カテゴリ
以前の記事
最新のコメント
検索
画像一覧
|
9月14日(土)
陽が落ちる。大いなる安らぎが、一日の労働に疲れ果てた哀れな魂の中に宿る。そして彼らの想いは、今や、薄明のおだやかな、朧げな色彩に色づけられる。 ボードレールの『パリの憂鬱』のなかの「夕べの薄明」の最初の一節である。訳は福永武彦。 昨日のブログでお話したように、わたしは今日ゆえあって、いささか肉体を酷使する労働をしたのだった。 その仕事が終りふと見上げた空。 夕暮れが安らぎとともに押し寄せてきた。 さらにボードレールの詩篇がわたしの気持に心地よい波動をあたえてくれる。 この「夕べの薄明」のなかからおしまいの方の一節を。 黄昏よ、如何にお前はやさしく慕わしいか! 勝ち誇る夜の圧倒的な歩みの前に、一日の終焉のように地平に尚たなびいている薔薇色の微光、落日の最後の栄光の上に、不透明な赤いしみをしるしている街灯の、眼に見えぬ手が東洋の遠い彼方から引き寄せた重たい帷(とばり)、それらは人生の厳粛な時刻に於て、人間の心中に相克するあらゆる複雑な感情に酷似するものである。 「人生の厳粛な時刻に於て、人間の心中に相克するあらゆる複雑な感情に酷似するもの」というのがいいでしょう。 これはね、若い諸氏にはなかなかわかんないと思うのね。 わたしのように結構歳くった人間の心にいっそう訴えかけてくるものがある。 『パリの憂鬱』はボードレールの晩年に書かれたもの、というのもよくわかる。 今日は俳句ではなく、詩の一節なぞを引用してみました。 (しかし、この引用は詩を読めば、わたしの心境に照合させたまことに勝手な引用ではあるのだ。ボードレールの詩はもっともっと人間の深淵をのぞくものだ) そういう気分だったのよね。 今日の夕暮れ、そして身体の疲れとやすらぎ。 今日はきっとよく眠れそう……。
by fragie777
| 2013-09-14 20:40
|
Comments(0)
|
ファン申請 |
||