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10月3日(木) 水始涸(みずはじめてかる)
気持ちのいい秋の一日となった。 天高くyamaoka肥ゆる秋である。 何をたべても美味しいからいやになっちゃう。 誰かわたしの食欲を止めて欲しい!! 新刊紹介をしたい。 高瀬竟二著『風景の中の虚子句碑』(ふうけいのなかのきょしくひ)。 著者の高瀬竟二氏のあとがきによると全国に虚子句碑は、280基あまりあるという。高瀬さんはその全国にある虚子句碑のすべてを巡るべく志し、おおかたの句碑巡りを制覇したという驚くべき俳人である。「ホトトギス」、「海坂」同人、ふらんす堂より第三句集『風樹』を2011年に刊行されているというご縁のある方である。あとがきによると、「平成14年から同17年にかけて、毎月一基以上訪ね」たとある。その探訪の記録を日本伝統派協会の機関誌「花鳥諷詠」に「虚子句碑を訪ねて」という題名で連載をされたのである。いろいろな事情で訪ねられなかった句碑は10基ほどということ。おそるべき情熱だ。 本書の内容について「あとがき」より紹介したい。 これとは別に、この記事を基に俳誌「悠」(水見壽男主宰)に平成二十年一月号から同二十一年十二月号まで二十四回にわたり「風景の中の虚子句碑」と題して、虚子句碑の立つ場所や背景により季題ごとにまとめ、全体のほぼ半数につき記した。本書の第一章は、これに修正を加えたものである。第二章は、俳誌「春潮」(松田美子主宰)と「浮巣」(大木さつき主宰)に記した虚子句碑探訪の小文である。第三章は、現存する虚子句碑の一覧表である。その一つ一つを現地に足を運んで所在を確かめたものである。(極く少数を除く) 本書を読んで思ったのは、句碑になっているのは有名句ばかりとは限らないということだ。もちろん虚子の有名句も沢山句碑になっている。 春風や闘志抱きて丘に立つ などは、愛媛県松山市にある二番町番町小学校(昭和五十三年建立)や岡崎市の甲山中学校とほかに一基、全国に三基建立されている。学校に建立されるにはぴったりの一句だ。 遠山に日の當りたる枯野かな は七基、句鐘をいれると八基とさすがに多い。仙川のご近所の調布市深大寺にもこの句碑がある。 山国の蝶を荒しと思はずや これは小諸で作られた句である。長野県小諸市とおなじく長野県千曲市にそれぞれ一基、あとの一基は川崎市の神社の境内にあるというのが面白い。 本著は、かなりの数の句碑についての句碑建立の契機やその経緯、アクセス、句碑をめぐる状況などが記されている。興味のある方や句碑を訪ねたいと思っている方にはたいへん参考になる一書である。 ところで、全国で一番虚子句碑が多いのはどこだと思います? 虚子に詳しい方はおおよその見当がつくと思いますが…… 一位 長野県 23基 (小諸市が多い、ほかに千曲市など) 二位 愛媛県 20基 (松山市が圧倒的、そして今治市など) 三位が難しい。 京都って思った人、惜しくもはずれ。京都は四位で14基。 三位はなんと福岡県である。18基。 これは以外である。 何故に? いったいどんな句が句碑に記されているのか、どのような人たちが句碑建立にかかわったのか、本書を手にとって読んでいくといろんな興味がわいてくる一冊である。 面白い句を紹介したい。 蔓もどき情はもつれやすき哉 なかなか含蓄のある一句だ。これについて高瀬さんはこのように紹介している。 建立場所は 三輪田学園前 東京都千代田区九段北三丁目 句は『六百五十句』の昭和二十二年のところにみえる。虚子と親しかった、学園の三輪田元道氏の求めにより、女学生に訓(おし)える心持で詠んだ句という。学園は、靖国神社のすぐうしろ側の、都心ともいえる一画に、校舎と校庭とがある。句碑は、以前校庭にあったが、平成二十三年校舎改築時に校舎の角の道路際に移設された。ここに虚子句碑のあることは知られてはいるが、実際に訪ねたことのある人は意外と少ないようだ。JR中央線市ヶ谷駅下車富士見坂へ徒歩十分。ほかに地下鉄、都バスなど利用。 虚子はこの一句を女学生に贈る言葉として詠んだというのが面白い。わたしは笑ってしまった。ニキビ面の女学生の心にこの奥深い一句はどのように届いたのだろうか。10代半ばでこの句を理解する女学生もコワイものがある。しかし、平然として女学生にこの一句を贈る虚子、さすがである。 300ページ近いこの一書は高瀬竟二氏の渾身の句碑探訪の成果である。 四六判ソフトカバーの手に馴染みやすい造本である。 装丁は和兎さん。 担当は先日退職をした中井愛さん。 愛さんが一所懸命に頑張って編集してくれた本である。 こういうところがふらんす堂的であると思ってい欲しいのである。 これは口絵にある句碑二基であるがすでにこの世にはないものである。 上の句碑は琵琶湖浮御堂の湖中句碑。昭和24年7月30日に水上バイクが衝突して倒れてしまった、とある。 湖も此辺にして鳥渡る 下の句碑は陸前高田市の高田松原の句碑。平成23年3月11日の東北大震災による津浪で流失したといることである。 草臥れて即ち憩ふ松落葉 今では貴重な写真である。 今日はお客さまがお二人見えられた。 小圷(こあくつ)健水さんと山田閏子さん。 お二人は、俳誌「花鳥来」(深見けん二主宰)に所属しておられる俳人である。 今日のご来社の目的は、「深見けん二全句集」刊行へむけてのご相談である。 2015年12月に「花鳥来」は100号記念を迎える。それを記念して、「花鳥来」の皆さまが深見けん二先生の「全句集」を刊行することを決められたのだ。 その刊行委員のお二人が代表としてふらんす堂にご来社くださったのだ。 お弟子さんたちの師を思うこころがひとつとなって、全句集を刊行するという、素晴らしいことだ。 ふらんす堂としても全句集刊行にむけてできるかぎりの協力をさせていただきたいと思っている。 ご案内した仙川街の安藤(忠雄)タウンで。山田閏子さんと小圷健水さん。 「にぎやかでそれでいてどこかのんびりしていて、いい街ですねえ」とお二人とも口をそろえておっしゃったのだった。
by fragie777
| 2013-10-03 20:33
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