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2月1日(土)
どうやらおそれていた花粉症ではなく風邪を引いてしまったらしい。 午前中に仕事場のちかくにあるかかりつけの病院に行って診察してもらい、薬をもらってきた。 お昼に恵方巻きをクイーンズ伊勢丹で買って大きな口をあけてがぶりと平らげ、風邪薬をのんだ。処方箋にあるごとく、やはり眠くなってきた。夕方の方がいっそう眠くなってきたのだが、ともかくもブログを書いてしまおう。 新刊紹介をしたい。 三方正子句集『仙櫻』(せんおう)。 著者の三方正子さん(みかたまさこさん)は、平成4年に俳句をはじめその後、「朝日カルチャーセンター俳句講座」で飴山實氏の指導をうけ、飴山氏亡きあとはおなじく「朝日カルチャーセンター俳句講座」にて友岡子郷氏の指導をうけて現在に至っておられる。この句集は友岡子郷氏よりの紹介でふらんす堂より刊行された。 遠蛙母としみじみ地震のこと 鹿除けの網一村を包みけり 人形筆守り継ぐ媼小鳥来る 野火の炎の残りてゐたる裾野かな 漕艇のしづかに迅し春の川 田に畑に人ゐて目高孵りけり 七曲り辿り来たりて山法師 母寝ねて闇のひろがる端居かな この家もむらさきしきぶしろしきぶ 室花抱き昔住みたる家を訪ふ 熱燗や子に労はるる事多く 来し方をたぐり寄せつつ毛糸編む すべて正調、読みづらい句は一つもない。家居のときも旅出のときも、自分の位置を保って、その耳目や心にふれるものを、真摯に平明に叙している。そこにおのずから安らぎと和みが生まれている。それがこの一集の趣であろう。この人自身の生きかたをも示しているであろう。 友岡子郷氏の帯の文章である。三方正子さんの作品と人となりを端的に語っていてこれ以上わたしがおしゃべりを加えるのはただ五月蠅いだけのような気がする。 タイトルの「仙櫻(せんおう)」ということばが面白い。 「あとがき」で著者はこの「仙櫻」についてこのように語っている。 兵庫県の山深い地方に生まれました私に誇れるものが一つあります。それは私の生家より眺めることのできる樹齢千年ともいわれる山櫻です。国の天然記念物として今も威容を誇る山櫻、句集名を「仙櫻」としたゆえんです。 「樹齢千年の桜」とはいったいどんな桜なのか、それは興味がある。 「桜、天然記念物、兵庫」で、さっそくインターネットで検索してみた。 それがこの桜である。→「樽見の大桜」。 これはこれは、堂々とした風格のある桜である。「仙人の桜」とも呼ばれているゆえに「仙櫻」である。江戸彼岸桜で老大樹の堂々した見事な桜だ。凄いね……。 この句集の前半部分に、「阪神大震災 五句」と前書きの句が収録されている。 黙々と線路を行けり着ぶくれて 絶え間なく寒の空飛ぶ輸送ヘリ 崩壊の屋根去りもせず寒の猫 スーパーにならぶホカロン握りしめ たつぷりと盛る春野菜ガス復旧 たった五句ではあるが、震災直後の人々の様子と暮らしの復旧がみえてくる。ほっとする。が同時に東北の震災の打撃の大きさと復旧の困難さを思うのである。 ほかに句を紹介すると、 鉄線花前掛似合ふ母なりき 番傘の大きな屋号春の雪 やや小さき女人の鎧梅の花 浮寝鳥父と子走り過ぎゆけり ひた急ぐ僧と逢ひけり花蘇枋 渓水のしぶけるあたり烏瓜 秋夕焼船は竜骨だけ残り 神官に春の落葉の堆し 郷土史を語りやまざる夏帽子 新聞紙広げて茸選びをり 烏瓜谿の仏は裾濡らし この家もむらさきしきぶしろしきぶ 妹は虫の厨を采配す ゆくりなく案内の人と花菜風 一花のみ見えて泰山木に風 曲るたび辛夷の山となりにけり 丹精の牡丹を抱へ弟よ 冬たんぽぽじぐざぐに坂上りけり 梯子から声かけらるる帰省かな 屋台みなシートかけられ花の雨 故郷の句、身辺句の多いことに改めて気がつきました。と「あとがき」にあるように、身ほとりを詠んだものが圧倒的である。しかし、俳句という定型の器に季語を十全に活かして無理りがない。だから読者にもすっと景色が入ってくる。 三方さんは、この句集をすすめているときに軽い脳梗塞で入院された。見本は病院で手にとられたのだった。出来上がりをとても喜んでくださったのが、嬉しい。経過は良好とのことで、きっともうお元気になって退院されているのではないだろうか。 この句集の装丁は、君嶋真理子さん。 表紙に布クロスに「朱」の色を使って欲しい、というのが三方さんのご希望だった。 担当の高橋千絵さんの一押しの句は、 旅程組む夫の背まるし夜の秋 「ご旅行がお好きでいらっしゃるのではと思うのですが、ご主人が一生懸命予定を立てて楽しませようとしてくださっている姿が目に浮かびます。 私の夫も旅程を組むのが好きなので、今年は夫に予定を立ててもらって旅行に行きたいな、という気持ちになりました。」ということである。 千絵さんはまだ新婚なので、この旅の句は当然二人で行くとはなから決めているが、分かんないわよ、千絵さん、なんて言っては三方さんに失礼かな。わたしはこの句を読んだとき、なぜかお一人かもしくはお仲間と一緒かなんておもったりしたのだが、夫の背がまるいというところに夫婦の年輪を見てしまいますね。妻のちょっと突き放したような、そしてあえて言えば愛おしそうな目線も。 今日の「増殖する歳時記」は、今井肖子さんによって、大島雄作句集『春風』より。 雪が来る耳のきれいな子どもたち この句を読んでふと浮かんだのは、バレエや体操などをしている少女のお団子ヘア、正式に何と呼ぶのかわからないが、近くの駅でよく見かける少女たちの姿だ。練習の行き帰り、彼女らの服装はまちまちだが、このヘアスタイルはおそろいである。時折笑い声をあげながら電車を待っているその声も表情もあどけない彼女たちがふと見せるきりりとした横顔。てっぺんのお団子に向かう髪の直線と、細い首から顎にかけての曲線、そのシンプルなラインの真ん中にある複雑な形の耳の存在をあらためて認識した。雪催の灰色の空の下、白い息を吐きながら笑い合う少女たちのむき出しの耳の清々しさとヒトらしいうつくしさはまさに、きれい、なのだろう。『春風』(2013)所収。 「耳のきれいな子どもたち」に降る雪は、白く清らかそうだ。 このブログでも何度か書いてきたが、実はわたしは耳フェチ。 耳にはこだわる。 これについては書きだすとかぎりなくクダラナイことを書いてしまうから今日は書かない。 ああ、風邪がどんどん重くなってきてヤバイ。 このブログを書きながら何度か鼻水が垂れそうになって、ティッシュはもう手放せない。 明日出かける予定なんだけど、大丈夫かな…… 風邪はやってます。 わたしがひいたくらいだから、皆さまもお気をつけくださいませ。
by fragie777
| 2014-02-01 17:28
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