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11月1日(金)
渋いがなんともいい色合いの花だ。 朝商店街を歩いて仕事場へと向うとき、商店街通りのありとあらゆるガラス戸にわたしの靴紐が映っているではないか。 華やかでとてもきれい。 わたしはそれだけで幸せな気持になった。 (靴紐だけで幸せになれる安い女、なんて言ってはいけないことよ。) さて今日も新刊紹介をしたい。 水木ユヤ詩句集『カメレオンの昼食』(かめれおんのちゅうしょく)。 俳句と詩からなる一冊である。著者の水木ユヤさんは、「船団の会」(坪内稔典代表)の会員である。その他のことはほとんどわたしも存じあげない。ただ、この本が出来上がると時にご病気でいらしたお父さまを亡くされた。いろいろと大変であられたことと思う。 この『カメレオンの昼食』は、なかなかおもしろい本である。目次には、「俳句」「詩」と2行あるだけ。しかし「俳句」の中身はかなり凝った編集となっている。「人」「虫」「子」「恋」「猫」「春」「夏」「秋」「冬」に分けられていて、それぞれの項目(テーマ)には最初に短文が添えられてある。そして、その後に俳句が並べられる。俳句の数はまちまちである。詩は短い詩が26篇ほど収録されている。用意周到に編集されたというより、ご本人の興に任せて編集してみた、という感があある。とくに「俳句」のページを読むと感じるがそれもまたこの本のおもしろさかもしれない。 スタッフの間では、「俳句」に付けられた短文がとくに面白い、ということだ。 最初の「人」の短文を紹介したい。 「正義は勝つ! ぎりぎりロックオン!」……やっと終わったぁ、あとは握手と撮影会か。しみったれた遊園地。おれが子供の頃はやたら広く見えたっけ、まさか地元に営業で来るとはな。ジェットコースターなんて木製だったんだ〜だっせー。「ギリレンジャー! ギリギリガン撃って!」おいおい、そんなつぶらな瞳でおれを見つめるなよ。もうすぐ30のフリーターだぜ、しかも子供嫌い。マスクとった顔見たら泣いちゃうよ。「ばーか、中に人はいってんだよ」そのとお〜りお兄ちゃんが正しい、って、かわいくないガキどついたろか。なんだなんだ、肩を叩くのは誰だっ。「やっぱコージだよ。よぉーひさしぶり逃げんなよ。あ、ギリレンジャーだもんな。ほらうちの子、握手してくれよ。よかったなーギリレンジャーはパパの友達だぞ。おまえ明日の同窓会行く? ほらユリも来るって、おまえさーずぅっと好きだったよナ」……消えちまいたい。 この「人」の項目はこの後に俳句が三句おかれているのみ。 ものさしの飛び出た先はスリランカ だって君逆さにしたら落ちるでしょ そう今はアクビとかしてOù allons-nous ? (我々は何処へ行くのか?) ポップで軽快な句がならぶ。もうひとつ短文を紹介しよう。「虫」である。 カマキリよ。僕はあなたをカマキリと呼んでいるが、それはよろしいか。あなたの太腿にあるという聴覚器官では、カマキリとはどのような音や意味を持つだろう。あるいは聞こえてさえいないのか。僕の二枚貝のような耳が採取するカマキリという言葉は、そのどう猛な鎌とシャープなあごのラインを連想させる、なかなかよい音であるけれど。いや僕のこんな心配を、あなたは気にも留めぬだろう。うっそうと生い茂る草の隙間に出現した僕の顔は、満月と同じくらい間の抜けた大きな顔だ。あなたはそれをしげしげと眺め「なんだ食い物じゃないのか」と、お尻を向けるだろう。 俳句をすこし紹介していきたい。俳句のあとの()内のことばはそれぞれ立てられている見出しである。 まだまだのぼりゆくよな蝉の脱け殻 (虫) 最果ての石の下には団子虫 (虫) 言いすぎた君の睫毛に春の海 (子) 雪晴れや今日は地球を上手投げ (子) けんかして君のアクビをよけている (恋) 海を見てお金の話するデート (恋) 粉雪やわたしは窒素と混ざり合う (恋) 打ち水のひやりひと風ねこの鈴 (猫) のら猫の寝ころぶ日向よい日向 (猫) 満開や月の鼠にキスをする (春) 発泡スチロール轢かれて春嵐 (春) 春の文ニヒルな郵便ポストまで (春) さみだれやさみしがりやのさわがしき (夏) キーボードもどかし人生は短し夜 (夏) 片目つむりラムネの玉の住むところ (夏) シャチハタ印ぱかぱかぱかと高気圧 (夏) 台風北上のきざし鼻上のシワ (秋) 売り地はてなんだったっけ赤まんま (秋) 男だから男として男は銀杏 (秋) ホットチョコレート通りすぎる止まる (冬) コインロッカー冷たしちゃりりりん (冬) 模擬試験くしゃみが指にこだまする (冬) いかがでしょう。ちょっとでたらめのようでそうではなく不思議な可笑しさのある俳句だ。調子がよく言葉がはずんで斬新な飛躍に笑ってしまう。発想もことばも伸縮自在だ。 詩も一篇紹介したい。 蟻 ありこつこつ このつちはこびそとへだせ こんもりおうちのいりぐちさ ありこそこそ ここかそこかとすれちがう こっそりたべものみつけたい ありそわそわ そこはみずべのいきどまり そろりんあたまをなでさする ありざわざわ ざくりとわれたすもものみ ざぱぁんみつにはおぼれるな ありぞろぞろ ぞうきばやしのなかをいく ぞろうりこのはをこえていく こつこつ こそこそ そわそわ ざわざわ ぞろぞろ クスクス 口誦性のある詩だ。子どもも諳んじられるようなそんな親しみやすさがある。 もう一篇、紹介したい。 すごくヘンなのだけど、おもしろい。 ヘロよ 見つからない言葉よ きみにヘロと名付けよう ヘロをピクが追いかける ノチが笑う ザタが蹴る キユもくるかい? こらケラ! トパの方よ! いったいこりゃなんだ?と言いたくなるような詩であるが、こういう詩を収録する水木ユヤさんである。 思うに、『カメレオンの昼食』は、声に出して読んで楽しむ一冊である。 装丁は和兎さん。 いろんなラフイメージを用意したのだが、一番おとなしいのを選ばれた。 わたしが何だこれって思ったのを特にあげると、 粉雪やわたしは窒素と混ざり合う (恋) 男だから男として男は銀杏 (秋) よくわかんないけど、おもしろい。どうして「恋」のところにこの句があるのか、わからん。「銀杏」の句もうんうんうんと読んでしまって、へっ、って思う。そしていいんじゃない。って思う。 全身の筋肉をやわらかくして読みたい本である。 今日のねんてんの今日の一句は、この水木ユヤ詩句集『カメレオンの昼食』より。 秋日暮れ鴉その木を喰いつくす 俳句と詩を集めた作品集『カメレオンの昼食』(ふらんす堂)から引いた。暮れて後、木に止まっていた鴉はその木を喰い尽くす、それはほんとうだろう。だから、秋の夜はとても深い。ちなみに、ユヤは名古屋市在住、船団の会のまだ新しい会員である。 入院以来、テレビをよく見る。午後には水谷豊の「相棒」を楽しむ。これ、3時55分から始まる。その時間になるとテレビの前に坐っている 明日から三連休となる。 3日にわたしはちょっと大事な用事が入っていて、その日はガチガチに緊張すると思う。 2日と4日は超ダラ~リと過ごす予定である。
by fragie777
| 2013-11-01 19:20
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Comments(2)
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