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1月29日(水)
![]() 今日はお客さまの多い一日だった。 その前に新刊紹介をしたい。 手塚敦史詩集『おやすみの前の、詩篇』。 ![]() 手塚敦史(てづかあつし)さんの詩集としては四冊目となる。 第1詩集『詩日記』、第2詩集『数奇な木立ち』(思潮社)、第3詩集『トンボ消息』に次ぐ第4詩集である。白い装いの静かなたたずまいの一冊となった。表題を象徴するかのようだ。縦長の細長い紙面に小さな活字であるときは言葉がびっしりと配され、またあるときは余白がたっぷりととられ、言葉と余白が美しく計算されたように配され展開していく。詩人の細密なはからいがこの一冊の詩集のすべてを覆っているかのような精緻にして繊細な詩集である。 この詩集はおおきく分けると(おやすみの前の、詩篇)、(おやすみの先の、詩篇)(αおじぎ草への接近)の三つの内容に分けられる。 ムクドリはその巣へ帰れ。 電光掲示板の文字や、フロントガラスに滲む冬光がいそがせる実像は、無傷なひかりを ガーベラの花が似合う女の子に差し出し、虚をむすんでいく 冬木立 そのコルネットの完結した調べを窓の半面の傷みとする屈折点から、いま明るく裂開し、あなたは 呼ばれている。 ムクドリは、 ムクドリはその巣へ帰れ。 (おやすみの前の、詩篇)の最初に置かれた詩行である。99の番号がふられ、99から0へと番号のふられた詩篇が(あやすみの前の、詩篇)を構成していく。 0番の詩行の最後の何行かを紹介する。 みずからの影に接吻することもできたあなたに、最後は光の何かを贈りたかったのだが ひとのひふはいつまでもくっきりと、そこにあるだけであって ひふ(皮膚)、みな(見な)、 いつ(何時)、む(無)、ひ、ふ、み、よ、いつ、む、なな、や、この、とお、… 数えあげてゆく日々から形成されてきた組織を、土手の草花にはなち、いまなお閉じては開く ジャビの質感だけを ひとまずここに贈りたい おやすみ、おやすみ、 詩集の途中でも後半に立ち表われるこの「おやすみ、おやすみ」ということばでわたしたちは眠りへといざなわれていく。 というか、わたしはこの詩集を校正していて、何度か眠くなってしまった。(いや、実際寝てしまった……) 「おやすみ、おやすみ」というこの言葉はわたしの耳にも心にも心地よかったのだ。 著者の手塚敦史さんが、「yamaokaさんが詩集を読んで感じたことをそのままこのブログに書いて欲しい」というので、率直に書きます。 この詩集は一度や二度では味わいつくせない深い余韻をたたえていて、わたしの知らない言葉もたくさんあって、広辞苑を引きながら校正をし読み進んだのである。しかし、意味がわからないことばがあっても詩の流れは美しく流麗で言葉がわたしの身体のなかでしなやかに伸び縮みをしながら身体を打ってくるそれが心地よいのだ。ものすごく繊細な振動もあって、身体(?)を澄ましていないととらえ損ねてしまうそんなのもある。この詩集をとおして覚えたことばもあって、わたしはすこし前に手塚さんに伺ったことがある。 「ずいぶん言葉を知ってらっしゃるのね」と。 すると詩人は、 「まず音があって、それからその言葉を捜すんです」と答えたのだった。 この詩集はひとつの恋にふれているのかもしれない。終ってしまった恋だ。そして人と人との関係が織り成す世界に。(おやすみの前の、詩篇)より81と付けられた詩篇を紹介する。 鏡よ鏡 この世でいちばん美しいよしなしごとを、一滴のしずくにして 鎮めたまえ。 自我に囚われ、反射することばに、肉体は 呼び醒まされて、もうじき あなた いちばん美しいあなたです。 三十八度七分の部屋の結露 あなたと愛しすぎた、白い炎の揺らぎがみえ、─ コーヒースタンドの架空の人語が、紫煙とともに、立ち上っている メロディーを、そしてアイラインを、引く 手をとって 樵人(しょうじん)の手つきを真似ながら、その通り 木々と水面、青い空と、雲へ 開いてゆこうとするもの 鏡よ鏡 この世でいちばん美しいよしなしごとを、一滴のしずくにして 鎮めたまえ。 (おやすみの先の、詩篇)は、ソネット形式で書かれたものが多く収録されている。この(おやすみの先の、詩篇)は、前の(おやすみの前の、詩篇)の余韻を十分に引きうけている。ソネット形式で書かれたものの中から比較的短いものを引用する。 死ぬまでは、一日も終わらない一日がある 一日だけがある 雑踏したアーケードで 誰がわたしのことを知っていたのか 忘れてしまった。 水の球面が傘にはじかれ、すかさず手のひらで受け止めてみたけれども 地球の球面に、思わず触れてしまったかのように─ どこへこれから向かおうとしているのか 今まで、なにを為そうとして来たのか 忘れてしまった。 新聞の広告欄を見ながらたばこの先に火を点け、暖房の音に耳をすます …店の人集り …ひととのわかれの記憶 グラビアやセックスを消費した結果、その姿に惚れ込んだのだとしても なぜ、こんなに一人のひとが愛しく思われて来たのだろうか もう忘れてしまった。 死ぬまでは、一日も終わらない一日がある 一日だけがある (α おじぎ草への接近)は、一片の詩作品として構成されているが、何篇かの詩をつなげたものなのかもしれない。 180ページにわたるこの詩集はなにしろ読み応えがある。 一度に読むのは困難なくらい沢山のことばによって構成されている。 しかし、立ち上がってくる世界は透明感があり韻律の涼やかさがある。読後に気持ち良いカタルシスにが身体を支配する。 出来上がったときに、著者の手塚さんにわたしは言ってしまったのだ。 「原稿をもらって進めているときはもう夢中だったけれど、この詩集ふたつに分けて刊行しても良かったかもしれない」と。手塚さんは電話のむこうで静かに笑いながら、 「ぼくはそうは思いません。これで良かったとおもっています」と。 装丁は、手塚さんの友人の平田剛志(ひらたたけし)さんが手がけた。 平田さんは、京都国立近代美術館の学芸員で美術批評家である。その平田さんがはじめて手がけた装丁となった。 表紙と扉には現代美術家の今村遼佑(いまむらりょうすけ)さんの作品「《雨のドローイング》2013」を用いた。 ![]() ![]() ![]() ![]() ![]() ![]() ![]() ![]() 簡単そうにみえるがこれが製本屋さん泣かせとなった。左右はノリがきいたのだが天地にノリをつけると縮んでしまい、結果両面テープでくっつけるという大変な作業を強いることになってしまったのだ。 ![]() ![]() 詩人の小笠原鳥類さんが、さっそくに感想のメールをくださった。 手塚敦史さんが旺盛な仕事をしているのがうれしいことです。 装幀が白い布のような壁のような、とても落ち着く部屋でした。 「99」の「ムクドリはその巣へ帰れ、」 「ムクドリは、 ムクドリはその巣へ帰れ。」 文字の一つ一つ、語の一つ一つがいよいよ静かに光って、 この細かい美に私はついていくことができるだろうか、と思いました。 いろいろなことがあって、私はいよいよガサツになっているので、 手塚さんの入念な仕事から置いてけぼりにされていくようでもあり、 この本をどこまで読めるかわからないのでした。 でも、こういう書物が光になって希望になるとよいです。 装丁をしてくださった平田剛志さんもドローイングで参加くださった今村遼佑さんもともに出来上がりを喜んでくださったのがなにより嬉しい。 平田さんには、詩集ができあがるまで何度か京都・東京間を往復していただいた。はじめて手がける装丁の仕事のために。 著者の手塚敦史さんは、この詩集のまえできっと静かにたたずんでいるだろう。 仕事のあと、寝床に横になり枕もとに耳をつけると、時折心臓の音が聞こえる。 「あとがき」のように書かれた言葉がこう結んでいる。 昨日、群馬県高崎のホテルメトロポリタン高崎で行われた俳誌「ひろそ火」(木暮陶句郎主宰)の創刊三周年のお祝いの会についてすこし紹介したい。 スタッフの山岡有以子が出席し、お祝いを申しあげた。 ![]() ご挨拶をされる木暮陶句郎主宰。 赤のジャケットがよくお似合いである。 陶芸家でもある。 出席したスタッフの山岡有以子は、 「会員の皆様だけで開かれたひろそ火創刊三周年パーティーは、ユーモア溢れる方々ばかりが集まるとてもアットホームな会でした。 木暮陶句郎主宰は、三周年を迎えての意気込みを、全国にいる会員の方々おひとりおひとりをひろそ火の種火と例え、一人一人の句ごころをしっかりと灯しなおして、その種火が三周年を機に大きく大きく燃え広がり、50号、100号、1000号に至るまでがんばりたいと決意を新たにされていました。 祝賀会の他にも、同人認定式、ひろそ火賞、ひろそ火新人賞の授賞式や、新年俳句大会の授賞式など盛りだくさんで、若い結社の勢いを感じました。 開会の挨拶をされた大宮白流さんの『ひろそ火は主宰を筆頭に、俳句を愛し、旅を愛し、そして仲間を心から愛し、大事にする人たちの集まり』と仰っていたのがとても印象的で、その言葉通り、みなさま和気藹々とした朗らかで伸び伸びとゆったりとしていてとても温かい結社だな、と感じました。」 ということです。 午後2時に約束の中根美保さんがご来社くださった。 中根さんが所属する俳誌「一葦」(島谷征良主宰)の合同句集の原稿をもって、お仲間の加野庸子さんとご一緒に。 ふらんす堂では、これまで『一葦合同句集』を三冊刊行させていただいている。 『一葦合同句集 第1集』(50号記念)『一葦合同句集 第2集』(100号記念)『一葦合同句集 第3集』(150号記念)と。今年は200号記念を刊行させていただくことになっている。 今日はその打ち合わせにご来社くださったのだ。 ![]() 今回の合同句集は前回よりも参加人数がふえての合同句集となるということ。 それもまたすばらしい。 今日はもう一人突然のお客さまがあったのだが、このお方については明日あらためて紹介をしたい。 もう帰らないとスーパーが閉まってしまう。 急がなくちゃ。
by fragie777
| 2014-01-29 20:08
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