まや著『鳥獣の一句』は、単なる入門書にとどまらない重厚な一冊となった。

幼い頃、動物園と動物図鑑・昆虫図鑑は私の夢の宇宙でした。地球という星に溢れている、かくも多彩な命の在りようを目にするたび、心がふるえました。その後、夫が教えてくれたバード・ウォッチングを通じて、鳥たちも私の賛美の対象に加わりました。(略) 偶然の機会から俳句を始めてみたら、そこには私が感じていた、生きとし生ける物みな平等の世界、「草木国土悉皆成仏」の宇宙観が、ごく当たり前のこととして浸透していたのです。「一日一句」の連載のお話があった時、迷わず「鳥獣の一句」を希望しました。束の間をこの星に生きて、いずれ滅んでいく仲間としての鳥・獣たちを親しく詠んだ作品を集めてみたかったのです。中には、幻想の生物や、山や海をも生命体として感じている作品も取り上げました。この本が、鳥や動物に一層の関心を持っていただける機会になれば幸いです。

奥坂まやさんの「あとがき」からのことばである。


「第五回田中裕明賞」の応募句集が揃った。今年は昨年より多く十句集となった。
今年度も充実した句集が揃ったのではないだろうか。
選考会は五月である。
選考委員の皆さま、よろしくお願いいたします。

第4回田中裕明賞の冊子は鋭意編集中です。042.gif
もう少しお待ちくださいませ。
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by fragie777 | 2014-02-07 19:13 | Comments(0)


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