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7月27日(金)
7月もあと数日で終ろうとしている。 仕事上ではまあまあだったが、私生活は散々な目にあったyamaokaだった。 まったくついてなくてクサルことも多い日だった。 でもこのブログではそんなことわかんないでしょ。ブログを書くときは元気になるのよ。 グタグタになってもう勘弁して欲しいわよっって参っている時に、仕事があるっていうのは、案外精神的に助かるもんだっていうことも知った。 というわけで、 ますます仕事に励みますからねっ。 ひとつよろしく。 えっ、どんな散々な目にあったかって? それは教えな~い。 思わせぶりなこと書いてしまっているけど、大したことじゃなくってよ。 (鉄面皮なyamaokaも人並みだったっていうこと。) 新刊紹介をしたい。 対中いずみ句集『巣箱』(すばこ)。 前句集『冬菫』に次ぐ第二句集となる。田中裕明に俳句を学び、裕明亡きあとは、俳誌「椋」(石田郷子代表)に所属し、俳誌「静かな場所」の代表をつとめる。何度かお目にかかったことがあるが、静かな佇まいのなかに不屈の志を感じさせる方だ。騒々しいおしゃべりの中に対中さんが加わるとふっとその場が静けさの波に支配されていく、そんな不思議な力を秘めた方と言ってもいいかもしれない。静謐さにかくも力があるのだということを対中さんを通してわたしは知った。 さむさうなあたたかさうな巣箱かな 句集名となった句であるが、わたしは好きな句だ。命を育てる「巣箱」というものがそのまま見えてきて、巣箱がなんとも愛おしいものに思えてくる。巣箱って確かにこんな感じだ。 この句集はなんと言っても、正木ゆう子さんの栞が素晴らしい。対中いずみという俳人の本質をよくとらえている。 なみなみと水鳥に闇迫りけり 夕星を待つか蘆荻に吹かるるか かすかなる波音に棕櫚咲きにけり それぞれの舟に人立つ太藺かな ふくろふの腹ふんはりと脚の上 顔中をふるはせ鶉啼きたつる 鼻面に雪つけて栗鼠可愛すぎ 対中さんの俳句から読みとれるのは、たっぷりと水を湛えた湖の、静かな真水の気配である。(略)ひんやりとつめたい真水の清らかさをこの集のいちばんの個性と思いつつ、もう一方で惹かれるのは、詠まれた生き物たちの命の温もりである ひらくたび翼涼しくなりにけり 「田中裕明全句集刊行」の前書きがある。従って、「ひらく」は本を開くことなのだけれども、「翼」と続くことで、作者が翼を開いて羽ばたいているような重層的なイメージが湧く。師のもとからの飛翔。開かれた本もまた翼を広げた鳥のようだ。自在かつ巧緻な言葉に乗せて、俳人としての覚悟まで詠み込みながら、この句はまた軽やかでもある。田中裕明が逝って七年。『巣箱』の一句一句に遊んでいると、対中さんの涼しい羽ばたきを見守る裕明の、あのなつかしい微笑みがいくたびも胸を過ぎる。 正木ゆう子さんの栞のタイトルは「翼すずしく」である。裕明亡きあと作家としてひとり立ちをしていこうとする対中さんへのエールを惜しまない。 俳人の千葉皓史さんがツイッターでこうツイートしておられた。それもここで紹介したい。 対中いずみ句集『巣箱』(ふらんす堂)拝掌。まことに清らかな句集。心が洗われるとはこのこと。さむさうなあたたかさうな巣箱かな 雪雫雪凍らせてゐたりけり 正木ゆう子さんの栞も、この上なくすばらしい 「まことに清らかな句集」と。そう、清らかな句集、という言葉がぴったりかもしれない。 まつすぐに山の雨くる桐の花 ハリストス正教会の葉鶏頭 薄瞼にも光さす雛かな はつなつの太平洋のものを干す ひめむかしよもぎの絮をつけくれし 燕のあと枯草のひかりだす 狐火や文体いまも変はらざる 背丈ほど波打ちあがる彼岸かな まつすぐに蟻きて靴をめぐりけり 腰までの垣根に盆の波の音 落葉蹴り上げてたつぷり話して 枯れすすむものの中なる屛風かな 君折りし氷柱に気泡ありしこと ビクターの犬見えてゐる網戸かな ワタクシハ猫派デ鷹派秋の風 蟋蟀の生身のこゑと思ひけり はこべらのひよこはすぐににはとりに 海に藻のゆらりとひらく涅槃かな 燦々と人を拒める屛風かな 鶏に鶏の夢木の根開く この「鶏」の句でこの句集は終る。カバーデザインは、半眼の鶏である。この句を意識したわけではないが、何羽も連なる鶏はそれぞれ卵をかかえ、一羽のみ金の卵をかかえている。 ブックデザインは和兎さん。 昔の文庫本などはこういうつくりだった。いま書店に並ぶ本ではこの天アンカットはなかなかお目にかからない。 記紀万葉以来の日本の伝統詩は、一本の大河として流れ続けています。この大河には数限りなき詩歌が流れ込んでいます。名のある者もなき者も富めるも貧しきもこの大河に一滴を注いできたのだと思います。私の俳句も、一滴の雫であればいいと願います。できうるならば、流れ入るとき、大河が喜んでくれるような、澄んだ雫でありたいと願います。 「あとがき」の言葉である。「私の俳句も、一滴の澄んだ雫でありたい」とは、正木ゆう子さんの栞の言葉と響き合って清らかにわたしたちの胸を打つ。 波音の翳りてきたる芙蓉かな 集中の句である。おとなしい句だが、「波音の翳りて」に立ち止まった。山国で育ったわたしには、「波音が翳る」ということが実感できない。水辺に暮す著者ならではこそ。芙蓉のひそやかにして清婉な美しさが際立つ。 静謐な詩情を湛えた一冊である。 明日は大阪で、俳誌「船団の会」の鶴濱節子さんの出版のお祝の会がある。 句集『始祖鳥』を刊行させていただいた。 担当スタッフの愛さんが出席の予定。 「船団の会」の皆さんの句集をずい分刊行させていただいた。 そのほとんどを愛さんが担当したのだった。 しかし、愛さんは代表の坪内稔典さんをはじめどなたにもお目にかかっていない。 愛さんが出席するということで、皆さん楽しみにしておられるということ。 「船団の会」の皆さま、愛さんが参りますのでどうぞよろしくお願い致します。
by fragie777
| 2012-07-27 19:10
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